投稿者「uterium」のアーカイブ

『戦争めし』著:魚乃目三太

突然だが、あなたは飢えたことがあるだろうか?筆者にはない。食べたいと思った物がどうしても食べられないという経験はどうだろう?よほど珍しい食材でもない限り、今の日本ではあり得ないだろう。現代の日本を飽食の時代(それももう当たり前すぎて死語かもしれない)と呼ぶ人がいるが、現代のような状況は、70年前には概ね想像もつかないようなものだったのだ。

……ということで、今回は魚乃目三太先生の『戦争めし』です。第二次世界大戦中の日本で、食べ物に関するエピソードを集めた短編集です。南方のジャングルの中でカツ丼作って食べた話や、空襲下で寿司を食べた話、満州で食べた餃子を復員してから再現した話など、物資の乏しい戦地や銃後の生活の中で、必死に「旨いもの」を食べようと必死になる人々の姿が描かれます。なんというか、みんな本当に旨そうにものを食べているのが印象的です。食べ物の量や種類に乏しい生活の中でようやく…という状況でおいしいものを食べるので、食べた人は涙を流しながら食べるのです。読んでいたら時々、つられて涙が出てきました。

「食べるものに困らない」ってありがたいことなんだなと思い出すことができる一作です。ちなみに発売日は終戦記念日です。

 

『ロード・エルメロイ2世の事件簿 2 case. 双貌塔イゼルマ(上)』

前巻では毎冬に出るといわれていたTYPE-MOON世界で繰り広げられる推理劇の第2幕、その前編です。今回、最初に登場するのは本作全体の主人公ロード・エルメロイ2世の義理の妹、ライネスです。

前回は失われたエルメロイ家の魔術刻印(魔術師の家に代々受け継がれる)を修復する能力があると見込まれた修復師ゲリュオン・アッシュボーンの館が舞台でしたが、今回は「美」を通じて魔術師の本願たる根源の渦(この世の全てのものの源)に至らんとするイゼルマ家の館が舞台です。イゼルマ家が完成させた美の体現者「黄金姫」と「白銀姫」のお披露目会に呼ばれたライネスは、エルメロイ2世の内弟子グレイを伴って館に赴きます。そこで繰り広げられるのは、魔術協会内部にくすぶる派閥同士の争い。イゼルマ家が入手したらしい魔法の遺物と派閥争いをめぐる策謀に巻き込まれ、「黄金姫」殺害の嫌疑をかけられたライネスは絶体絶命、そこに現れるのはエルメロイ2世、2人の弟子。

その昔TYPE-MOONが出していた設定資料集『Character Material』で少し語られるだけだったロードエルメロイ2世襲名の様子や、魔術協会の内輪もめなど、相変わらずあの世界の魔術師業界の事情がたっぷり語られます(色々設定資料集が出ているはずなので、その辺読めばすでにファンの間では公知の事実なのかもしれませんが)。

まだまだ話としては事件編という感じ。冬コミまで後4ヶ月ですね。事件といいつつ、何せ何でもありの魔術師ですから、結局真相はどうなのか?本当に黄金姫が殺されたのかすら微妙になりそうなキャラクターが出てきていますから、何がなにやらという感じです(ファンなら表紙を見れば分かりますよね?)。

疑問なのですがこの作品、魔術やら魔法やらに造詣の深い三田先生なので、実は作中で語られる魔術知識を読み解けば、犯人や真相が分かるようにできていたりするのでしょうか?

海芝浦

ふと思い立って海芝浦駅に行ってきました。海が大変近いということで有名な駅です。

出発はJR東日本の鶴見駅。元々別の私鉄?が運営していた路線のため、ホームが独立です。
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ホームはこんな感じ。アナクロでたまりません。人がいませんが、沿線住民の人や、僕のように海芝浦に行くことを目的としている人がいるのか、思いの外たくさんの人が乗り降りしていました。

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鶴見線には2系統あります。どちらかというと、海芝浦行きは少ない方のような気がします。

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着きました。途中の様子は、東京近郊にもかかわらず、地方のローカル線のそれでした。ホームが片方しかなく、その片方のホームのすぐ下は海です。

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反対方向を向くとこんな感じ。

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駅名表示。

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時刻表。通勤の時間帯にしかほとんど電車がありません。15分ほどで乗って来た電車が折り返すのですが、それを逃すと1時間とか1時間半、何もない駅で立ち往生です。自動販売機があるので、一応水分補給ができますが、海を見ているしかない。(駅の外は東芝の私有地なので、駅の外には出られず、入出場処理用のIC乗車券のチェック装置が設置してあります。駅からの出口にはガードマンが立っています。)

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カモメがいたりします。運河の向こうは工場です。

大変趣深い駅でした。東京近郊にお住まいの方は、ちょっとした小旅行気分で一度行ってみてはいかがでしょうか?

『想像の共同体』著:ベネディクト・アンダーソン 訳:白石隆、白石さや

本書は現在の「国」の基本形、国民国家の成り立ちやナショナリズム(国民国家を自分の所属する共同体であると認識する人々の意識)の成り立ちと広がりを論じた非常に著名な書籍らしいです。購入してから半年以上熟成させた後にようやく読み始めることができました。専門外な上、精読というにはほど遠い読み方をしたので、書評としては浅いのはご容赦を。

要点を書きますと
– 国民国家は、ヨーロッパの宗教共同体と君主制国家をその起源とする。
– 人々が見たこともない他人を同じ「国民」と想像できるようになるためには、活版印刷によって大量に印刷された本や辞書、それによって固定化された俗語(非ラテン語の話し言葉=フランス語やドイツ語といったようなもの)が大きな役割を果たした。
– とはいえナショナリズムはヨーロッパでのみ成長したわけではなくて、南北アメリカの旧植民地国家の独立や、東南アジアや、アフリカの旧植民地国家においてもいろいろな要素が付け加えられ、世界中に広がっていった。
– 共和主義や憲法主義的な社会革命とは同じように広がったわけではない。オーストリア帝国やタイ王国などの君主制国家においても、国民統合の手段として、上に書いたようなナショナリズム醸成のための政策を積極的にとることがあった。本書ではこれを、「公定ナショナリズム」と読んでいる。

で、結論から言うと大変興味深い一冊でした。なかなか内容を適切に要約できないのですが、とはいえ、現在の国家や国民というものを客観的に見る上で、とても良い思考の道具になりそうな本だと思いました。常々「お国のため」とおっしゃる方はいますが、全体主義と自由主義の間を取った、国家という物とのほどよい付き合い方を見つけるのに役立ちそうです。

正直勘違いや誤読もあると思いますので、読書会みたいなものに参加して、色々と意見を言い合ってみたいものですね。そういったことは文系大学のゼミの役割でしょうかね?

包丁と砥石の手入れ

料理に欠かせない包丁。使っていると切れ味が鈍ってきますので、手入れをしましょう。要するに刃物を研ぐというやつです。

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下準備として、砥石を水に浸します。15分くらい漬けておけば良いと思います。

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時々水をかけながら、包丁を上下方向に15度から30度くらいに傾けて、水平方向に45度くらいに傾けて前後方向にまんべんなく砥石の上を滑らせます。利き手で柄を持って、反対の手は刃を押さえます。

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適当なところで入れ替えて、逆側は刃を手前に向けて同じように作業します。

適当なところで終了。個人的には特に研ぎ上がりとかは気にしていませんが、それでも研いだ直後は切れ味が良くて気持ちいいです。

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包丁研ぎが終わったら、砥石の平面出しをしましょう。これをやっておかないと、包丁の刃を台無しにしてしまう可能性があります。2つの砥石の面を合わせて相研ぎをします。まぁこれも極端に偏って摩耗しているとかでなければ良いんでないかと思っています。砥石を買おうと思っている人は、2つ買って、使う度に相研ぎして平面を出し続けると良いと思います。

使い終わった砥石は、風通しの良い場所で水を抜いてから、しまいます。

  • 必要なもの:包丁、砥石、砥石を水に浸ける洗面器やタッパーなどの容器。
  • 費用:砥石2つで2〜3000円くらいから?
  • 時間:1本5分?(砥石を水に浸す時間15分)

『Landreaall (26)』著:おがきちか

いやー、面白かった!

さて、アトルニアを現在の姿たらしめている「革命」の真実に、アトルニアから遠く離れたクレッサールの砂漠にて迫るDXたち。前巻までで王国の崩壊を企むクエンティンの策略にはまり、見事に分断されてしまったDXたちでしたが、本巻では仲間が集い、ついに全面対決と相成ります。奴隷商に売られたDXを助けに来たライナスとルーディー、そして「サンダーレンのマダム(9巻以来実に16巻ぶりの登場)」や奴隷商カリファの力すら借りて、父リゲインと同じくユージェニと刃を交えます。さて戦いの行方は、というところで次巻に続きます。

もう何年連載しているのか分かりませんが、主人公DXの着実な成長を感じます。なんというか、必要に応じて人に任せたり、他人の力を借りたりすることに躊躇がなくなってるんですよね。本作、主人公たちの個人のレベルとしては最初からかなり高いところにある作品ですので、パワーアップする余地というのがこういう、ジミーな対人スキルだったり、リーダーシップだったりするわけですが、パワーアップした能力が遺憾なく発揮されるという意味では意味ではロボットアニメにおける主人公機交代回くらいのカタルシスのある巻です。大変読んでいて気持ちが良い。

他方、結局かつてなにがあったのか、ということについて、色々と明らかにはなるんですが、結局最終的に本事件にどのようなオチがつくのかは見えません。現在のところの敵に当たるクエンティンにしても、彼の命を取れば全てが解決するというものでもないでしょうし、何を以て彼が敗北するのか、色々伏線は撒かれつつ、どこがどこにつながっているのかは読めません。おがきさんのストーリーテリングが光ります。あと、いろんな人の天恵(超能力のようなもの、最近だと精神干渉系の能力者が多数登場している)がいったいどういうものなのか、サッパリ分かりませんし、その辺も明らかになるのかなぁなんて。

先に書いたように、9巻以来16巻越しに登場しているキャラクターがいたり、何度も読み返して何回も楽しめるスルメのような王道ファンタジー。本レビューを見て気になった人がいたら、7巻位までかなぁ、とにかくまとめて読んでみて欲しいです。先に行けば行くほど、面白くなりますので。損はさせません。

今巻から限定版ではなく特装版となりましたが、おまけ漫画は主人公たちが身につけている武術について。前巻の最後に出てきたライナスの「裏打ち」の舞台裏が見えます。

さて、次は半年後、待ち遠しくて仕方がありません。

25巻の感想

24巻の感想

 

『女神搭載スマートフォンであなたの生活が劇的に変わる!』著:浅生楽 挿画:垂井ひろし

いわゆるFラン大学の学生海江田悠里はいかにもなグータラ学生生活を送っていたら留年してしまった。そんな彼のスマートフォンに顕現したのは、ローマ神話の運命の女神様フォルトゥーナ。彼女は主人公に人生逆転の必勝法を授ける…。

表紙がはなはだ地味で、表紙の紙も実用書っぽく、ライフハック本かビジネス本のごとしですが、意図的なものだそうです。実際のところ、人生逆転の必勝法というものも、ルーチンワークをいかに同時にこなすかとか、一つの行動でいかに複数の経験値や、他人からの信頼を得るかなど、ライトノベルというメディアとは思えない地味なものばかり。とはいえそれだけ地に足がついているということですから、やろうと思えば読者にも実行できそうなものばかり、このように物語としての面白さに加えて、ビジネス書としての性格を持ち合わせている本書の特徴でしょう。チャーチルやカエサル、織田信長など、フォルトゥーナが出会ってきた過去の偉人たちの明言やエピソードがちりばめられているわけですが、確かに彼らにも英雄譚に語られないような日常や雑事があったはずで、時代の違いこそあれ悩んだり退屈したりしながら運命に立ち向かったのだろうなぁという想像が湧いたりしました。

正直、紹介されている人生逆転メソッド、試してみたくなります。まさに本書が作中の女神搭載スマートフォンであるかのごとくです。とりあえず三位一体家事(朝、風呂を沸かしているうちに洗濯機を回し、掃除をすること、面倒なことの先に風呂という報酬を用意し、朝から風呂に入ることで体温上昇を促し、風呂上がりに洗濯物干しでベランダに出て涼を取る一石三鳥の方法、ついでに入浴中に顔や頭も洗ってしまう)は、大変快適でした。まんまと作者の意図にはまってしまっていますね。

人生は麻雀のごとく、配られた牌で勝負するしかないが、自分の意思や努力で、少しずつでも良い役を作ることはできる。といったような作中の言葉がありますが、人生一発逆転などなくて、何かが変わるとしてもそれにはそれなりの積み上げがあったりするんですよねぇ。本当、そうだと思います。

『犬と魔法のファンタジー』 著:田中ロミオ 挿画:えびら

ファンタジーという書名ではありますが、物語世界の由来がいわゆる剣と魔法のファンタジー世界であるだけで、普通に現代の日本のように情報技術や大量輸送の技術が発達していて、地上からフロンティアはほぼ消失し、平和な時代が長く続いている、そんな世界が舞台の話です。そして、本作のテーマはズバリ「就職活動」です。ちなみに本作のタイトル、「けんとまほうのふぁんたじー」ですが、「いぬとまほうのふぁんたじー」だと思っていました。この記事を書くときに改めて気づきました。

この世界の高等教育機関である大学、要するに現代日本の大学とほとんど変わらないものと想像して良さそうです、の3年生である「チタン・骨砕」は身長2メートルで、体も頑丈、腕っ節も強く、200年前なら英雄になれたであろう逸材ですが、不器用で世の中の流れに上手く乗れず、就職活動にも苦戦中。というか、どうにも世の中の茶番めいた就職活動になじめない(この辺はまんま現代日本の就職活動の戯画です)彼の明日はどっちだ?というのが言ってしまえば本作のすべてです。彼は「冒険組合」というサークルに所属しており、1年生の頃の冒険旅行で友誼を交わした悪友ルターとロエル、同様に冒険旅行に参加したが折り合いが悪くなってしまったサークルの姫的な八方美人のヨミカ(カバーガールですね)、冒険旅行で見つけてきた犬シロがおり、他に「意識高い系(決して言動に才能が伴っているガチ勢ではない)」男子学生のイディア、サークルの先輩で日雇いの仕事をしつつ、本職は冒険者というケントマといった登場人物がいます。

本作は結局、「自分らしさとは何か?」ということがテーマのような気がします。まぁ多くの青春小説で、主人公たちは往々にしてアイデンティティの揺らぎに苦しむわけですが、まぁ高校生くらいまでのそれが自己肯定感をいかに獲得するのかという問題で終わるのに対して、本作の登場人物たちは、就職活動(寿命の異なる種族が一緒に暮らしている世界ですので、その辺の模様は色々ですが)という場において、自分のあり方と社会の都合をいかにすりあわせるのかというより難しい問題に立ち向かわなくてはならなくなったりします。やや変則的な形ではありましたが、一応自分も通過してきた道であり、主人公の苦しみには大いに共感するものがありました。

灼熱の小早川さん』でも、『AURA 〜魔竜院光牙最後の戦い〜』でも、田中ロミオさんは常に、大勢になじめない側の人間を主人公に据えるんだよなぁと思っていたり。それを突き詰めると『クロス†チャンネル』みたいになるのかもしれませんが。氏の作風なんでしょうねぇ。私はとても好きです。

 

 

甘夏酒・浸け上がり

この前浸けた甘夏酒が浸け上がりました。大体1ヶ月ほどで引き上げました。

少し黄色く色が出て、香りも甘夏の香りがします。

ただ、何せ梅酒の残りで浸けたので、そのままでは呑めないくらい甘い代物になってしまいました。基本水割りソーダ割りみたいな。これは水割りで呑むこと前提のお酒か、あるいはアルコール入りのシロップとして使おうかなと思います。ちなみに、カップのバニラアイス(爽のバニラ)を少し食べて穴を開け、そこに甘夏酒を注いで食べると大変美味でした。この夏の定番デザートにしようかな。

残ったアルコールと砂糖漬けの甘夏は砂糖と水を足して煮詰めて、フルーツソースみたいな感じにしました。ホットケーキに付けてみたらまぁこれはこれでという感じ。手作り感あふれる味。

自家製梅酒+αを浸けました

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『映像の世紀』

『映像の世紀』、NHKの名作ドキュメンタリーですが、公共放送の作品の割にDVDの価格が非常に高価でして、なかなか手が出ない作品です。とはいえ、たいていの公立図書館には所蔵されていますので、借りて見ればお金はかかりません。最近の図書館はパソコン上から予約すれば他館から取り寄せてくれたりするので、もう図書館で借りて見れば良いんじゃないかと。

ということで、第2集「大量殺戮の完成」、第4集「ヒトラーの野望」、第11集「JAPAN」(タイトルが、格好つけてて大変素敵です。)を見たわけですが、20年前に見たときよりも色々理解が進んで楽しいですね。よくもまぁこんな映像が残っているもんだというような映像がてんこ盛りです。

特に第一次世界大戦を取り扱った第2集を見ると、戦争に科学技術が積極導入されて、物質の消費量と、何より死者数がうなぎ登りになっていく様子が映像でよく分かります。大砲による制圧+騎兵、歩兵突撃 → 機関砲斉射による歩兵、騎兵の掃討 → 塹壕戦 → 戦車による塹壕突破、空爆、毒ガス、潜水艦による通商破壊という戦法の変化がたかだか4年で起こってしまいます。これにコンピュータや人工衛星、精密誘導兵器、核兵器、航空母艦くらいが出てくればほぼ現代の戦争が完成するんじゃないかと思うくらいです。かつてはこの恐ろしさが分かりませんでしたが、改めてみると恐ろしい話です。

反面、今の社会につながる事象も起こってるんですよね。

– 女性の社会進出
– 腕時計の一般化による時間感覚の変容
– 大量生産技術の広範な普及
– 貴族階級のさらなる衰退

などでしょうか?本当に現代がなぜこんな風になっているのかを理解するためには、過去を理解せんとだめなのだなぁと思っております。近頃本当に、歴史の勉強が楽しいですね。