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『マージナル・オペレーション改 02』著:芝村裕吏、挿画:しずまよしのり

一時期ニートをやっていて、食うに困って民間軍事会社(PMC)に入って中東で指揮官の適性に目覚め、そこで出会った少年兵初期メンバーとして傭兵稼業を始めた主人公新田良太の話。舞台は中国。語学の勉強に士官学校で軍事用ドローンの勉強。勉強だけではしょうがない。覚えたことは使わなくては意味がない。

同一世界の前日譚『遙か凍土のカナン』から登場しているコサックのパウロー(同名の人物だが、作中で100年近く時間が経っているはずなので、なんかファンタジーなギミックがないと子孫?ということになるはず)が意味不明。というか、シベリア共和国がいったいどんな意図で主人公を取り扱っているのかが全般的にサッパリ分からない。この辺が今後明らかになるのかもよく分かりません。それを言うとそもそもジニ、ジブリールも同名のキャラクターが登場しているので、どういうこと?って感じですが。やっぱり本当は怖いガンパレード・マーチ的な裏設定があるのでしょうか?

しかし、主人公どこでそんなこと勉強したの?というような立ち回り。基本的な立ち回りはPMC辺りで勉強したのと、読者の見えないところで色々と修羅場をくぐっているのでしょうが……。

マージナル・オペレーションシリーズの感想

遙か凍土のカナンの感想

『マージナル・オペレーション改 01』著:芝村裕吏 挿画:しずまよしのり

自分以外にあまりこのシリーズについて語っている人を見たことがないのですが、4本の外伝を挟んで新シリーズ始動です。相変わらずミャンマーの山奥でイチャイチャやいのやいのやっているところに、アラタのご先祖様が作ったシベリア共和国……ではなく中国に請われてジブリールと共に一路北朝鮮を目指すことになります(後書きにしかでてこなかった「アラタの失踪」というやつだそう)。

はるカナの登場人物と同名の人たちが出てくるわけですが、『空白の一年』で語られたシベリア国との因縁がどのように語られるんでしょうね?「やがて去る子どもたちの国」は未だ道半ばなわけですが、シベリア国の建国時代のようにはきっと行かないはずで、どういう風に話が落ちるのか割と楽しみです。しかし、主人公とはいえ秋田の新田家はすごい家系ですよね。

とはいえお話は始まったばかり。今後作品世界の情勢がかなり明らかになりそうな感じですが、シベリア共和国が現代ではどうなっているのか、非常に興味があるところです。

『マージナル・オペレーション 空白の一年 下』著:芝村裕吏 挿画:しずまよしのり

マージナル・オペレーション本編では語られなかった空白の一年。タジキスタンのジブリールの村から撤退したアラタたち一行が、日本に帰国するまでに何があったのかを語った外伝です。前巻では撤退からシベリア共和国の誘いに従ってイランに行くことを決意するまでが書かれましたが、今回はまさにイランに行くまでの道中劇という感じです。

一行は様々な勢力の力を借りてイランにたどり着くわけですが、そのせいか戦闘指揮の上手さというよりも交渉人としてのアラタの能力の高さが際立っていたなぁという印象か。自由戦士社で鍛えられたとはいえ、本当に日本でニートをやっていたのかと言わんばかり。人間、活躍できるかどうかは能力もあるけど、環境もあるのでしょう。前半衛生状態の悪さからか子どもたちが病気になったりなんだりしますが、この辺りの経験から、3巻以降で大規模な軍隊を運営する際のノウハウを身につけたりするのかなと思います。外伝で、基地の衛生状態を気にする弱音をホリーさんに吐いたりしてましたしね。

同時にこの「空白の一年」は『遙か凍土のカナン(はるカナ)』と本シリーズのクロスポイントでもあるわけですが、前巻から明らかではありますが、過去の因縁をいかに払拭するのかが見所かと思えば、割とあっさりカタがついたりします。ジブリールはまさにアラタの守護天使という感じ。

以下はネタバレです。

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『マージナル・オペレーション 空白の一年 上』著:芝村裕吏 挿画:しずまよしのり

物語の中身とは関係がないですが、本ブログでも色々と感想を書いているシリーズの外伝?です。

本作、主人公のアラタが食うに困って民間軍事会社に就職して部隊の指揮を執ってみたら、どうも才能があるらしく、そこで出会った少年兵、少女兵を食べさせて、教育を受けさせ、貧困から脱出させるために傭兵業を始める(そして結果的に何千何万という子どもたちを、貧困から救う……かも)というシリーズなんですが、本作は正伝とでもいうべきメインの5巻に描かれる話の中にあるミッシングリンク、1巻で中東の紛争地帯で最初の24人と出会ってから2巻で日本に帰ってくるまでに、「子供使い」として名前を上げる過程で何があったのかを描いています。一言で言うなら子連れの貧乏旅行という感じでしょうか?

正伝の方は主人公のアラタの視点で描かれていたわけですが、本作はヒロインのジブリールの視点から描かれます。恋する少女が朴念仁のアラタ相手に四苦八苦する様子が大変好ましい。たまにナイフでサイレントキリングしたりするけど……。ベッドでは見てろよ(意訳)みたいなこと言ったりするけど……。

本作、詳しくは書きませんが、同作者とイラストレーターでやっている別シリーズ『遙か凍土のカナン』も読んでいると、より楽しめるように思います。個人的にはニヤニヤしながら読んでいました。某国製の6.5mm口径のAK(実際にはないはず)とかたまりません。本文中にどういう風に登場するのかは、読んでみてのお楽しみということで。

『マージナル・オペレーション』『遙か凍土のカナン』両方読んでいるとより楽しめる、ファンサービス満点の一作です。
  

『マージナル・オペレーション F2』 著:芝村裕吏 挿画:しずまよしのり

本編の後日譚に属する短編を集めた短編集です。以前、星海社のネットラジオで読者から色々とリクエストが来ていたのを覚えていますが、それへのアンサーなんだなと読んでおりました。前巻Fと同様に各話毎に手短な感想を書きます。

##第1話 私のトリさん
主人公は子どもたちの1人、サキ(確か日本人とタイ人のハーフという設定だったはず)、彼女が東京の高校に通い始めた後の、ある日の出来事を描いたエピソード。彼女がどうやってアラタの元に来たのかもちょっとだけ語られ(スモーキーマウンテン出身という設定や病弱だったという設定がより具体的に語られる)、本作を通じてサキというキャラクターに厚みが出ます。本筋とは外れますが、日本や東京が異様に時間にうるさい、それを誇らしく思っているのがおかしい、というカルチャーギャップは結構面白いなぁと。日本人に限らず西洋人ですら、産業革命以前はそう言う感覚だったらしいですし、言われてみると確かにそうかもしれません。

##第2話 新しい首輪
シリーズの主人公アラタに関わった順で言うと、メインヒロインのジブリールより早いホリーさんの話。ジブリールとアラタを奪い合う女の戦いと、ただれているようで、まったく健全なアラタとホリーの会話劇が主題なのかな。表だってキャットファイトするわけではないので、冷戦みたいなもの、周囲が大変な思いをしているのが少し笑えます。明確に書かれているわけではないですが、仕事の話に集中して、周りのことが分からなくなっているアラタって本当にかっこいいんでしょうね。それこそ対局中の棋士みたいな感じで。

##第3話 若きイヌワシの悩み
アラタに最初からついてきていた子どもたちのうち、彼に比較的近い位置で物を見ているイブンの話。傭兵をやめた後にどうするのかという話で、多分第1話のサキの話の前日譚になるのだろうと思います。イスラム圏の人の職業観が垣間見えて面白いエピソードでした。職人に弟子入りしてオンザジョブで仕事を覚える江戸時代以前の日本に近い職業観なのかな?近代化されていない地域の出身だから、学校というものはイスラムの神学校しかない、ということみたいです。

##第4話 子供使いの失踪
アラタ一行が徳島で開催されているイベント「マチアソビ」に来て、その上で騒動に巻き込まれるという話。失踪という言葉の通り、アラタがいなくなって部隊が非常に混乱します。著者の芝村さんの、おそらくは知己の人々がキャラクターとして出てくるのと、氏の他の著作からキャラクターやメカが登場します。が、それらを僕は読んでいないので、胸が躍ると言うことはありませんでした。そう言う意味でもコアなファン向けのファンサービスみたいなものかと思います。

各エピソードの後に色々とさらに短いサブエピソードが挿入されて、その中にはなかなかドキッとする物もありました。それは読んでのお楽しみとしておきましょうか。

『マージナル・オペレーションF』著:芝村裕吏 挿画:しずまよしのり

大抵のシリーズ小説というのは完結後に短編集が出ますが、本作もその1つです。本編は主人公の一人称視点で描かれていましたが、本作はいろいろなキャラクターに主観が移ります。勿論主人公もその一人ではありますが。本エントリーでは短編ごとに感想を書きたいと思います。

『マフィアの日』
本業はゲームライターのはずなのですが、見た目がいかにもそっちの人であることで有名なマフィア梶田さんが主人公で、彼の視点で語られる物語です。一言で言うならばハードボイルド小説です。アニメで言うと、カウボーイビバップを見ているような感じ。懸想にしているソフィーは自分が大嫌いな本編の主人公アラタが好き、人生うまくいかないもんですねぇ。とはいえ、アラタが自虐的に語る自分のビジネスを、他者がどう評価しているのか?という点が興味深いです。あとは、梶田がヒロインのはずのジブリールと境遇的に近いというのもシュールで面白いところでしょうか?

『父について』
子ども達の一人、ハサンから見たアラタのについての話です。個人的にはコレが一番面白かったかなと。なぜアラタが子ども達やオマルにあれほど信頼され、尊敬されているのか、その理由が語られます。アラタとオマルという2人の保護者が現れる前の子ども達の不遇な状況が語られるんですが、ぶっちゃけ読んでて辛いです。あとは、ハサンの視点からなのでムスリム的なものの見方で家族観や結婚観が語られるのも個人的には見所かなと。同時期に発売のコミック版の補助線になる作品です。あっちも2巻から俄然面白くなってきましたよ。

『赤毛の君』
第3者から見たジニの話。個人的にはあまり興味はそそられなかったかなぁと。楽屋ネタを聞かされてるような感じと言うか…。ジニが祖母からもらった携帯絨毯の一節はすごく面白かったです。そういう風に使うんだ!という驚きと、もとの家族の愛情の一端を垣間みた気がしました。

『ミャンマー取材私記』
一人の女性ジャーナリスト、イーヴァ・クロダの目を通して描かれるアラタの話。本編でも彼は繰り返し「自分は普通だ」と言っているけど、そんなことネェだろというのが第三者の目を通して描かれます。アラタは主人公補正でか、話が進めば進むほどモテるようになるのですが、このエピソードでも同じくある瞬間に突然アラタと「寝てもいい」と言い出します。一人称で描かれているにもかかわらず、なんでいきなりそうなったのかがサッパリ分かりません。正直羨ましい。

『チッタゴンにて』
最後のエピソードで主観がアラタに戻ります。バングラデシュで傭兵家業の次のビジネスを探しに行くアラタとジブリールが主要な登場人物です。要するにデート。アラタが徐々に女性らしくなるジブリールの魅力に煩悶しているのが分かります。現在進行形で発行されている『遥か凍土のカナン』で出てきたチッタゴンの宿、曾祖父(だっけ?)とオレーナよろしく一続きの部屋に二人で泊まります。スターシステム的な演出が憎い一遍です。

本編の隙間を埋める良い短編集だったと思います。次があるなら是非、ジブリールの視点から書かれた作品を読んでみたいですねぇ。

  

『マージナル・オペレーション 01』 著:芝村裕吏 挿画:しずまよしのり

ガンパレードマーチの原作者 芝村裕吏先生の新作
30歳ニートが一年発起して就職したのはPMC,要は傭兵稼業.どうにもめぐりあわせが悪くて,適性がないと日本の職業社会からはじき出された主人公だったが,意外な才能を開花させて…という作品.まぁそんなにすんなりとはいかないのですが….
冴えない僕に隠された才能が,というのは中二的な妄想の最たるものでしょうが,なかなかどうしてこの作品は地に足がついているような気がします.才能だけで物事が自分の望む方向に転がることはないというのは,ある程度歳を取らないと分からないことのような.こちらで言われているように,ある程度年齢層高めの人向けの作品なのだろうな,という感じ.
地に足がついた,とか身も蓋もない,という形容詞が良く似合う作品ではありますが,ちゃんと女の子が出てくるのは安心していただきたいというか,ちゃんとエンターテインメント作品です.ジブリールちゃんマジ天使.
ちなみにここから試し読みできます.
01ということで続編の予定があるようで,非常に楽しみです.

マージナル・オペレーション 01 (星海社FICTIONS) マージナル・オペレーション 01 (星海社FICTIONS)
(2012/02/21)
芝村 裕吏

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