マージナル・オペレーション本編では語られなかった空白の一年。タジキスタンのジブリールの村から撤退したアラタたち一行が、日本に帰国するまでに何があったのかを語った外伝です。前巻では撤退からシベリア共和国の誘いに従ってイランに行くことを決意するまでが書かれましたが、今回はまさにイランに行くまでの道中劇という感じです。
一行は様々な勢力の力を借りてイランにたどり着くわけですが、そのせいか戦闘指揮の上手さというよりも交渉人としてのアラタの能力の高さが際立っていたなぁという印象か。自由戦士社で鍛えられたとはいえ、本当に日本でニートをやっていたのかと言わんばかり。人間、活躍できるかどうかは能力もあるけど、環境もあるのでしょう。前半衛生状態の悪さからか子どもたちが病気になったりなんだりしますが、この辺りの経験から、3巻以降で大規模な軍隊を運営する際のノウハウを身につけたりするのかなと思います。外伝で、基地の衛生状態を気にする弱音をホリーさんに吐いたりしてましたしね。
同時にこの「空白の一年」は『遙か凍土のカナン(はるカナ)』と本シリーズのクロスポイントでもあるわけですが、前巻から明らかではありますが、過去の因縁をいかに払拭するのかが見所かと思えば、割とあっさりカタがついたりします。ジブリールはまさにアラタの守護天使という感じ。
以下はネタバレです。
しかし、相変わらず謎なのが、はるカナの主人公新田良造とアラタの関係。おそらくはアラタから見ると良造は曾祖父の関係だと思うのですが、彼はどこに骨を埋めたのか?カナンの6巻までではオレーナとの間に子どもはできたけど死産?したような感じですが、実は生きていて日本に送られて新田家で育てられ、それがアラタの祖父になるのでしょうか?多民族国家シベリア共和国の統合のために、コサックの娘オレーナとの間に公式に子どもがいるのは不味いという感じではあったので、実は母子ともに無事だったけど死んだことになっているんでしょうか?はるカナの方では、大人ジブリールとの間に子どもができてくれれば良かったが、どうもそうはならず(良造が手をつけず)にスターリン(あのスターリン)の落胤ヤーコフが次期指導者になり、さらにその息子のヨシフが継いで、今回の黒幕になるという感じなのでしょうか?この謎は2016年初夏発売というはるカナの最終巻で明らかになるのでしょうか?
ちなみに、ハキムは実は今巻でシベリア出身ということが明らかになるんですけど、マンガ版を読んでいたときに感じていた疑問が解消しました。マンガ版の方の登場人物紹介にハキムが出てこなくて、(コメントで指摘をいただきました。マンガの登場人物紹介にいないのはハサンでした。)最初からいない別の世界線の話かと思ったんですけど、そうでもないらしい。とにかくアラタたち一行が歴史の表舞台に出てきたときに連れていた24人の子どもたちにはいるけど、タジキスタンの村からいたわけではない、ということなんですね。納得。
コミックに居ないのはハサンで、ハキムは居ます。フラグメンツでハサンが小さいハキムと思い出を語ってるので、それぞれで25人目が違うことに成ってます。
ご指摘ありがとうございます。それは失礼しました。本編と外伝とマンガでそれぞれ視点が違うんですが、その辺ってどうなってるんでしょうねぇ。
上を読み返してましたが、「小さな」というのが付くのは、フラグメンツではハキムでしたが、シンという子に成ってますね。
本好きというのも「小さい」ハキムでもそうでした(勿論ふたりとも最初から本好きというも考えられます)。
ジブリール視点ではハサンもアラタのことを早く知りすぎているというのもあったのでハサンの正体も怪しいですね。
コメントありがとうございます。
コミックを確認してきました。確かにハサンがいなくて、ハキムがいますね。
本作、小説版はそれぞれの人物の一人称視点で書かれているので、本人の認識の外にあったり、さして重要でない事柄については無視されることも往々にしてあるのでしょうが、なんか違和感が残りますね。
なんというか、往年のガンパレード・マーチ(ご存じないならすみません)のような、遠大な裏設定があるのかと思い始めました。