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『Landreaall (29)』著:おがきちか

アブセント・プリンセス編、後片付けとでも言うべき巻でしょうか。関わった人たちのその後の身の振り方が示されます。クエンティンは本作の中でもかなり明確な悪意を持った人でしたが、彼ですら不幸な過去に人生を狂わされた登場人物の一人に過ぎず、結局DX達が戦っていたのは過去の革命なんだなぁと思います。DX達の父親世代が運命に翻弄されて涙を流しつつ、それでもよかれと思って撒いた種がちゃんと芽を出したという感じです。

ついにユージェニの母親であるアンナ王女が何を考えていたのかが明らかになるんですが、彼女も愛を貫いたユージェニ同様強い女性でした。腕っ節も強いイオン、ユージェニ。けんかはできないけどディアや13巻辺りで腕を振るったトリクシーも、本作の女性はそれぞれ強くてかっこいいですね。

色々大きな切った張ったやったので、次はしばらく日常に戻るのでしょうか?で、大老、ディア、レイの人間関係はいろいろな人から様々な誤解を受けていて、色々気持ちの行き違いや誤解があるわけですが、どうもそのこんがらがったところが解消しそうな気配が。半年後が楽しみです。

ちなみに限定版には念願のアニメがついているんですが、まだ見ていないので、見てから感想は書くかもしれません。

そもそもどういう作品かはこちら

既刊の感想はこちら

 

独断と偏見による自転車沼のはまり方 -初心者向けアップグレード指南-

前提

  • 対象はロードバイクとする。
  • 既に1台持っているとする。ライト、反射板等一般的な保安機器は導入済みとする。

このようなバイクオーナーが、次はどこからお金を掛けるのが良いのか。フレーム、あるいは自転車全体を買い換える前に、お気に入りの自転車のどこをいじるか?を考えてみたい。最初の1台とあれこれ付き合ってみて自分の好みが見えてくれば、さっさと買い換えるよりも納得のいく2台目が見つかるはずである。

安全・快適

ロードバイクはちょっと慣れてくれば平気の平左で時速40kmとか出てしまうものである。名誉の負傷という言葉もあるが、自分の楽しみでやっている趣味でケガをしたり死んだりするのは本末転倒、大けがや死亡事故のリスクを下げるため、安全にはお金を掛けるべし。あと、乗るのが嫌にならないように、快適性を追求するのも悪くないと思われる。

  • ブレーキキャリパー:速い人も、遅い人も、ブレーキは指二本あるいは三本でかける。ブレーキングは技術体力よりも機材に依存するところが大きいため、投資効果大。レバーの方はただのテコなので握力に負けない剛性があれば十分だが、キャリパーの剛性が足りないとホイールとの間で振動したりして怖い。いいものを使っておけば、新しい自転車に移植も可能。
  • ヘルメット:高いほど軽くて頑丈、あるいは同じ頑丈さで軽い。ロードバイクは前傾姿勢なので、頭は軽いほど首への負担が小さく快適。
  • ハンドル、ステム、サドル:人体との接触点。これは高いものというより自分にあったものを探す方が良い。正解は自分の体に聞くしかない、安いものを色々試すべし。

動力伝達

多くの格闘技やスポーツにおいて、強い力をどう出すかというと、地面を支点にして全身の筋力を骨格と関節を通じて力点(拳、バット、ラケット)に伝えることで出す。自転車は逆に、全身の筋力をフレーム、ホイール、タイヤを通じて地面に伝えることで運動エネルギーを生み出す。ということなのでとりあえず始点と終点にお金を掛けてみよう。

  • クランクとチェーンリング:クランクは動力伝達の始点。高いものほどがっしりしていて力の伝達効率が良い。前変速はギアサイズの落差が大きくて、基本的にお金がかかってるほどよくなる(チェーンリングの製造に硬い金属を精密に削る等コストがかかる加工を行うため)。
  • タイヤ:動力伝達の終点。地面と自分の間にあるもの、止まるも走るもここが大事。自転車とはつまるところ、自分の筋力をタイヤに伝える道具なのである。あと、消耗品にお金を掛けられるのはブルジョアの証。
  • ビンディングペダル+シューズ:確かに乗りやすくなる。高い自転車で立ちゴケすると悲惨なので、最初に買ったエントリーモデルで扱いを学ぶのは悪くない。

重量の軽減

  • ホイール:大きくて重量があるため、最初に着いてくるものから良いものに変えると数百グラム軽量化できる。いいものは次の自転車に移植できる。ただ、フレームの次に高い。あと、高いものはあくまで「レース用の機材」であることは忘れないでいたいものである。余らせておくと自転車が生えるので要注意。

逆にあまり優先度は高くないもの

  • サイクルコンピュータ:なくても乗るのに支障はないため、必須ではない。あまり速度を出すことに縛られても自転車に乗る楽しみは損なわれる気もする。走った距離が見えるのは結構面白いかも。
  • 前後の変速器:3速(ママチャリ)→8速(クラリス)までは変速段数が2.6倍だが、8速(クラリス)→11速(105以上)はたかだか1.38倍である。別に変速系統が変わったところで、急に速くなったりはしない。後の変速はギアの落差が小さくコンポのグレードでそこまで大きな性能の差がでない。ということで、自転車を買い換えるときにまとめて替えてもいいのではなかろうか?推奨はされないが、仮に9,10速を使っている場合、クランクだけ11速に替えても調整次第で割と動いたりするものである。レース機材として使う場合はメーカー推奨の組み合わせにした方がいいかもしれないが。

ということで、この記事を読んでちょっとここいじってみようかななんて思った人は自転車沼にようこそ。筆者が書いたこの記事の内容に嘘偽りはないが、所詮は趣味で10年くらいロードバイクに乗っているだけの人間の言っていることであることだけは、心の片隅に置いておいてもらいたい。とはいえ、僕がこの記事を書くことで儲かるわけではないので、自分への利益誘導のために書いていないこともまた事実である。

ヒラメのポンプヘッド そして

自転車マニアの一里塚、「ヒラメのポンプヘッド」を導入してみました。漏らさず空気が入るというアレです。たかだか空気入れの先っちょのパーツに4000円前後を払えるかというアレです。ディスクホイールを使うことは生涯ないでしょうから、ちょっと安く、カムの部分が頑丈そうな縦カムを買いました。

大学1年生の時、クロスバイクと一緒に買ったパナレーサーの空気入れに別れを告げ、Lezyneの鉄のポンプも買いました。ということでアセンブルしてこんな感じ。

使い心地は最高です。全く空気が漏れる感じがなく、確実に空気が入ります。二度書きますが、使い心地は最高です。

しかし、アレ?ポンプ付属のメーターが戻らない。多分空気の逆流なりなんなりを使ってリセットしているのか、送気効率の良いヒラメのポンプでは上手く動作しないようです。なんかポンプの方をいじればこの状態が解消されるのでしょうか?現在は何となくで済ませていますが、ちょっと気になるところです。まぁ、そもそも校正かけてない計器だしなぁ。

ちなみにこれ、アマゾンでは買ってはいけません。せいぜい3000円台から4000円台前半。大都市にあるスポーツバイクの専門店で問い合わせるのが一番でしょう。小さいお店でも扱ってるかもしれません。二度書きますが、決してアマゾンで買ってはいけません。あなたがよほどの離島とかに住んでいるのでもない限り、5000円出す必要は全くありません。

『ヘルシープログラマ』著:Joe Kutner 訳:Sky株式会社 玉川 竜司

プログラマーになじみの深い用語を使って書かれた、健康維持のための各種方法論についての本。食生活の改善から、プログラマーが痛めやすい部分のトレーニングによる改善(基本的には座りっぱなしによって筋力が落ちることや、同じ部位の使いすぎが各部の痛みや不快感の原因であるため)まで書かれています。

本書を読んだ感想としては、用語はともかく、本書は「ヘルシーデスクワーカー」と改題しても意味は通るような気がしました。デスクワーカーなら、肩こり、腰痛、肥満(とまでは行かずとも毎年増えていく体重)等に悩んでいるのではないかと思います。歳をとれば取るほど体にはガタが来るわけで、体質や遺伝というのはありますが、生活習慣の改善で何とかできるならしめたもの。歳をとるほど年金や医療等の社会保障制度の劣化が目に見えている我々比較的若年の日本人からすれば、自助努力で維持できる健康は何よりの資産でしょう。

私自身は仕事で少々プログラミングをしますが、基本的には普通のデスクワーカーです。とはいえ、長時間イスに座る労働者の例に漏れず、肩こりと時々襲ってくる腰痛に頭を悩ませています。なので、6章の「腰痛への対策」はなかなかよさそう。ちなみに、腰痛というか肩こりも含めた背中の痛み全般の「緩和法」は、鴻上尚史さんの『あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント』にあったアレクサンダーメソッドをやってみてるんですが、もっと積極的に、学生時代にやっていたスポーツで痛めたところがあるので、そこを補強する意味でもちょっとやってみようかと思っています。

上にも書きましたが、用語はともかく「ヘルシーデスクワーカー」的な汎用性のある本書、座って働く方は読んでみても損はないかもしれません。

 

『アメリカン・スナイパー』著:クリス・カイル他、訳:田口俊樹他

戦争当事者の手記、回想録というと、古くはユリウス・カエサルの『ガリア戦記』、我が国に目を向けると宇垣纏の『戦藻録』等でしょうか。本作も、それに連なる一作と言えるかもしれません。

本作は2000年代初頭のイラク戦争に従軍した、アメリカ海軍の特殊部隊SEALS所属のスナイパー、クリス・カイル氏の回顧録です。同名の映画にもなりました。世界史に名だたる狙撃手というと、フィンランドのシモ・ヘイヘ、ソ連のヴァシリ・ザイツェフ等がいますが、彼も「ラマディの悪魔」と恐れられた凄腕の狙撃手でした。確かアメリカ軍の兵士としては最高の射殺数を持っているそうです。彼曰く「偶然」だそうですが。戦果がすさまじい上に、カイル氏はPTSDに苦しむ退役軍人の互助会のような活動の中で、元兵士の銃弾に倒れます。不謹慎な物言いかもしれませんが、歴史上の英雄のような人です。

本作では、訓練を受けて、イラクに赴き、様々な場所を転々としながら戦果を重ね、同時に心身を痛め、退役して第二の人生を歩き始めるまでが描かれます。時々挿入される奥さんのタヤさんの文章が、殺伐とした戦場と対比されます。クリス氏の家族は戦争を乗り越えることができたわけですが、彼の同僚や、陸軍、海兵隊の兵士の中には上手くいかなくなってしまった家族もたくさんあったんでしょう。彼は自分がしたことに悔いはなかったようですが、個人的には彼と彼の家族も、彼が射殺したイラク人と同様に戦争の被害者であるように感じられます。

戦争は避けられる限り避けるべきだという思いは今も変わらないのですが、本書を読んでクリス氏に感情移入すると、目の前で仲間が殺されそうになれば引き金を引く、それもまた正しいと思えます。こっちが何もしなくても、けんかをふっかけられるときはあるわけで、自分が直接恨みを買ってなくても、恨まれるときもあるわけで、ホント、どうすりゃ良いんでしょうね。

ビルケンシュトック フットベッド補修材のその後

いつぞやフットベッドの補修に使った薬剤。あれから2年経ち、またちょっと傷んできたので直そうかなと取り出してみると。

あれ?白かったのに変色してない?完全に輪ゴムみたいな状態に。

ちなみに2年前。

これってボンドではなく、生ゴムの樹液みたいなモノなのだなということがよく分かりました。フットベッドの補修剤は概ね2年以内に使い切れということか。ムダにしないためにはいくつサンダルを持てば良いのだろうかという感じ。いや、失敗しました。

そろそろ踵がダメになってきているので、ソールの張り替えに出そうかなと思っています。ついでに直してくれたりするだろうか?

測量野帳の勧め

皆さん、手帳は携帯していますか?

外山滋比古の「思考の整理学」、ヤングの「アイデアの作り方」、梅棹忠夫の「知的生産の技術」辺りを読み始めて考える道具に凝り始め、「18歳まで紙とペンで勉強をして、物を考えてきたのだから、考える道具として使い慣れているのはやはりノートとペンなのではないか?」と思いました。当時は意識が高く、侍のごとく常在戦場、いつ良いアイデアが出るか分からんと小型のノートを携帯するようになりました。そのときに使い始めたのは「あの」モレスキン。ブランド商売にまんまとやられました。学生のくせに1800円もする様なノートを買っていた(ページ単位で言うとあまり高くもない)んですが、あるときから測量野帳に切り替え、大変快適に使用しています。

測量野帳はコクヨが出している小型のノートで、「野帳」という言葉にあるように野外で情報を記録するためのノートとして作られたものです。複数種類があるのですが、「自由帳」的に使えるものはページに格子柄の入ったスケッチブックでしょう。

測量野帳の利点と欠点は以下の通りです。

利点

  • 安価(189円〜240円)な割に製品名が箔押しになっていたり、ルックスが上品。
  • 紙質が良く、万年筆と相性が良い(モレスキンは紙質が万年筆と相性悪い)
  • 表紙が固く、持ったまま使うのに便利(下の写真みたいに、ページの境目を水平方向に持つのが通の使い方)
  • 1冊当たりのページ数が少なく、荷物が軽くなる

欠点

  • 表紙が弱く、鞄の中に入れているだけでどんどん傷んでいく。

ということで、欠点を補い、利点を最大限に引き出すオススメの運用法はこちら(というか自分がやっている運用法です。)

背表紙にニチバンの製本ノートで補強を入れる → これだけ。製本テープの幅は35mmが良さそう。50mmでは少々大きい感じです。写真は緑の50mm


ちなみに、表紙は基本的に深緑ですが、用途別に色を切り替えれば複数冊の使い分けも容易。僕は緑をプライベート用、黒を仕事用にしています。

 

左が黒で仕事用、右が緑でプライベート用。

ということで、測量野帳。いかがでしょうか?

 

 

『良心をもたない人たち』著:マーサ・スタウト 訳:木村博江

いわゆる『サイコパス』とか『反社会性人格障害』とか呼ばれる人たちの特徴紹介と、普通の人たち向けの対策法を指南する本。どういう人かというと、『三月のライオン』の妻子捨て夫さんとかそんな感じ。

アメリカ社会の4%がサイコパス、本書で言うところの「良心をもたない人たち」で、彼らは他人を自分のために利用する駒としか思っていない。彼ら彼女らは外面は良く、徹底的に責任を回避し、平気で嘘をつき、泣き落としでも何でも使って短期的に自己利益の最大化を図る。96%の普通の人たちに言えることは、サイコパスが自分の身の回りの人間関係の中に登場したら、とにかく逃げろ、人間関係の中から排除しろ、ということらしいです。

本書の面白かったところは、倫理とか道徳の起源(インチキ学校道徳ではなく人類史において割と真面目に考えられてきた方の)、というかなぜ我々が倫理観や道徳観を持っているかという問いに仮説を立てていたところでした。要するに「自己利益を最優先する人間の集団」と「助け合い協力しあう人間の集団」どっちが戦争に勝って生き残りますか?という話です。ある種の淘汰の結果として「良心」を持った人が大多数を占めているということなんでしょう。人間社会が緻密な協力と信頼の上に成立していることから考えると、長期的にはそういった恩恵を受けられないサイコパスがじり貧(と本書には書かれている)のもむべなるかな。

とにかく日常生活においては迷惑きわまりないサイコパスの皆さんですが、彼らが大活躍できるのが「兵士」としてであるというデーヴ・グロスマン氏の『戦争における「人殺し」の心理学』が引用されていました。やっぱりこの手の研究書でワンアンドオンリーだよなと。

 

 

 

2017年 あけましておめでとうございます

昨年はついに月間PVが1000を超えるようになりました。あと、友人とあこがれだった大学の近くに別荘を持ってみたり、コミケにサークル参加したり、なんとなくやりたいなと思って動くとチャンスが目の前に来るみたいな現象が起こった年でした。

本ブログでは引き続き自分が読みたいなと思う記事を書いていきたいと思います。今年は自転車にもっと乗りたいなと思いますし、ちょっと自転車関連で変わったことをしようかなとおもっています。

2017年もどうぞよろしくお願い申し上げます.

『1518! 3』著:相田裕

一文で言うと、肩を壊した少年野球のピッチャーが、高校の生徒会で色々新しいことをはじめる話。

元々は相田裕先生が出していた『バーサス・アンダースロー』という全部で4〜5冊くらいの同人誌のシリーズがあったんですが、それを商業向けに作り直した作品です。前作の『Gunslinger Girl』で、挫折して色々失ってもなお続く人生、みたいなテーマですっごい作品を仕立て上げたんですが、本作もテーマは同じだなぁと。前作は壮大な心中の話のような感じだったんですが、本作には現代の日本が舞台ということで随分と優しくて温かい物語です。

同人誌版の場合、登場人物も限られているし、舞台もほとんどが学校で、まるで夢の中にいるような不思議な雰囲気が魅力でした。本作では色々ディテールが追加されて、最初、個人的には同人誌版の夢の中のような雰囲気が良かったなぁ思っていましたが、話が進んで、ぐんぐん良くなってきている気がします。3巻巻末の28.5話は、ヒロインの幸ちゃんと同じく目に涙が浮かんでしまいました。

イチローだって3割しか打てないわけで、残りの7割はいわば負けてるんですよね。一番目指して一生懸命頑張っても、次々新しい人が出てくるし、人間老いる以上は必ずどこかで負けたり、諦めたり、挫折を味わうんです。一番になるのも難しいけど、勝負から降りた後でどう生きていくかも結構難しい、昨今覚醒剤に手を出した元プロ野球選手がいたりしますが、成功や勝利が大きければ大きいほど、そこから降りたときは大変なのだろうと思います。挫折してもたいていの場合人生は続くわけで、そんな塩っぱい人生に折り合いつけて、どうやって楽しく生きていくか、一生懸命頑張ったことは無駄にはならないし、別のこと新しいこと始めても案外楽しめるかもしれないよ、と優しい言葉をかけてくれるような、そんな作品です。