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『葛城姫子と下着の午後』著:畑田知里

秋葉原にCOMIC ZINというちょっとサブカル臭のするコミック専門店があるんですが、そこで平積みされていたのを買ってきた一冊。

女子高校にて女性用下着が好きで好きでたまらない女子生徒たちが繰り広げる諸々の話が書かれていて、その女の子たちの中でも一際頭がぶっ飛んでるのが表題にもある葛城姫子だそうです。といいつつ、主人公は最初はスポーツ用の下着を着けていた関川明日美という女の子。百合ではないが、彼女と姫子の女性同士の友情が話の軸になるのだと思います。

いろんな女の子が出てきて色々な下着を着けていて,基本的に女性の露出度が高いわけですが、男性向け漫画にあるようないやらしさが不思議とない。まるで女性用下着売り場のような感じ。著者は恐らく女性用下着が好きな女性(メイドや中東の民族衣装が好きで好きでたまらない森薫先生みたいな感じ)だと思われますが、徹頭徹尾女性目線で描かれた漫画のような気がします。

個人的に面白かったのが、(夢の中とはいえ)姫子が下着の上にコート(ブルゾン?)を羽織っただけという露出狂スタイルで町に出るというエピソードです。その中で階段下でミニスカートの女子高生のパンツをのぞいていてかつスカートを押さえると文句を付けるという、ダメな感じにスケベなおじさんに絡まれたときに、周囲の女子高生が「足と短いスカートは見せてるが、パンツは見せてねぇ」と啖呵を切ります。あともう1つ、電車の中で保守系の女性国会議員のような感じのPTAおばさんに「子どもに悪影響だから前を閉めろ」といわれたときに、姫子が「悪影響に見えるのは、あなた(おばさん)が下着を性的な目で見ているからでしょう。」と返します。娑婆を見渡す限り頭がおかしいのは姫子なんですが、妙な説得力がありました。この辺は是非読んでいただきたいところ。

ということで、自分と服を脱ぐ相手くらいにしか見せることのないきわめてプライベートな衣服、女性用下着の奥深い?世界が描かれた一作。姫子は正直狂人だと思いますが、結構興味深く読みました。

『あさひなぐ(16)』著:こざき亜衣

新しく長刀を始めた少女が、めきめきと頭角を現す。そんな王道を突っ走る作品です。

2年生に進学した主人公の旭たち。結構ありがちな、幼少期からその競技に取り組んでいる「上手い」後輩。先輩がふがいなかったりすると文句が言いたくなったりするわけです。ということで、始まった部内戦。さてさて二ツ坂高校の部内の結束はどうなってしまうのか。

ちょっとネタバレ気味になるわけですが、部内の体制や人間関係に色々と変化が現れてくる巻です。続けて読んでいる方には、旭が着々と力を付けてきていることが分かると思いますが、それを改めて部内の人間が認識します。人を呪わば穴二つではありませんが、部内戦しろと先生に直訴した後輩の愛知も、部を揺さぶったつもりが自分も揺さぶられたりするわけです。まぁ、こういうことがあると部活やサークルがクラッシュしてしまうこともあるわけですが、本作に限っては、「雨降って地固まる」案件のような感じもします。

もう16巻ですか……なかなか気軽に人に勧めづらいくらいになってしまいましたが、面白さは保証します。今時、電子書籍だとお得に買えることもあり、著者にも利益が行きますから、是非どうぞ。

過去に書いた13巻の感想はこちら。
 

『戦争めし』著:魚乃目三太

突然だが、あなたは飢えたことがあるだろうか?筆者にはない。食べたいと思った物がどうしても食べられないという経験はどうだろう?よほど珍しい食材でもない限り、今の日本ではあり得ないだろう。現代の日本を飽食の時代(それももう当たり前すぎて死語かもしれない)と呼ぶ人がいるが、現代のような状況は、70年前には概ね想像もつかないようなものだったのだ。

……ということで、今回は魚乃目三太先生の『戦争めし』です。第二次世界大戦中の日本で、食べ物に関するエピソードを集めた短編集です。南方のジャングルの中でカツ丼作って食べた話や、空襲下で寿司を食べた話、満州で食べた餃子を復員してから再現した話など、物資の乏しい戦地や銃後の生活の中で、必死に「旨いもの」を食べようと必死になる人々の姿が描かれます。なんというか、みんな本当に旨そうにものを食べているのが印象的です。食べ物の量や種類に乏しい生活の中でようやく…という状況でおいしいものを食べるので、食べた人は涙を流しながら食べるのです。読んでいたら時々、つられて涙が出てきました。

「食べるものに困らない」ってありがたいことなんだなと思い出すことができる一作です。ちなみに発売日は終戦記念日です。

 

『Landreaall (26)』著:おがきちか

いやー、面白かった!

さて、アトルニアを現在の姿たらしめている「革命」の真実に、アトルニアから遠く離れたクレッサールの砂漠にて迫るDXたち。前巻までで王国の崩壊を企むクエンティンの策略にはまり、見事に分断されてしまったDXたちでしたが、本巻では仲間が集い、ついに全面対決と相成ります。奴隷商に売られたDXを助けに来たライナスとルーディー、そして「サンダーレンのマダム(9巻以来実に16巻ぶりの登場)」や奴隷商カリファの力すら借りて、父リゲインと同じくユージェニと刃を交えます。さて戦いの行方は、というところで次巻に続きます。

もう何年連載しているのか分かりませんが、主人公DXの着実な成長を感じます。なんというか、必要に応じて人に任せたり、他人の力を借りたりすることに躊躇がなくなってるんですよね。本作、主人公たちの個人のレベルとしては最初からかなり高いところにある作品ですので、パワーアップする余地というのがこういう、ジミーな対人スキルだったり、リーダーシップだったりするわけですが、パワーアップした能力が遺憾なく発揮されるという意味では意味ではロボットアニメにおける主人公機交代回くらいのカタルシスのある巻です。大変読んでいて気持ちが良い。

他方、結局かつてなにがあったのか、ということについて、色々と明らかにはなるんですが、結局最終的に本事件にどのようなオチがつくのかは見えません。現在のところの敵に当たるクエンティンにしても、彼の命を取れば全てが解決するというものでもないでしょうし、何を以て彼が敗北するのか、色々伏線は撒かれつつ、どこがどこにつながっているのかは読めません。おがきさんのストーリーテリングが光ります。あと、いろんな人の天恵(超能力のようなもの、最近だと精神干渉系の能力者が多数登場している)がいったいどういうものなのか、サッパリ分かりませんし、その辺も明らかになるのかなぁなんて。

先に書いたように、9巻以来16巻越しに登場しているキャラクターがいたり、何度も読み返して何回も楽しめるスルメのような王道ファンタジー。本レビューを見て気になった人がいたら、7巻位までかなぁ、とにかくまとめて読んでみて欲しいです。先に行けば行くほど、面白くなりますので。損はさせません。

今巻から限定版ではなく特装版となりましたが、おまけ漫画は主人公たちが身につけている武術について。前巻の最後に出てきたライナスの「裏打ち」の舞台裏が見えます。

さて、次は半年後、待ち遠しくて仕方がありません。

25巻の感想

24巻の感想

 

『あさひなぐ(13)』著:こざき亜衣

芸術にしろ、スポーツにしろ、武道にしろ、あるいは学問もそうか、おおよそ芸事というものは理不尽なものです。体つき、感覚の鋭さ、様々な生まれ持った違いが明確になります。それで身を立てられる人などほんの一握り、アマチュアの中で実力を頭一つ抜けさせることですら、人によっては困難だったりします。

現代の日本においてこういった芸事に最初に取り組む機会は、学校における部活動で与えられることが多いのではないでしょうか?部活動は国民的な共通体験であるからか、フィクションにおいても人間ドラマの題材として好んで取り上げられるテーマの1つです。

前書きが長くなりましたが、そのような芸事を取り扱った近年の作品として、個人的に面白いなと思っているのが、本作「あさひなぐ」です。

題材は長刀(なぎなた)。主人公のあさひは、高校から長刀部に入部し、他の部員と衝突したり、勝てないことに悩んだりしながら、少しずつ成長していきます。まぁ競技を置換すればいくらでもある作品なのでしょうが、上記の芸事にまつわる理不尽がよく描かれ、中高生時代の部活動あるあるをキッチリ押さえた良作だと思います。

本13巻では、全巻から続いてきた、「長刀を続けるのか、あるいはやめるのか」というトラブルが解決を見ます。情熱が続かない、頑張っても頑張っても結果が出ない、他人と比べて心が折れる、でもあきらめきれない、それでも好き。登場キャラクターの悩みは実在の人物のようにリアルです、というか個人的にはそのあたりの悩みは非常に共感できます。

後半では2年生に進学した主人公たちに後輩が入ってきます。後輩とどうやってつきあったらいいのか分からなかったり、後輩の方がキャリアが長かったり、いまいちこいつ大丈夫か?というやつが入ってきたり、これも部活動あるあるをキッチリ押さえてきます。面白いです。

昔芸事に取り組んだことのある人、現在進行形で取り組んでいる人に共感できる要素がたくさん詰まった作品です。いかがでしょうか?