投稿者「uterium」のアーカイブ

『遙か凍土のカナン 4 未だ見ぬ楽土』 著:芝村裕吏,挿画:しずまよしのり

前巻までで寄り道は終わり、本巻から本来の目的である建国事業が始まります。
中央アジアを越え、クロパトキン将軍がいるプスコフにたどり着いた良造一行。そこから妻(←ここ重要)オレーナの養父~のいるサンクトペテルブルグにて「挨拶」を済ませた一行は、シベリア鉄道に乗り、国作りのための場所探しに向かいます。そこで出会うのは、国作りのパートナーとなる新たな「男」と出会い、ついに建国事業が始まるか?というところで本巻は終わります。上にここ重要、と書いたように良造とオレーナは結婚しています。以前のようにオレーナの求愛を躱し、いなすのではなく、距離が着実に縮まっているのがよく分かります。良造一行のメンバーであるコサックのパウローとユダヤ人のグレンが辟易しているように、口から佐藤でも吐きそうなイチャイチャは引き続き本作の見所の1つでしょう。

作者の言及の通り、「馬」の物語だそうですが、本作ではそれを象徴する出来事が起こります。このことは本巻の表紙を見れば一目瞭然。良造とオレーナの2人が馬(富士号)ではなくオートバイに乗っています。しかもハーレーダビッドソン、1900年代初頭にサンクトペテルブルグで買えるもんなんでしょうかね?本書がフィクションたるゆえん?まぁとにかく、このオートバイとの出会いに至る過程は何とも言えません。ええ。

前巻に対して、旅をしたくなると感想を書きましたが、本作の魅力は作品の内容もさることながら、入念な資料収集に裏付けられた現実への足つきでしょう。歴史の本を読んでみたくなるような、現地に行ってみたくなるような、いろいろな、恐らくは史実のディテールに満ちあふれています。本巻では、上でも言及していますが、やはりオートバイと馬の関係。オートバイを鉄馬と呼ぶことがありますが、自転車とオートバイ、というか二輪車という機械の母は、要するに馬なのだなということがよく分かります、ペダルは鐙で、ハンドルは手綱、鞍はその名の通りサドル。乗馬という風習があったからこそ、人間は二輪車という機械を思いついたのではないかと思わされます。リスクが周知されても乗りたがる人がいるのは、ある意味人間の本能なのかもしれません。あとは、良造、というか日本人の宗教観、倫理観というものが、諸外国、特に一神教の国からするといかに異常であるのかという異文化交流の側面も、前巻に引き続いて面白いなと思った点です。

ということで、本格的な建国編は次巻以降に持ち越し、いろいろな人種、宗教の人が寄り集まって、シベリアにどんな「カナン」が築かれるのか?そして、20世紀前半は戦争の時代ということで、良造とオレーナたちの運命やいかに、ということで続きます。さて、次はいつ読めるだろうか?

 

 

『潮騒』 著:三島由紀夫

非常に有名な三島由紀夫大先生の青春小説。伊勢湾に浮かぶ島、歌島を舞台に、漁師の青年新治と出戻ってきた美しい少女初江が恋をする。様々な障害が二人の恋路を妨げるが、なんだかんだいって結ばれる…。

プロットだけ見ると何というかよくある話のような、というか物語に描かれる恋愛というのは概ねそんな感じのような気がします。とはいえ、非常に優雅な?文体というか、自然や、特に初江の美しさを語る文章には読み継がれるだけのものを感じますし、新鮮な素材を上手く調理した和食のような味わいです。小説というのは、中に描かれた世界に没入し、現実から離れた作品世界を楽しむものであると同時に、表現や文体の妙を楽しむものでもあるのだなぁと思わされます。こういった文章自体を楽しむやり方は、現代の小説(とはいえいわゆる「オタク向け」のエンタテインメント作品に偏っていますが)ではあまりできないなと思いますね。どういう理由なのか?

作品の美しさ、面白さとは微妙に感じる点が1つ。少なくとも新治は18歳、初江の年齢はよく分かりませんが、お互いに裸で抱き合う場面はあってもつきあいはプラトニックだし、いかにも昭和的な純潔信仰というかなんというか、これも三島先生の美意識なんでしょうか?PTAの皆さんが泣いて喜びそうな作品世界で涙が出てきます、非常にもったいないですが、素直に好きと言えない気分です。作品の完成度の高さ、美しさもさることながら、教科書に採用される理由はこの辺にもあるのでしょうか?最後に三島先生すごいなぁと思った点が一つだけ、体つきを見ただけで、処女っぽいってのが分かるんだそうです、文豪ってすごい。

『楽園追放- Expelled From Paradise-』 監督:水島精二,脚本:虚淵玄

ディズニーは早くから3Dアニメに舵を切るなか、日本は未だに手描きアニメにこだわっており、日本のアニメというものはどうもガラパゴス化しているようです。近頃は『蒼き鋼のアルペジオ』や『シドニアの騎士』など、3Dキャラクターに演技をさせる3Dアニメが作られてきている中で本作『楽園追放- Expelled From Paradise-』は日本流の3Dアニメの実験作だそうです。

災害で環境破壊が進んだ未来の地球。全人類の98パーセントが地上と肉体を捨て、精神だけの存在となって軌道上の宇宙ステーション「ディーバ」で暮らす時代。ディーバは地上の謎のハッカー「フロンティアセッター」から不正アクセスを受ける。その調査を行っていた監察官(当然最初は精神だけの存在)「アンジェラ・バルザック」は、自らの遺伝子情報から作成した肉体に精神をロードし、搭乗型戦闘ロボット「アーハン」を駆り地上に降り立つ。現地の協力者「ディンゴ」と共に事件の核心に迫るアンジェラ、果たしてフロンティアセッターの正体と目的は?

「ガールズ&パンツァー」のグラフィニカ、プリキュア(のED映像)の東映アニメーション、『ガンダムOO」の水島精二、そして『まどか☆マギカ』の虚淵玄と、どうやって集めてきたんだという豪華スタッフで制作されている本作。そのほかにも監修に板野一郎を据え、大気圏内外を問わず高速のロボットアクションが楽しめます。主人公アンジェラの演技にも魂が入っており、まさにロボットと女の子は男の子向けエンタテインメントにおけるご飯と味噌汁というお約束を地で行く娯楽作品です。結局日本のアニメというものはそこに尽きるのかと考え出すと多少モニョモニョするところがありますが、割り切って楽しむのが吉でしょう。

本作の見所はやはり主人公のアンジェラ。ロリィ(作中ママ)巨乳?に内臓が入っているのか疑問に思えてくる腰のくびれ、キュッと引き締まった尻をハイレグTバックのレオタード風衣装に包み、モデルもかくやというハイヒールを履いてそこらを歩き回る様はセックスシンボル…というかもはや痴女です。あ、要するにセックスシンボルって人気のあるスタイリッシュ痴女のことなんだ。そしてアクションのたびに胸と尻が震えて揺れます。はっきりいってやり過ぎの感があります。声は釘宮理恵さん。理知的で勝ち気、戦闘時には闘争心をむき出しにする彼女を、あの声質でドスをきかせ演じるのはさすがです。うまいキャスティングだと思います。ディンゴを演じるは三木眞一郎さん。伊達男っぷりにハマっています。ファンの間では有名だそうですが、歌もうまい。

本作のタイトルにもある「楽園」ディーバ、そして三名の主要登場人物アンジェラ、ディンゴ、フロンティアセッターの立ち位置から浮き上がってくる「人間」というテーマ。私には本作は、伊藤計劃の『ハーモニー』に対するアンサーの一つに思えてきます。本作の目的はこれらのテーマを突き詰めることでは恐らくないわけですが、現代の価値観で事の善し悪しを論ずるでなく、ただ描くだけの本作は、ある意味王道のSFに近いのかなとも思います(別に私自身は古今東西のSF作品を網羅的に読んだわけではありませんが…)。

アニメとしてどうなのかというと、いわゆるセルアニメに寄せて作っていった作品なのは明らかですが、普段セルアニメを見慣れている身からしても割と違和感なく楽しめます。フレーム毎に見てみないと分かりませんが、セルアニメ特有の大きく絵を崩したり、動画の中抜きをしたりといったアニメの嘘を積極的に使った技法というのは、見られなかったような気がします。メカアクションなどは『エヴァ新劇』とか『コードギアス劇場版』などですでにかなりのクオリティの物が出ていますし、本作もそれに劣る物ではないと感じました。

基本的には娯楽作品であり、深く考えずに見るのが吉。登場人物の今後や、世界の行く末など、いろいろ想像を膨らませる余地もあります。『アナと雪の女王』とは別アプローチによる3Dアニメーションの可能性を体感するための作品で、日本のアニメの主だったところを見てきている人には割と抵抗感なく楽しめるのではないかと思います。解像度のいい大画面で、音響も凝った環境で観るとより楽しめるかと思います。

2014年11月の読書記録

2014年11月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:2784ページ
ナイス数:17ナイス

潮騒 (新潮文庫)潮騒 (新潮文庫)感想
天下の大作家の代表作にこういうのも失礼だが、題材自体は現代のフィクションにはありふれた物のように思える。ただ読みやすく、それでいて気品を感じさせる文章には読み継がれる理由を感じずにはおれない。自然の荒々しさと恵み、初江の肉体のみずみずしさを語る文章には特別な気合いを感じる。
読了日:11月20日 著者:三島由紀夫
小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ感想
科学技術と特に新自由主義的なグローバル経済の組み合わせは人間の身の丈に合っている物ではないので、身の丈に合った物やサービスの融通をしましょとか、マクロなものをどうにかしようとするよりも目に届くミクロな範囲を当事者として目配せして面倒を見ることの全般を「小商い」と称しているといったところか。分かる部分もあるが、全面的に納得、賛成しがたい印象。
読了日:11月14日 著者:平川克美
七つの大罪(2) (講談社コミックス)七つの大罪(2) (講談社コミックス)
読了日:11月9日 著者:鈴木央
七つの大罪(11) (講談社コミックス)七つの大罪(11) (講談社コミックス)
読了日:11月9日 著者:鈴木央
七つの大罪(10) (講談社コミックス)七つの大罪(10) (講談社コミックス)
読了日:11月9日 著者:鈴木央
七つの大罪(9) (講談社コミックス)七つの大罪(9) (講談社コミックス)
読了日:11月9日 著者:鈴木央
七つの大罪(8) (講談社コミックス)七つの大罪(8) (講談社コミックス)
読了日:11月9日 著者:鈴木央
七つの大罪(7) (講談社コミックス)七つの大罪(7) (講談社コミックス)
読了日:11月9日 著者:鈴木央
七つの大罪(6) (講談社コミックス)七つの大罪(6) (講談社コミックス)
読了日:11月9日 著者:鈴木央
七つの大罪(5) (少年マガジンコミックス)七つの大罪(5) (少年マガジンコミックス)
読了日:11月9日 著者:鈴木央
七つの大罪(4) (少年マガジンコミックス)七つの大罪(4) (少年マガジンコミックス)
読了日:11月9日 著者:鈴木央
七つの大罪(3) (講談社コミックス)七つの大罪(3) (講談社コミックス)
読了日:11月9日 著者:鈴木央
七つの大罪(1) (講談社コミックス)七つの大罪(1) (講談社コミックス)
読了日:11月9日 著者:鈴木央
あさひなぐ 13 (ビッグコミックス)あさひなぐ 13 (ビッグコミックス)
読了日:11月3日 著者:こざき亜衣

読書メーター

『フューリー』 監督:デヴィッド・エアー

動態保存されているティーガー戦車の実物が撮影に使われたらしいということで見に行きましたが、期待以上に面白かった作品。というか、途中からティーガーがどうでもよくなりました。確かに格好良かったし、本作では適役だったので、恐ろしくて仕方がありませんでしたが…。

私自身、戦争映画を見に行くのは初めてで、テレビでプライベートライアンをちょっと見たような、見てないようなという感じ。

では作品の内容に移ります。

時は第二次世界大戦末期、ノルマンディー上陸作戦後、連合軍は総力戦で防備を固めるナチスドイツを追い詰め、一進一退の攻防を繰り広げる、その戦場の一部を切り取った作品です。フューリー号と名付けられたM4シャーマン戦車は、北アフリカ戦線から生き残ってきた歴戦の戦車兵に操縦され、泥と敵味方の血にまみれ、銃弾や砲弾を浴びながら戦いを続けます。味方の犠牲を出しながらも生き残り、下された命令に従って新たな戦場に赴くフューリー号はいったいどうなってしまうのでしょうか?

話の始まりは戦いの中で副操縦士を失ったフューリー号の元に、新兵のノーマンが配属されてくるところから話は始まります。最初は殺人にためらいを感じ、死体を見ては吐く、いわば平常時の常識を持っていたノーマンも、古参のフューリー号乗員との軋轢や味方兵士の死を経験しながら兵士として戦場の常識に慣れていきます。そして最初はノーマンを扱いかねていた他の乗員たちも彼を理解し、次第に1つのチーム、家族のような物としてまとまっていきます。その過程にはブラッドピット演じる車長の人柄があってか、ノーマンが一方的に戦場の論理に従うのではなく、古参兵とノーマンで、新たなフューリーチームの形が作られていくような印象を受けました。

戦争映画初めての私は、まさにこの新兵のノーマンのごとく、戦争という異常状態に慣れていきます。戦車の頼もしさ、小火器では抜けない装甲、人を一撃でミンチにできる大口径機関銃や戦車砲の頼もしさ、戦争というか戦場という物を理解して、そこに慣れていく新兵の気持ちのいくらかは、私が初めて見た戦争映画に慣れていくプロセスに重なります。途中で、この画面に映っているドイツ兵の死体は、本当にもう動かないだろうか?もしかしてピンを抜いた手榴弾を持ってはいないだろうかなど、本当に兵士になったような気分で、食い入るように画面を見つめていました。

非常に殺伐としており、一抹の癒やしのようなシーンがあったと思えば急転直下で物のように人が死んでいくので、いかにもエンターテインメントという感じではありませんが、画面から非常なエネルギーを感じる作品です。画面の中なら血も死体も平気という人は、見に行って損のない作品だと思います。

この調子で戦争映画をはしごしてみようかしら?『スターリングラード』とか?

やっぱりターンAガンダムが面白い

ガンダムはどの作品が一番好きか、というのはアニメ好きの間では定番の話題ですが、個人的にはターンAガンダムが一番好きなのです。他にも、小学生の時に現役で見てたV, G, W, Xも思い入れはあるんですけどね。

長編作品だし、学生を長いことやっていてお金もないしということで、DVDなどにお金を落としてこなかったのですが、ちょうどいいタイミングでBlu-rayディスクボックスが発売されたので、買ってしまいました。結果的には大正解。やっぱり好きだなぁとニヤニヤにやけながら、一話一話大切に見ているのです。

あらためて見返してみると、作品としての尺が長くて発生イベントが多いせいか、キャラクターがご飯を食べたり、人が死んだら悲しんだり、人格があって、立場や役割があって、それぞれ生きているのが分かる気がするのですね。いろいろな体験を経て主人公たちが少しずつ成長というか、変化していくのがとても面白い。単に可愛いとか、萌えるとか、そういった意味でなくキャラクターを魅力的に感じるのです。特にディアナ様は魅力的。女王として威厳のある非人間的な姿を見せていた女性が、その役目から解放されたとたんに少女のように無邪気にはしゃいだりする様は、恋人の意外な一面を発見したような気になります。ディアナ様とキエルお嬢さんを演じている高橋理恵子さんは、すげぇなぁなどと思いつつ眺めています。実質的には、4役くらいやっていると言ってもおかしくはないわけで(ディアナ様やキエルお嬢さんが役割で本来の人格を抑制していると考えれば、確かに2役なんですが)。

自然が破壊された地球、そして宇宙を主要な舞台とする地球自然が回復した地球、特に大規模農業などで大きく破壊される前のアメリカの姿、多分昔の絵画なんかを参照したんじゃないかな?という背景も魅力的。食べ物や水がないと生きていけない、そういったものを作る人をないがしろにしてはいけないという演出やセリフは説教くさいですが、尺の都合上そういった描写が省略されがちな昨今のアニメ作品から考えると大変面白いです。働き出すと特に働いて稼ぐことを馬鹿にしてはいかんなぁと分かるわけで…。

最後にロボットについて、あの主人公機の造形はガンダムじゃないだろう!?という意見はごもっともだと思うのですが、あれはあれで動くと大変かっこいいロボットなので好きなのです。脚の裏についているバーニア、妙に細いビームサーベル、最高です。

ということで本作を好きだ!ということしか語っていないのですが、かめばかむほど味が出る、世の中を知れば知るほど楽しめる作品ですので、是非とも円盤を購入しなくてもレンタルでもいいので、未見の方は是非ご覧になってください。大丈夫、丸一日くらいあれば全話見られるから!

 

2014年10月の読書記録

2014年10月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:1632ページ
ナイス数:31ナイス

きっと可愛い女の子だから (アクションコミックス(月刊アクション))きっと可愛い女の子だから (アクションコミックス(月刊アクション))
読了日:10月26日 著者:柳本光晴
つるつるとザラザラの間(3) (アフタヌーンKC)つるつるとザラザラの間(3) (アフタヌーンKC)感想
好きになった女の子のパーツが異様に可愛く見えるというのはよく分かる。作中のように耳たぶとか、爪の形とかな。
読了日:10月26日 著者:月子
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)感想
ハーモニーを読んだときにも思ったけど、伊藤計劃の描く世界はテクノロジーが進んだ世界で、命や心をより精密に計測できるようになっている。でも、そんな中でそれに違和感を持つのが主人公で、彼らの心の動きは、程度の差はあれ今を生きる我々に共感できるレベルに絶妙に調整されている。 主人公は作品の中の登場人物であると同時に、読者が憑依するアバターであり、もしかしたら作者自身が思索の末にたどり着いた物語世界のを観察していた、センサーだったのかもしれないと思ったりした。
読了日:10月22日 著者:伊藤計劃
四月は君の嘘(10) (講談社コミックス月刊マガジン)四月は君の嘘(10) (講談社コミックス月刊マガジン)
読了日:10月19日 著者:新川直司
女騎士さん、ジャスコ行こうよ (MF文庫J)女騎士さん、ジャスコ行こうよ (MF文庫J)感想
田舎あるあるが分かるような分からないような。平家村の設定が矛盾してるような気がしていて、閉鎖的な田舎の割に宇宙人やクトゥルー的な異形がいてもそれをそれとして受け入れているのが不思議。割とよそ者にとって居心地のいい場所なんじゃないだろうか?中途半端によそ者だと排斥されるのかな?
読了日:10月6日 著者:伊藤ヒロ
シャーリー 2巻 (ビームコミックス)シャーリー 2巻 (ビームコミックス)
読了日:10月5日 著者:森薫
シャーリー (Beam comix)シャーリー (Beam comix)
読了日:10月5日 著者:森薫

読書メーター

『ピクシー・ワークス』著:南井大介 挿画:バーニア600

Togetterで#少年向けレーベルから出てて女子が主人公のラノベで好きなやつ まとめというものがありまして、そこで取り上げられていてうれしかったので筆を取った次第です。

ということで、2009年初版電撃文庫より発行、この記事が書かれた時点からすると5年前になりますか、のライトノベル『ピクシー・ワークス』です。女子学生、特に女子中高生が部活でわいわいやるという作品ですが、その部活の内容が「壊れた戦闘機を直して飛ばして経済的テロをやる」という物騒きわまりない作品であります。まぁ、鳥人間コンテストの延長みたいなもんです、機関砲やミサイルを撃つわけでもないし。

個人的にはライトノベルには超科学部ものみたいなものがあると思っているのですが、その作品にはエンジニアキャラというか科学者キャラというか、異様に科学技術に詳しいキャラクターというのが出てきます。本作では、主要5人(男1、女4)のうち実に3人がエンジニアキャラという変わったバランスになっております。性格もなかなか癖があり、かつ戦闘機の整備ができる高校生って何だよ、という感じですが、突っ込むのは野暮というものです。これはライトノベルなのですから…。

作中で言及されていますが、神林長平の名作『戦闘妖精雪風』をリスペクトしており、戦闘機には自我を持った人工知能が搭載されています。その人工知能「ヴァルトローテ」とのやりとりも本作の魅力の1つでしょう。前半はヴァルトローテとやりとりしつつ戦闘機の修理、後半は手に汗握る空戦描写(ひたすら逃げるだけ)。メカ、女の子、戦い、男の子向けエンタテインメントの王道です。

第三次世界大戦的な戦争の後という作品世界の広げ方もさることながら、作中にちりばめられたガジェットも個人的には魅力的で、エタノール燃料で走るビッグスクーター(多分モチーフはAKIRAの金田のバイク)、主人公が腕に巻いているIWCスピットファイヤMk-XVI、有機ELのディスプレイなど、男心をくすぐります。

最近だとRAIL WARSの挿画で有名なバーニア600さんが挿絵を飾り、メカと夏のまぶしい日差しが彩る挿絵は本作の雰囲気を高め、やっていることが有り体に言ってテロ行為であるという点を隠蔽し、さわやかな夏の思い出感を演出しています。大作、人気作に比べてパンチは弱めですが、メカ好きなら楽しめること請け合い。いかがでしょうか?1巻で終わるし、新刊を手に入れることは多分無理ですけど、中古で、そこそこ流通量あるみたいですし。

『あさひなぐ(13)』著:こざき亜衣

芸術にしろ、スポーツにしろ、武道にしろ、あるいは学問もそうか、おおよそ芸事というものは理不尽なものです。体つき、感覚の鋭さ、様々な生まれ持った違いが明確になります。それで身を立てられる人などほんの一握り、アマチュアの中で実力を頭一つ抜けさせることですら、人によっては困難だったりします。

現代の日本においてこういった芸事に最初に取り組む機会は、学校における部活動で与えられることが多いのではないでしょうか?部活動は国民的な共通体験であるからか、フィクションにおいても人間ドラマの題材として好んで取り上げられるテーマの1つです。

前書きが長くなりましたが、そのような芸事を取り扱った近年の作品として、個人的に面白いなと思っているのが、本作「あさひなぐ」です。

題材は長刀(なぎなた)。主人公のあさひは、高校から長刀部に入部し、他の部員と衝突したり、勝てないことに悩んだりしながら、少しずつ成長していきます。まぁ競技を置換すればいくらでもある作品なのでしょうが、上記の芸事にまつわる理不尽がよく描かれ、中高生時代の部活動あるあるをキッチリ押さえた良作だと思います。

本13巻では、全巻から続いてきた、「長刀を続けるのか、あるいはやめるのか」というトラブルが解決を見ます。情熱が続かない、頑張っても頑張っても結果が出ない、他人と比べて心が折れる、でもあきらめきれない、それでも好き。登場キャラクターの悩みは実在の人物のようにリアルです、というか個人的にはそのあたりの悩みは非常に共感できます。

後半では2年生に進学した主人公たちに後輩が入ってきます。後輩とどうやってつきあったらいいのか分からなかったり、後輩の方がキャリアが長かったり、いまいちこいつ大丈夫か?というやつが入ってきたり、これも部活動あるあるをキッチリ押さえてきます。面白いです。

昔芸事に取り組んだことのある人、現在進行形で取り組んでいる人に共感できる要素がたくさん詰まった作品です。いかがでしょうか?

革スニーカーの清掃

スニーカーは基本的には修理不能の消耗品ではありますが、そうは言っても手入れをして履きましょう。ということで、今日は革のスニーカーを清掃してみたいと思います。

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清掃するのはコレ。手持ちのNew Balance M996です。もう5年以上履いてますね。一度底を張り替えました(New Balanceの高い方のスニーカーは底の張り替えができるのです。この件についてはまた書きます。)ちなみにコレ、清掃前に撮り忘れたので、清掃後の写真です。

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しばらく掃除していなかったので、ちょっと革がカラッとしています。

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使うのはコレ。コロンブスのスニーカーケアシャンプーです。保革成分も入っているので、きれいにもなるし、甲革も長持ちさせられる一石二鳥の品です。靴紐を抜いて。

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ヘアムースみたいに泡が出るので、ふたについているプラスティックブラシで塗り広げて。

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少し放置して保革成分を革に吸わせたら、ウエス(ぼろぼろになったTシャツなど)で汚れを拭き取ります。

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終了。写真ではわかりにくいですが、心なしか革がしっとりしたような気がします。触ってみると少し湿っていていかにも調子が良さそうな感じ。履いて外に出ると、ちょっと艶が出ているのが分かります。何となく気分がいいです。

革のスニーカーは、1〜2ヶ月に1回くらいコレをやっておくと、きれいに履けます。保革成分もあるので、多分スニーカー自体も長持ちするはず。底の張り替えが効く革靴に比べると寿命は短いですが、そうは言ってもスニーカーだって手入れをすれば長くきれいに履けます。短時間でできますので、革のスニーカーをお持ちなら是非やってみてください。

まとめます。

革製のスニーカー清掃

  • 所要時間:5〜10分
  • 必要物品:スニーカーシャンプー、ウエス
  • 必要額:1000円程度、ウエス代別