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『あさひなぐ(16)』著:こざき亜衣

新しく長刀を始めた少女が、めきめきと頭角を現す。そんな王道を突っ走る作品です。

2年生に進学した主人公の旭たち。結構ありがちな、幼少期からその競技に取り組んでいる「上手い」後輩。先輩がふがいなかったりすると文句が言いたくなったりするわけです。ということで、始まった部内戦。さてさて二ツ坂高校の部内の結束はどうなってしまうのか。

ちょっとネタバレ気味になるわけですが、部内の体制や人間関係に色々と変化が現れてくる巻です。続けて読んでいる方には、旭が着々と力を付けてきていることが分かると思いますが、それを改めて部内の人間が認識します。人を呪わば穴二つではありませんが、部内戦しろと先生に直訴した後輩の愛知も、部を揺さぶったつもりが自分も揺さぶられたりするわけです。まぁ、こういうことがあると部活やサークルがクラッシュしてしまうこともあるわけですが、本作に限っては、「雨降って地固まる」案件のような感じもします。

もう16巻ですか……なかなか気軽に人に勧めづらいくらいになってしまいましたが、面白さは保証します。今時、電子書籍だとお得に買えることもあり、著者にも利益が行きますから、是非どうぞ。

過去に書いた13巻の感想はこちら。
 

『あさひなぐ(13)』著:こざき亜衣

芸術にしろ、スポーツにしろ、武道にしろ、あるいは学問もそうか、おおよそ芸事というものは理不尽なものです。体つき、感覚の鋭さ、様々な生まれ持った違いが明確になります。それで身を立てられる人などほんの一握り、アマチュアの中で実力を頭一つ抜けさせることですら、人によっては困難だったりします。

現代の日本においてこういった芸事に最初に取り組む機会は、学校における部活動で与えられることが多いのではないでしょうか?部活動は国民的な共通体験であるからか、フィクションにおいても人間ドラマの題材として好んで取り上げられるテーマの1つです。

前書きが長くなりましたが、そのような芸事を取り扱った近年の作品として、個人的に面白いなと思っているのが、本作「あさひなぐ」です。

題材は長刀(なぎなた)。主人公のあさひは、高校から長刀部に入部し、他の部員と衝突したり、勝てないことに悩んだりしながら、少しずつ成長していきます。まぁ競技を置換すればいくらでもある作品なのでしょうが、上記の芸事にまつわる理不尽がよく描かれ、中高生時代の部活動あるあるをキッチリ押さえた良作だと思います。

本13巻では、全巻から続いてきた、「長刀を続けるのか、あるいはやめるのか」というトラブルが解決を見ます。情熱が続かない、頑張っても頑張っても結果が出ない、他人と比べて心が折れる、でもあきらめきれない、それでも好き。登場キャラクターの悩みは実在の人物のようにリアルです、というか個人的にはそのあたりの悩みは非常に共感できます。

後半では2年生に進学した主人公たちに後輩が入ってきます。後輩とどうやってつきあったらいいのか分からなかったり、後輩の方がキャリアが長かったり、いまいちこいつ大丈夫か?というやつが入ってきたり、これも部活動あるあるをキッチリ押さえてきます。面白いです。

昔芸事に取り組んだことのある人、現在進行形で取り組んでいる人に共感できる要素がたくさん詰まった作品です。いかがでしょうか?