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『女神搭載スマートフォンであなたの生活が劇的に変わる!』著:浅生楽 挿画:垂井ひろし

いわゆるFラン大学の学生海江田悠里はいかにもなグータラ学生生活を送っていたら留年してしまった。そんな彼のスマートフォンに顕現したのは、ローマ神話の運命の女神様フォルトゥーナ。彼女は主人公に人生逆転の必勝法を授ける…。

表紙がはなはだ地味で、表紙の紙も実用書っぽく、ライフハック本かビジネス本のごとしですが、意図的なものだそうです。実際のところ、人生逆転の必勝法というものも、ルーチンワークをいかに同時にこなすかとか、一つの行動でいかに複数の経験値や、他人からの信頼を得るかなど、ライトノベルというメディアとは思えない地味なものばかり。とはいえそれだけ地に足がついているということですから、やろうと思えば読者にも実行できそうなものばかり、このように物語としての面白さに加えて、ビジネス書としての性格を持ち合わせている本書の特徴でしょう。チャーチルやカエサル、織田信長など、フォルトゥーナが出会ってきた過去の偉人たちの明言やエピソードがちりばめられているわけですが、確かに彼らにも英雄譚に語られないような日常や雑事があったはずで、時代の違いこそあれ悩んだり退屈したりしながら運命に立ち向かったのだろうなぁという想像が湧いたりしました。

正直、紹介されている人生逆転メソッド、試してみたくなります。まさに本書が作中の女神搭載スマートフォンであるかのごとくです。とりあえず三位一体家事(朝、風呂を沸かしているうちに洗濯機を回し、掃除をすること、面倒なことの先に風呂という報酬を用意し、朝から風呂に入ることで体温上昇を促し、風呂上がりに洗濯物干しでベランダに出て涼を取る一石三鳥の方法、ついでに入浴中に顔や頭も洗ってしまう)は、大変快適でした。まんまと作者の意図にはまってしまっていますね。

人生は麻雀のごとく、配られた牌で勝負するしかないが、自分の意思や努力で、少しずつでも良い役を作ることはできる。といったような作中の言葉がありますが、人生一発逆転などなくて、何かが変わるとしてもそれにはそれなりの積み上げがあったりするんですよねぇ。本当、そうだと思います。