誰が描いてるの?どこで読めるの?
- 著者は漫画家のおがきちか先生。
- 掲載誌は一迅社のコミックZERO-SUMという漫画雑誌で、主要ターゲットはちょっとマニアックな中高生女子だと思われます。
- コミックスは2016年2月現在27巻まで発売中。小さい本屋には(ヘタすると大きい本屋にも)なかったりするので、コミック専門店か、心苦しいがネット通販で。小さい本屋だけど全巻揃っている店は、多分仕入れやってる人に分かってる人がいるか、周辺にファンがいて定期的に売れるかのどちらでしょう。
世界観は?
- いわゆる「剣と魔法のファンタジー世界」のような感じ。
- 基本の世界観は中世西洋風だが、東洋的な要素が普通に混じり合う。
- 馬上槍や騎士が登場する一方で、主人公たちは合気道のような中国拳法のような格闘術を使う。忍者や侍のキャラクターが普通に登場する。
- 魔法というか、超能力は存在し、「天恵」と呼ばれる。1人1つの天恵を持ち、「人間以外の動物とコミュニケーションする」、「ジェムと呼ばれる特殊な能力を持った宝石の力を引き出す」などがある。ない人もいる。
- 竜と呼ばれる動物(いわゆる西洋的なドラゴン)が作品世界の中の国家や社会のシステムに大きく関係する。というか、世界の法則の一部を体現したような生物として描かれる。
物語の舞台は?
- アトルニア王国と呼ばれる王制の国家とその周辺地域
主人公は?
- DX・ルッカフォート:アトルニア王国の高位貴族の長男、王位継承権がある。将軍をやるような騎士の中の騎士たる父と、凄腕の傭兵の母を持つ。双剣と拳法の使い手。相当強く、タイマンを張ればまず負けない。DXという名前についても、キチンと設定がある。物語の開始時には同年代の友人がおらず、自分の家名や血筋が持つ影響力にも無頓着。家柄や立場よりも人物を重視するタイプ。
- イオン・ルッカフォート:DXの妹。棒術と拳法を使う。天真爛漫なお転婆娘。まぁ子どものままではいられない。兄同様自分の家名や血筋の持つ影響力に無頓着で、家柄や立場よりも人物を重視する。
- 六甲:ニンジャ。当然忍術を使う。本作においてニンジャとは特殊な育ち方をした人非人という感じであるが、六甲はルッカフォート家においてDXらと兄弟同様の取り扱いを受けて育つ。寡黙で忠義にあふれ、礼儀正しい。
物語の大筋は?
- ない。ワンピースなら「海賊王に、俺はなる!」であり ソードアートオンラインなら「デスゲームで生き残れ!」な訳ですが、それがない。ない……と思う。強いて言うならば、「俺は王様になるのかな?」という感じか。RPGのように細かいクエストが発生して、その中で登場人物が成長するというのが繰り返される。
- イメージとしては、複数人によるMMORPGのプレイを、上から眺めている感じだろうか?
- ファンタジー世界ではあるが、キャラクターの腕っ節などの戦闘向けのパラメータの成長というよりは、人格的成長や知力や政治力のパラメータが成長する感じだろうか。
どこが面白い?
- 物語に筋が通っている。伏線が巧みで、思わぬところから実は伏線が出ていたということがよくある。2015年現在で15年近く連載している作品だが、実に10年前くらいに連載されていた話で脇役がしゃべった台詞が伏線とかいったことが普通にあるので、何回読んでも飽きない。
- 台詞がすべてを語らない。台詞の意味、キャラクターがどういう立場、境遇、人物なのか、ということを把握した上で意味を解釈しなければならない。逆に、キャラクターを把握している場合には、きちんと、物語の中で経験した出来事がそのキャラクターを成長させているということが分かる。緻密に作られた人物設定や物語の綾を解きほぐすカタルシスがある。ただ、この点は本作の取っつきにくさにも通じるものと思われる。
- ノブレスオブリージュ、王と騎士の関係など、封建制貴族社会の約束事に忠実であり、物語の中に「社会制度」がキチンと作り込まれていることが読み取れる。掲載誌は中高生少女向け漫画誌だが、大人の鑑賞に堪える(と思う。実際に大人の男性のファンも多い)。