Landreaall」タグアーカイブ

『Landreaall(32)』著:おがきちか

年に2回の新刊が出ました。今回はアトルニアの職業の話と、次の大きなクエストが始まる話。

前半はアトルニアの職業の話、「何十年かに一度の王様の戴冠式で王冠を運ぶ職業を代々受け継いでいる祖父と子どもの話」と、「暴れん坊将軍DXが、中間搾取が酷い派遣業者に手入れをする話」の2部構成です。良いファンタジーやSFって、現実の風刺画になったりしますが、今回はなんかそんな感じでした。王冠を運ぶ仕事は、「そんなものが仕事になるのか?」と現代の感覚では思いますし、後者のエピソードで出てくる仕事は現代でもありそうな話で……。「誰にでもできる仕事」って足下を見られがちですが、それができるなら「ちゃんと暮らしていける」べきだよなぁと思います。現代も結構怪しいですね……。

後半は王城の地下のダンジョン攻略でトラブルが発生します。エピソードの始まりで事態は混乱を極めて終わりますが、はてさてどうなっているのでしょうか?エピソードの緊迫感とは別で「騎士と姫君という関係性の否定」をあれほどロマンティックにやってのけたDXとディアの仲が、大仕事をやっている現場に差し入れするくらいにアットホームなのはちょっとほっこりしますね。

次は半年後です。

他の巻の感想はこちら

  

『Landreaall (31)』著:おがきちか

本ブログで定期的に追いかけているファンタジー漫画。

前巻でアブセント・プリンセス編が完全におしまいで、この巻から本格的に次のエピソードに移行という感じみたい。DXが風花山脈からウルファネアにたどり着くまで、ディアの過去、そしてルーディとライナスの商売の話に+αという感じ。ずっとアトルニア王国やアカデミーのことをやっていましたが、これからは少し、1〜3巻のような竜がらみのエピソードが出てきたりするんでしょうか?巻としてはお話の種まきをしている状況で、ここでちりばめられた伏線が後々回収されるのでしょう。

特装版の特典冊子は『六甲の冒険』。DXたちがいるLandreaall世界の此岸ではなく、彼岸のような世界のお話です。いずれこの辺の事情も本編で語られるのでしょうか?

これまでの巻の感想はこちら

『Landreaall (30)』著:おがきちか

前巻が「アブセント・プリンセス編」の後片付け編でしたが、本巻で本作にずーっと通底していた「革命」の清算が終わります。

DXとメイアンディアはお互いの気持ちを確かめあう。新しい王様としてファラオン卿が立ち元号が変わる。そして、新王の傍らにはもちろん王妃のメイアンディアがいるが、DXは一人ウルファネアへ。

3巻の時のように物語は大きく一区切り(DXの恋にも一区切り着いたし、アトルニア王国にとっても「革命」との関係性が大きく変わる)。次の展開がどうなるのか、現段階では見当がつきません。とはいえDXは一段階強くなったようだし、メイアンディアの立場についても、DXが思っている物とはちょっと違うようです。アトルニア王国の外か、中か、どこかは分かりませんが、またDXはトラブルに巻き込まれるんでしょう。次は半年後、楽しみです。

特装版にはDXの父母のリゲインとファレルのエピソードが、『淑女の剣帯』という結婚直後の話も素晴らしかったんですが、今回も面白いです。なんだかんだ、救国の英雄が庶民の女性と結婚したということが気にくわない人たちがアトルニアにいて、彼らの仲を引き裂こうとあの手この手で籠絡しようとするわけですが、さてどうなってしまうんでしょうか?という話。特装版の表紙はアンちゃんなんですけど、通常版の表紙はDXとディア、正直あっちの方がいい、というか正直素晴らしすぎるんですよねぇ。本巻のハイライトだし。卑怯だぞ一迅社!

そもそものお話の説明はこちら。

29巻までの流れはこちら。

 

 

『Landreaall (29)』著:おがきちか

アブセント・プリンセス編、後片付けとでも言うべき巻でしょうか。関わった人たちのその後の身の振り方が示されます。クエンティンは本作の中でもかなり明確な悪意を持った人でしたが、彼ですら不幸な過去に人生を狂わされた登場人物の一人に過ぎず、結局DX達が戦っていたのは過去の革命なんだなぁと思います。DX達の父親世代が運命に翻弄されて涙を流しつつ、それでもよかれと思って撒いた種がちゃんと芽を出したという感じです。

ついにユージェニの母親であるアンナ王女が何を考えていたのかが明らかになるんですが、彼女も愛を貫いたユージェニ同様強い女性でした。腕っ節も強いイオン、ユージェニ。けんかはできないけどディアや13巻辺りで腕を振るったトリクシーも、本作の女性はそれぞれ強くてかっこいいですね。

色々大きな切った張ったやったので、次はしばらく日常に戻るのでしょうか?で、大老、ディア、レイの人間関係はいろいろな人から様々な誤解を受けていて、色々気持ちの行き違いや誤解があるわけですが、どうもそのこんがらがったところが解消しそうな気配が。半年後が楽しみです。

ちなみに限定版には念願のアニメがついているんですが、まだ見ていないので、見てから感想は書くかもしれません。

そもそもどういう作品かはこちら

既刊の感想はこちら

 

『Landreaall (28)』著:おがきちか

非常に長期間に渡って描かれたアトルニア王国の過去に迫る「アブセント・プリンセス」編も完結です。27巻にてクエンティン、ユージェニ姫との決戦に勝利したDX一行。しかしクエンティンの隠し弾、人の秘めたる強い思いを暴走させる呪いが、オズモおじさん、タリオ卿と昼食を取っているアニューラスの中で炸裂します。クエンティンの呪いは大老も襲い、窓から身を投げようとしているところを助け出したフィルとエカリープのロビン。彼らが大老の部屋を訪れた目的は、ロビンを、祖父と目されている大老に会わせること。そして砂漠に放り出されたリゲインとファレルは?ということで、これらのイベントが決着します。

かねてから謎であったメイアンディアの天恵は、「記憶を取り戻させる」というものでした(色々応用は利くようですが)。大老の側にメイアンディアが寄り添っている理由は、呆けてしまった大老の記憶を取りもどさせて、国王として役目を果たせるようにするというもののようです。淑女と騎士という立場の上に強い信頼関係が結ばれた二人ですが、なんか複雑ですねぇ。

個人的にとても良かったなぁと思ったのは、クエンティンと六甲の相似性でしょうか?ディアの天恵で失われていた記憶を取り戻したクエンティン。その中にはアンナ王女と恋人の従騎士の思いやりというか恩というか、そういう記憶がありました。片や六甲は、知性を持った人型の道具とも言うべきニンジャとして生まれ、自分の命を非常に軽いものと、当初考えていました。そしてルッカフォート家の面々をはじめとして、人間として生きて良いのだよ、と言われて、ニンジャとしての自意識と絶えず衝突してきました。最たる物は23巻の六甲のセリフ「恩を返すために生きなければ」でしょうか?このセリフから考えると、自分に注がれた恩や思いやりを思い出してしまったクエンティンは、今後も生きなければならないんでしょうね。

生まれはあまり幸福ではなかったけれど、育つ過程で受けた恩や思いやり、その人本来の人間性のおかげで他人に害を与えず生きている人たち、『彼氏彼女の事情』の有馬くんとか、ハリー・ポッターシリーズのハリーなんかもそうですね。そういう話には年々弱くなる気がします。キャラクター本人への共感というよりは、どちらかというとそういう子たちを見守るおじさん役として、現実の若い子たちには優しくせんといかんなぁと思うのです。

他の巻の感想はこちら

Landreaallという作品全体についてはこちら

『Landreaall (27)』著:おがきちか

半年に一度のお楽しみ。おがきちか先生の大作ファンタジーLandreaallの27巻です。

26巻は「さあ反撃開始だ」という感じでしたが、本巻はDXたちとクエンティン、ユージェニの戦いの決着までが描かれます(シーンが王城に飛んだり、砂漠に飛んだりしますが)。大変長く、数年にわたりこのエピソードをやっていますが、アトルニアの王城にたまった様々な澱を一気に押し流すような、そんな新しい流れの湧き出し口を見ているようです。3巻の火竜との決戦に匹敵するくらいDXもイオンも、そしてディアも満身創痍になるわけですが、伏線の回収と戦いの盛り上がりとで主人公たちもかくやというような読後感。ファン冥利に尽きます。ということで、継続して読んでおられた方で、ここ最近読んでなかったという方は是非お読みください、面白いですよ。ということで。

続きを読む

『Landreaall (26)』著:おがきちか

いやー、面白かった!

さて、アトルニアを現在の姿たらしめている「革命」の真実に、アトルニアから遠く離れたクレッサールの砂漠にて迫るDXたち。前巻までで王国の崩壊を企むクエンティンの策略にはまり、見事に分断されてしまったDXたちでしたが、本巻では仲間が集い、ついに全面対決と相成ります。奴隷商に売られたDXを助けに来たライナスとルーディー、そして「サンダーレンのマダム(9巻以来実に16巻ぶりの登場)」や奴隷商カリファの力すら借りて、父リゲインと同じくユージェニと刃を交えます。さて戦いの行方は、というところで次巻に続きます。

もう何年連載しているのか分かりませんが、主人公DXの着実な成長を感じます。なんというか、必要に応じて人に任せたり、他人の力を借りたりすることに躊躇がなくなってるんですよね。本作、主人公たちの個人のレベルとしては最初からかなり高いところにある作品ですので、パワーアップする余地というのがこういう、ジミーな対人スキルだったり、リーダーシップだったりするわけですが、パワーアップした能力が遺憾なく発揮されるという意味では意味ではロボットアニメにおける主人公機交代回くらいのカタルシスのある巻です。大変読んでいて気持ちが良い。

他方、結局かつてなにがあったのか、ということについて、色々と明らかにはなるんですが、結局最終的に本事件にどのようなオチがつくのかは見えません。現在のところの敵に当たるクエンティンにしても、彼の命を取れば全てが解決するというものでもないでしょうし、何を以て彼が敗北するのか、色々伏線は撒かれつつ、どこがどこにつながっているのかは読めません。おがきさんのストーリーテリングが光ります。あと、いろんな人の天恵(超能力のようなもの、最近だと精神干渉系の能力者が多数登場している)がいったいどういうものなのか、サッパリ分かりませんし、その辺も明らかになるのかなぁなんて。

先に書いたように、9巻以来16巻越しに登場しているキャラクターがいたり、何度も読み返して何回も楽しめるスルメのような王道ファンタジー。本レビューを見て気になった人がいたら、7巻位までかなぁ、とにかくまとめて読んでみて欲しいです。先に行けば行くほど、面白くなりますので。損はさせません。

今巻から限定版ではなく特装版となりましたが、おまけ漫画は主人公たちが身につけている武術について。前巻の最後に出てきたライナスの「裏打ち」の舞台裏が見えます。

さて、次は半年後、待ち遠しくて仕方がありません。

25巻の感想

24巻の感想

 

『Landreaall (25)』 著:おがきちか

24巻の感想はこちら(個人的にまとめた本作のあらすじもこちら)

半年に一回のお楽しみ、おがきちか先生のLandreaallの25巻です。今巻も引き続き「王制」を憎むクエンティンとの直接対決です…といっても、パーティは強制解体され絶賛大ピンチですが…。以下ネタバレを含みつつ感想を書きます。

続きを読む

『Landreaall (24)』 著:おがきちか

どう読んだらよいのかわからない人も多いでしょう(ランドリオールと読みます)、知る人ぞ知るおがきちか先生の長編ファンタジー漫画。ワンピースは「海賊王に俺はなる!」な漫画ですが、本作はいうなれば「俺は王様に、なるの…かな?」といった趣。2014年1回目の新刊発売です。

続き物なので紹介が難しいのですが、王位継承権を巡って、かつて行方不明になった王女の忘れ形見である姫ユージェニの登場に揺れるアトルニア王国。そんな中、彼女の母親の足跡をたどるべく旅立った主人公達の両親が行方不明に。それを追いかける主人公のDX(本当にそういう名前なんです。ちゃんと作中で理屈がついているので気になった人はぜひ読んでください。大体6~7巻くらい)と妹のイオン、そしてなぜかついてくるDXの想い人で次期王妃のメイアンディア(どういう事情なのか気になる人はぜひ(ry)。両親の無事は(読者には)語られるが、両親の、そして続いてDXの前に立ちはだかるは、いかにも怪しかったクエンティン。アトルニア王国の闇に人生を狂わされ、王制への復讐を悲願とする彼の野望がついに明らかになる本巻。

さて、やっと本巻の話ができます。いろいろなエピソードが挿入され、一つの大きな目的に向かって最初から物語が動いて いない 本作ですが、本エントリーの枕文で書いたように「王様」にまつわるエピソードこそが、この作品の本筋=グランドクエストであろうという私の読みからすると、そこにド直球で切り込んでいるのが本巻です。主人公とその両親の前に立ちはだかるクエンティンは、ユージェニを使って王制を破壊しようとするまさにラスボス的な存在(「王様」というテーマに関して本当のラスボスは彼をも縛り付ける前王の狂気と呪い)であり、そんな彼はメイアンディアをも使ってDXを篭絡しようとします。そんな彼がどんな決断を下すのか?「王様とは何か」「権力とは何か」という問いに真剣に向き合いだした16巻あたりから,彼がどんな変化を見せているのか、次巻が非常に気になります。(本作は伏線が非常に緻密なのです。その辺の巧みさは私には到底語りえないのですが、「Landreaall」で検索をかけていただければ、非常にファナティックで緻密な考察が多数読めると思います。)

他にも、ユージェニに敗れた両親はいったいどうなってしまったのか?まさかそんなところから?と引っ張ってこられたお菓子メーカー「メルメル」の伏線、いろいろ続きが気になって仕方ありません。

今回の限定版には「馬」に関する小話が書かれた小冊子がついてきます。本作の馬は相当知的な生物なのですが、まぁ彼ら彼女らが何を考えているのかが語られて、先生本人が楽しんで描いたといっていたそうですが、趣味性抜群の逸品です。

漫画なのに相当読み込まないと咀嚼できない難儀な作品なのですが、読めばその緻密な世界観と複雑に張り巡らされた伏線とその回収の絶技に、いろいろ難しいことを考える人ほどズブズブと嵌まり込んでいく珍味のような本作。作者に思う存分作品を発表してもらいたいと思っているファンとしては、何とかファンが増えないものかと苦心しています。どうかこの駄文を読んで少しでも興味を持ったら、3巻、できれば7巻くらいまで読んでいただきたい。何度読んでも面白い、お得な作品です。