なんとなく日本の税制のに似た仕組みで諸々が運営されている世界で、魔族の魔王と人間の勇者、そして主人公の「ゼイリシ」クゥが手を携え、次々と巻き起こる税金にまつわるトラブルに立ち向かう話。全六巻なので場所も取らず、お財布にも優しい。
おそらく橙乃ままれの「まおゆう」あたりを始祖とする、「勇者による魔王討伐のその後」に「ラスボスを倒しても解決しない、本当の世界の問題に立ち向かう」作品の1つで、物語自体読んでいて非常に面白かった。個人的すごくハマるジャンルの作品なので……。
本シリーズはファンタジー作品として面白いだけでなく、世界設定や物語のネタ元になっている日本の税制についての下調べがしっかり(少なくとも自分が理解している範囲では)していてちょっと頭がよくなった気になり、何ならそこから掘り下げることで税に対するリテラシーが向上して現実の生活にも役立つ良書である。本書を読んでいると、給与明細を見て毎回ため息をつく税金(実際のところ高いのは所得税でも住民税でもなく、厚生年金なら会社負担分含めて記載分の2倍払っている社会保険料なのだが)も、まぁ捨てたものではないのだなと思えてくること請け合いである。あるいは、本書の中でチクチク指摘されている日本の「失政」に対して、ムカッ腹が立つ人もいるかもしれない。ちょっとしたボタンの掛け違いで、ここまでひどいことにはなっていなかったんじゃないかと……。
剣と魔法の税金対策