『みんなの道徳解体新書』著:パオロ・マッツァリーノ

私は暴食もしませんし、人の恋人を奪ったりするようなことはせず、時には残業するくらい勤勉に働いていますし、自分は自分、人は人と嫉妬することも少なく、周りの人はすべて師匠と仰ぎ、怒りに声を荒げることもめったになく、あれもこれも欲しいと思っていたりしない、というキリスト教的な意味ではきわめて道徳的な人間だと思いますが、生来の天邪鬼でして、学校道徳は大嫌いです。「正しいこと」を他人に押しつけられるのが、そのうえ「なぜ」に一向に答えないところが本当に嫌いで嫌いで仕方がないのです。そんな私ではありますが、祖父は戦前も教員をやっており、道徳の前身である「修身」を高く評価している人でした。

ともあれ、本書はそんなあなたにぴったりの一冊。学校道徳の副読本を読みあさり、おもしろエピソードを抽出したり、学校道徳のうさんくささ、ロクでもなさをこれでもかと茶化し、批判する。いつものパオロ・マッツァリーノ節です。昔読んだ『反社会学講座』には感動しました。それ以来のファンであります。

道徳を義務教育に差し込もうとするお年寄りの言い分は、「最近の若い者は倫理観が欠如しているので、義務教育でしっかり教え込まなければ!」といったようなものですが、それにしても戦前に修身教育を受けていた人たちの犯罪率が特別低かったわけでもなく、戦後犯罪は一貫して減り続けているという。事実とやろうとしていることにどうも一貫性がないんですよね。効果がないものに子どもの有限な時間を使うなら、他のことやった方がいいのでは?といったようなことを著者は言うわけですが、私もそう思います。

私のような天邪鬼さんというよりは、道徳は必要と社会正義に燃える保守的に意識高い系の皆様にぜひ一度読んで、ご自身のバカの壁を崩していただきたい一冊です。(こんなこと言われて読む人は多分いませんね。)

 
 

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