『ピクシー・ワークス』著:南井大介 挿画:バーニア600

Togetterで#少年向けレーベルから出てて女子が主人公のラノベで好きなやつ まとめというものがありまして、そこで取り上げられていてうれしかったので筆を取った次第です。

ということで、2009年初版電撃文庫より発行、この記事が書かれた時点からすると5年前になりますか、のライトノベル『ピクシー・ワークス』です。女子学生、特に女子中高生が部活でわいわいやるという作品ですが、その部活の内容が「壊れた戦闘機を直して飛ばして経済的テロをやる」という物騒きわまりない作品であります。まぁ、鳥人間コンテストの延長みたいなもんです、機関砲やミサイルを撃つわけでもないし。

個人的にはライトノベルには超科学部ものみたいなものがあると思っているのですが、その作品にはエンジニアキャラというか科学者キャラというか、異様に科学技術に詳しいキャラクターというのが出てきます。本作では、主要5人(男1、女4)のうち実に3人がエンジニアキャラという変わったバランスになっております。性格もなかなか癖があり、かつ戦闘機の整備ができる高校生って何だよ、という感じですが、突っ込むのは野暮というものです。これはライトノベルなのですから…。

作中で言及されていますが、神林長平の名作『戦闘妖精雪風』をリスペクトしており、戦闘機には自我を持った人工知能が搭載されています。その人工知能「ヴァルトローテ」とのやりとりも本作の魅力の1つでしょう。前半はヴァルトローテとやりとりしつつ戦闘機の修理、後半は手に汗握る空戦描写(ひたすら逃げるだけ)。メカ、女の子、戦い、男の子向けエンタテインメントの王道です。

第三次世界大戦的な戦争の後という作品世界の広げ方もさることながら、作中にちりばめられたガジェットも個人的には魅力的で、エタノール燃料で走るビッグスクーター(多分モチーフはAKIRAの金田のバイク)、主人公が腕に巻いているIWCスピットファイヤMk-XVI、有機ELのディスプレイなど、男心をくすぐります。

最近だとRAIL WARSの挿画で有名なバーニア600さんが挿絵を飾り、メカと夏のまぶしい日差しが彩る挿絵は本作の雰囲気を高め、やっていることが有り体に言ってテロ行為であるという点を隠蔽し、さわやかな夏の思い出感を演出しています。大作、人気作に比べてパンチは弱めですが、メカ好きなら楽しめること請け合い。いかがでしょうか?1巻で終わるし、新刊を手に入れることは多分無理ですけど、中古で、そこそこ流通量あるみたいですし。

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