『Landreaall (24)』 著:おがきちか

どう読んだらよいのかわからない人も多いでしょう(ランドリオールと読みます)、知る人ぞ知るおがきちか先生の長編ファンタジー漫画。ワンピースは「海賊王に俺はなる!」な漫画ですが、本作はいうなれば「俺は王様に、なるの…かな?」といった趣。2014年1回目の新刊発売です。

続き物なので紹介が難しいのですが、王位継承権を巡って、かつて行方不明になった王女の忘れ形見である姫ユージェニの登場に揺れるアトルニア王国。そんな中、彼女の母親の足跡をたどるべく旅立った主人公達の両親が行方不明に。それを追いかける主人公のDX(本当にそういう名前なんです。ちゃんと作中で理屈がついているので気になった人はぜひ読んでください。大体6~7巻くらい)と妹のイオン、そしてなぜかついてくるDXの想い人で次期王妃のメイアンディア(どういう事情なのか気になる人はぜひ(ry)。両親の無事は(読者には)語られるが、両親の、そして続いてDXの前に立ちはだかるは、いかにも怪しかったクエンティン。アトルニア王国の闇に人生を狂わされ、王制への復讐を悲願とする彼の野望がついに明らかになる本巻。

さて、やっと本巻の話ができます。いろいろなエピソードが挿入され、一つの大きな目的に向かって最初から物語が動いて いない 本作ですが、本エントリーの枕文で書いたように「王様」にまつわるエピソードこそが、この作品の本筋=グランドクエストであろうという私の読みからすると、そこにド直球で切り込んでいるのが本巻です。主人公とその両親の前に立ちはだかるクエンティンは、ユージェニを使って王制を破壊しようとするまさにラスボス的な存在(「王様」というテーマに関して本当のラスボスは彼をも縛り付ける前王の狂気と呪い)であり、そんな彼はメイアンディアをも使ってDXを篭絡しようとします。そんな彼がどんな決断を下すのか?「王様とは何か」「権力とは何か」という問いに真剣に向き合いだした16巻あたりから,彼がどんな変化を見せているのか、次巻が非常に気になります。(本作は伏線が非常に緻密なのです。その辺の巧みさは私には到底語りえないのですが、「Landreaall」で検索をかけていただければ、非常にファナティックで緻密な考察が多数読めると思います。)

他にも、ユージェニに敗れた両親はいったいどうなってしまったのか?まさかそんなところから?と引っ張ってこられたお菓子メーカー「メルメル」の伏線、いろいろ続きが気になって仕方ありません。

今回の限定版には「馬」に関する小話が書かれた小冊子がついてきます。本作の馬は相当知的な生物なのですが、まぁ彼ら彼女らが何を考えているのかが語られて、先生本人が楽しんで描いたといっていたそうですが、趣味性抜群の逸品です。

漫画なのに相当読み込まないと咀嚼できない難儀な作品なのですが、読めばその緻密な世界観と複雑に張り巡らされた伏線とその回収の絶技に、いろいろ難しいことを考える人ほどズブズブと嵌まり込んでいく珍味のような本作。作者に思う存分作品を発表してもらいたいと思っているファンとしては、何とかファンが増えないものかと苦心しています。どうかこの駄文を読んで少しでも興味を持ったら、3巻、できれば7巻くらいまで読んでいただきたい。何度読んでも面白い、お得な作品です。

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