『Landreaall (28)』著:おがきちか

非常に長期間に渡って描かれたアトルニア王国の過去に迫る「アブセント・プリンセス」編も完結です。27巻にてクエンティン、ユージェニ姫との決戦に勝利したDX一行。しかしクエンティンの隠し弾、人の秘めたる強い思いを暴走させる呪いが、オズモおじさん、タリオ卿と昼食を取っているアニューラスの中で炸裂します。クエンティンの呪いは大老も襲い、窓から身を投げようとしているところを助け出したフィルとエカリープのロビン。彼らが大老の部屋を訪れた目的は、ロビンを、祖父と目されている大老に会わせること。そして砂漠に放り出されたリゲインとファレルは?ということで、これらのイベントが決着します。

かねてから謎であったメイアンディアの天恵は、「記憶を取り戻させる」というものでした(色々応用は利くようですが)。大老の側にメイアンディアが寄り添っている理由は、呆けてしまった大老の記憶を取りもどさせて、国王として役目を果たせるようにするというもののようです。淑女と騎士という立場の上に強い信頼関係が結ばれた二人ですが、なんか複雑ですねぇ。

個人的にとても良かったなぁと思ったのは、クエンティンと六甲の相似性でしょうか?ディアの天恵で失われていた記憶を取り戻したクエンティン。その中にはアンナ王女と恋人の従騎士の思いやりというか恩というか、そういう記憶がありました。片や六甲は、知性を持った人型の道具とも言うべきニンジャとして生まれ、自分の命を非常に軽いものと、当初考えていました。そしてルッカフォート家の面々をはじめとして、人間として生きて良いのだよ、と言われて、ニンジャとしての自意識と絶えず衝突してきました。最たる物は23巻の六甲のセリフ「恩を返すために生きなければ」でしょうか?このセリフから考えると、自分に注がれた恩や思いやりを思い出してしまったクエンティンは、今後も生きなければならないんでしょうね。

生まれはあまり幸福ではなかったけれど、育つ過程で受けた恩や思いやり、その人本来の人間性のおかげで他人に害を与えず生きている人たち、『彼氏彼女の事情』の有馬くんとか、ハリー・ポッターシリーズのハリーなんかもそうですね。そういう話には年々弱くなる気がします。キャラクター本人への共感というよりは、どちらかというとそういう子たちを見守るおじさん役として、現実の若い子たちには優しくせんといかんなぁと思うのです。

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