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『1518!(7)』著:相田裕

故障で野球の夢を諦めざるを得なくなった男子高校生が、高校の生徒会のハチャメチャな活動を通じてセカンドキャリアを見つけていく物語。まだまだ読みたかったのですが、残念ながら完結です。

学校というと、「いじめ」と呼ばれる暴力や教員の過酷な労働環境等、現実には必ずしも楽園ではないのだけれど、色々なキラキラが詰まった場所であることもまた事実。本作は本当に丁寧に、学校と、そこで頑張る高校生活のポジティブな面を描いてきた作品でした。相田先生は本作が商業連載2本目なんですが、1作目の『Gunslinger girl』と同じく「取材に基づいて緻密に設定された舞台の上で」「残酷な運命に挫折して傷ついた人たちが立ち直っていく過程を丁寧に描く」という部分が共通していて、それが作品世界への没入感と登場人物への共感につながるのかなと思ったりしました。次回作はどんな作品になるのでしょうか?楽しみです。

「普通の」学生生活を描いた作品として、とてもよくできている作品です。登場人物同士が関わり合いの中で人間的に成長していく様子が丁寧に描かれていて、心が洗われるようです。個人的に大変オススメな作品です。

過去の感想はこちら

『1518! 3』著:相田裕

一文で言うと、肩を壊した少年野球のピッチャーが、高校の生徒会で色々新しいことをはじめる話。

元々は相田裕先生が出していた『バーサス・アンダースロー』という全部で4〜5冊くらいの同人誌のシリーズがあったんですが、それを商業向けに作り直した作品です。前作の『Gunslinger Girl』で、挫折して色々失ってもなお続く人生、みたいなテーマですっごい作品を仕立て上げたんですが、本作もテーマは同じだなぁと。前作は壮大な心中の話のような感じだったんですが、本作には現代の日本が舞台ということで随分と優しくて温かい物語です。

同人誌版の場合、登場人物も限られているし、舞台もほとんどが学校で、まるで夢の中にいるような不思議な雰囲気が魅力でした。本作では色々ディテールが追加されて、最初、個人的には同人誌版の夢の中のような雰囲気が良かったなぁ思っていましたが、話が進んで、ぐんぐん良くなってきている気がします。3巻巻末の28.5話は、ヒロインの幸ちゃんと同じく目に涙が浮かんでしまいました。

イチローだって3割しか打てないわけで、残りの7割はいわば負けてるんですよね。一番目指して一生懸命頑張っても、次々新しい人が出てくるし、人間老いる以上は必ずどこかで負けたり、諦めたり、挫折を味わうんです。一番になるのも難しいけど、勝負から降りた後でどう生きていくかも結構難しい、昨今覚醒剤に手を出した元プロ野球選手がいたりしますが、成功や勝利が大きければ大きいほど、そこから降りたときは大変なのだろうと思います。挫折してもたいていの場合人生は続くわけで、そんな塩っぱい人生に折り合いつけて、どうやって楽しく生きていくか、一生懸命頑張ったことは無駄にはならないし、別のこと新しいこと始めても案外楽しめるかもしれないよ、と優しい言葉をかけてくれるような、そんな作品です。