本書は現在の「国」の基本形、国民国家の成り立ちやナショナリズム(国民国家を自分の所属する共同体であると認識する人々の意識)の成り立ちと広がりを論じた非常に著名な書籍らしいです。購入してから半年以上熟成させた後にようやく読み始めることができました。専門外な上、精読というにはほど遠い読み方をしたので、書評としては浅いのはご容赦を。
要点を書きますと
– 国民国家は、ヨーロッパの宗教共同体と君主制国家をその起源とする。
– 人々が見たこともない他人を同じ「国民」と想像できるようになるためには、活版印刷によって大量に印刷された本や辞書、それによって固定化された俗語(非ラテン語の話し言葉=フランス語やドイツ語といったようなもの)が大きな役割を果たした。
– とはいえナショナリズムはヨーロッパでのみ成長したわけではなくて、南北アメリカの旧植民地国家の独立や、東南アジアや、アフリカの旧植民地国家においてもいろいろな要素が付け加えられ、世界中に広がっていった。
– 共和主義や憲法主義的な社会革命とは同じように広がったわけではない。オーストリア帝国やタイ王国などの君主制国家においても、国民統合の手段として、上に書いたようなナショナリズム醸成のための政策を積極的にとることがあった。本書ではこれを、「公定ナショナリズム」と読んでいる。
で、結論から言うと大変興味深い一冊でした。なかなか内容を適切に要約できないのですが、とはいえ、現在の国家や国民というものを客観的に見る上で、とても良い思考の道具になりそうな本だと思いました。常々「お国のため」とおっしゃる方はいますが、全体主義と自由主義の間を取った、国家という物とのほどよい付き合い方を見つけるのに役立ちそうです。
正直勘違いや誤読もあると思いますので、読書会みたいなものに参加して、色々と意見を言い合ってみたいものですね。そういったことは文系大学のゼミの役割でしょうかね?