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『1518!(7)』著:相田裕

故障で野球の夢を諦めざるを得なくなった男子高校生が、高校の生徒会のハチャメチャな活動を通じてセカンドキャリアを見つけていく物語。まだまだ読みたかったのですが、残念ながら完結です。

学校というと、「いじめ」と呼ばれる暴力や教員の過酷な労働環境等、現実には必ずしも楽園ではないのだけれど、色々なキラキラが詰まった場所であることもまた事実。本作は本当に丁寧に、学校と、そこで頑張る高校生活のポジティブな面を描いてきた作品でした。相田先生は本作が商業連載2本目なんですが、1作目の『Gunslinger girl』と同じく「取材に基づいて緻密に設定された舞台の上で」「残酷な運命に挫折して傷ついた人たちが立ち直っていく過程を丁寧に描く」という部分が共通していて、それが作品世界への没入感と登場人物への共感につながるのかなと思ったりしました。次回作はどんな作品になるのでしょうか?楽しみです。

「普通の」学生生活を描いた作品として、とてもよくできている作品です。登場人物同士が関わり合いの中で人間的に成長していく様子が丁寧に描かれていて、心が洗われるようです。個人的に大変オススメな作品です。

過去の感想はこちら

『あさひなぐ(13)』著:こざき亜衣

芸術にしろ、スポーツにしろ、武道にしろ、あるいは学問もそうか、おおよそ芸事というものは理不尽なものです。体つき、感覚の鋭さ、様々な生まれ持った違いが明確になります。それで身を立てられる人などほんの一握り、アマチュアの中で実力を頭一つ抜けさせることですら、人によっては困難だったりします。

現代の日本においてこういった芸事に最初に取り組む機会は、学校における部活動で与えられることが多いのではないでしょうか?部活動は国民的な共通体験であるからか、フィクションにおいても人間ドラマの題材として好んで取り上げられるテーマの1つです。

前書きが長くなりましたが、そのような芸事を取り扱った近年の作品として、個人的に面白いなと思っているのが、本作「あさひなぐ」です。

題材は長刀(なぎなた)。主人公のあさひは、高校から長刀部に入部し、他の部員と衝突したり、勝てないことに悩んだりしながら、少しずつ成長していきます。まぁ競技を置換すればいくらでもある作品なのでしょうが、上記の芸事にまつわる理不尽がよく描かれ、中高生時代の部活動あるあるをキッチリ押さえた良作だと思います。

本13巻では、全巻から続いてきた、「長刀を続けるのか、あるいはやめるのか」というトラブルが解決を見ます。情熱が続かない、頑張っても頑張っても結果が出ない、他人と比べて心が折れる、でもあきらめきれない、それでも好き。登場キャラクターの悩みは実在の人物のようにリアルです、というか個人的にはそのあたりの悩みは非常に共感できます。

後半では2年生に進学した主人公たちに後輩が入ってきます。後輩とどうやってつきあったらいいのか分からなかったり、後輩の方がキャリアが長かったり、いまいちこいつ大丈夫か?というやつが入ってきたり、これも部活動あるあるをキッチリ押さえてきます。面白いです。

昔芸事に取り組んだことのある人、現在進行形で取り組んでいる人に共感できる要素がたくさん詰まった作品です。いかがでしょうか?

『放浪息子 13』 著:志村貴子

昨年のアニメを見て買い始めたにわかな私ですが,相変わらず思春期マンガ(≠青春マンガ)の白眉です.
12巻以来それまでと少し変わったのかな?と思う点が2つあるので書いてみたいと思います.

1つ目は「かっこよさ」について.12巻以来「かっこいい」という単語が,様々な場面で,通念上の使われ方とは違う使われ方をされています.例えば,二鳥君に関して言うならば,姉の真帆は,文化祭で女装をしてファッションショーに出た二鳥君を「かっこいい」といい,マコちゃんは度胸のある彼を「かっこいい」といい,あんなちゃんは男らしくなって行く彼を「かっこいい」というのです.高槻くんも,ファッション誌の女性モデルを見ながら,「かっこいい」というのです.見た目も性格も非常に通念的に言うところの女性らしい二鳥君が,様々な場面で「かっこいい」と言われ,社会通念上の女性のイデアと言ってもいい女性ファッション誌のモデルが「かっこいい」と言われる,スタジオジブリのアニメ映画『紅の豚』の「カッコイイとはこういうことさ」というキャッチフレーズで使われていたかっこいいとは,明らかに違った意味,男性という概念からかっこいいという概念が切り離されてしまっています.この作品の近刊2冊を読んだとき,自分がいつの間にか男性性とかっこいいという形容詞を不可分のものだと思い込んでしまっていたことに気付きました.この作品は思春期の解体と再構築を通して,男性,女性と言う概念と絡まっている様々な概念(男装,女装,かっこいい,かわいい)を切り離して再構築しているのだなぁと思うのです.まぁ気持ち悪いという人もいるのだろうけど,僕は非常に面白い試みだな,と思います.

2つ目は,「大人になること」について.思春期とは,子どもから大人になるまでの過渡期とも取れると思うのですが,二鳥くんは作中で子どもから自分になって,いよいよ大人(社会的な存在)になろうとしているのだなぁと感じます.だから,12巻でユキさんが18になるまでダメよ,と言って,13巻で二鳥くんがある種「常識的」な人生を歩いて行った先にあるのであろう「みいたんのパパ」が出てくるんでしょうね.せっかく自分は自分,と胸を張れるようになった二鳥くんも,また放浪ですよ.あと,思春期を描く上で外せないであろう肉体的な性の話です.あぁ,二鳥くん,君もついに大人になってしまうんだね,という気分.まさに,社会と折り合いを付ける,肉体関係を持つ,の両面で,大人への階段を着実に登って行く感じです.

淡々と綴られる作品ですが,直近静かに着実に盛り上がって行く感じの本作品,続きは9ヶ月後です.二鳥くんがあんなちゃんとどんなセ(ry

放浪息子 13 (ビームコミックス) 放浪息子 13 (ビームコミックス)
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志村貴子

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放浪息子 12 (ビームコミックス) 放浪息子 12 (ビームコミックス)
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『アゲイン!!(2)』 著:久保ミツロウ

1巻から2カ月,久保ミツロウ先生の新作第2巻です.
チアリーディング部の策略でアゲイン前と同じく崩壊の危機にある応援団の運命は!!という話です.今巻も面白いです.
久保先生は「現役の中高生に向けて」この作品を描いていると書かれていて,それの一端が見えた気がしました.
「恥ずかしさの向こうに行ければ,世界が変わる.」
結局これなんですよね.自分の人生の可能性を一番制限しているのは自分の,特に羞恥心だったりするんですよね,多分.だから久保先生は思い切ってちょっと一声かければ,一歩踏み出せば,すごく世界が変わることがあるよと,恥ずかしさの前で立ちすくんでいる現役の中高生に,こうメッセージを送るんですね.でもこれって,僕らのような大人が「あったかもしれない青春」を延々反芻することで行っている,過去への呪いのそのものです.
でも僕は,この台詞を少しポジティブに考えたいんです.青春をやり過ごしてしまった人間にも,今から自分の人生をどう楽しくするか,というメッセージになりうる気がするのです.現役青春中の方々のようながむしゃらさやエネルギーはなくても,諦めや妥協,みたいな大人のスキル込みでやってける分,大人は強かなのです.

「十年後にはきっと、せめて十年でいいからもどってやり直したいと思っているのだろう。今やり直せよ。未来を。十年後か、二十年後か、五十年後からもどってきたんだよ今。」

結局これから先死ぬまでのうちで,今が一番若くて可能性があるときなんですよね.過去はどうやったって変わらないんだから,「ありえたかもしれない青春」を反芻するのは,時々くらいにしておいた方がいいと思うのです.多分そういうことなんだと思います.
とはいえ逆に,アゲイン前は「リア充」だったはずの暁はちょっとした手違いで,絶賛暗い青春におちていきます.まさに対照的で,「リア充」と「非リア充」の境目なんてそんな大したもんじゃないんだぜ,ということなのかも知れません.

アゲイン!!(2) (KCデラックス) アゲイン!!(2) (KCデラックス)
(2011/11/17)
久保 ミツロウ

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『アゲイン!!(1)』

もしたられば,誰でも一度は思ったことがあるはず.最近では思うことは少なくなりましたが,大学入りたての頃はずいぶん高校時代に戻りたいなぁと思っていたモノでした(当時環境がすごく変わって,さらに第一志望の大学に受からなくてちょっと凹んでいたのです.)
ということで,『モテキ』で非モテ男の心をえぐった久保ミツロウ先生の新作は『アゲイン』という名のごとく,高校生活をもう一度やり直せるとしたら?というタイムスリップ物です.高校の三年間,部活もせず,友達もおらず過ごした主人公は,卒業式の日にとあるきっかけで入学式の日にタイムスリップしてしまいます.実は彼には卒業式の日に思い出すような心残りがありました,それは入学式で気になった応援団の,女子部長のことでした.三年間をやり直せることになった彼は,このまま行けば何も起こらないことが分かっている砂漠のような日々を変えるために,ある行動に出るのでした…という形で話が始まります.
主要キャラクターが何人かいるのですが,どうもいろいろ事情を抱えている様子,それがこれからどう転んでいくのか?物語はまだ始まったばかりです.というか,そもそも主人公は高校三年間をきちんとやり直せるのかもよく分からず(途中で戻ってしまう可能性も当然ありますよね?),本当に話がどう転がるのか分かりません.二巻が待ち遠しい!!
掲載誌が少年誌と言うことで,現役の高校生に向けて描いているようなことが後書きに書かれていますが,何となく自分のような青春コンプレックスを多少なりとも煩っている人もターゲットなんじゃないかなぁと思わなくもありません.A5版?ですしね.
もし高校時代に戻れたら,僕は何をするだろうなぁ(遠い目).

アゲイン!!(1) (KCデラックス) アゲイン!!(1) (KCデラックス)
(2011/09/16)
久保 ミツロウ

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『武士道シックスティーン』、『武士道セブンティーン』著:誉田哲也

『武士道シックスティーン』と『武士道セブンティーン』の感想です。
これらの作品、要約すると、勝ち負けを極端に嫌う早苗と、宮本武蔵を師と崇め、勝負に固執する香織という正反対の性格をしている二人の剣道少女によるガールミーツガールストーリーです。この全く正反対の二人が、剣道を通してお互いに影響を与え合い、成長していきます。特に『武士道シックスティーン』で出会ったばかりのころの二人のやりとりは、正面に向かい合っているにもかかわらずお互いがよく見えず、理解もできず、まるで面をつけて向かい合う剣道そのもののようです。
読みながら自分のこの作品への「好き」は『彼氏彼女の事情』へのそれに近いなぁと思いました。僕がカレカノを好きな理由はつまるところ、思春期の正の側面の全てが描かれているように感じるからなわけですが。自分と異質な、しかし対等な人間と真っ正面にぶつかり合うこと。ぶつかり合いながら青春時代を通り過ぎてみると、確かに地続きなのに以前とは明らかに違う自分になっている不思議な感覚。それがこの二冊でもカレカノでも、非常に上手に表現されているような気がします。
防具の臭さを感じさせない、初夏から盛夏の空気を感じさせる良質の作品です。超オススメ。

武士道セブンティーン 武士道セブンティーン
(2008/07)
誉田 哲也

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武士道シックスティーン 武士道シックスティーン
(2007/07)
誉田 哲也

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彼氏彼女の事情 (1) (花とゆめCOMICS) 彼氏彼女の事情 (1) (花とゆめCOMICS)
(1996/06)
津田 雅美

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