会計」タグアーカイブ

『剣と魔法の税金対策 全6巻』著:SOW イラスト:三弥カズトモ

なんとなく日本の税制のに似た仕組みで諸々が運営されている世界で、魔族の魔王と人間の勇者、そして主人公の「ゼイリシ」クゥが手を携え、次々と巻き起こる税金にまつわるトラブルに立ち向かう話。全六巻なので場所も取らず、お財布にも優しい。

おそらく橙乃ままれの「まおゆう」あたりを始祖とする、「勇者による魔王討伐のその後」に「ラスボスを倒しても解決しない、本当の世界の問題に立ち向かう」作品の1つで、物語自体読んでいて非常に面白かった。個人的すごくハマるジャンルの作品なので……。

本シリーズはファンタジー作品として面白いだけでなく、世界設定や物語のネタ元になっている日本の税制についての下調べがしっかり(少なくとも自分が理解している範囲では)していてちょっと頭がよくなった気になり、何ならそこから掘り下げることで税に対するリテラシーが向上して現実の生活にも役立つ良書である。本書を読んでいると、給与明細を見て毎回ため息をつく税金(実際のところ高いのは所得税でも住民税でもなく、厚生年金なら会社負担分含めて記載分の2倍払っている社会保険料なのだが)も、まぁ捨てたものではないのだなと思えてくること請け合いである。あるいは、本書の中でチクチク指摘されている日本の「失政」に対して、ムカッ腹が立つ人もいるかもしれない。ちょっとしたボタンの掛け違いで、ここまでひどいことにはなっていなかったんじゃないかと……。

剣と魔法の税金対策

『会計が動かす世界の歴史 なぜ「文字」より先に「簿記」が生まれたのか』著:Rootport

「会計」、「簿記(特に複式簿記)」という切り口で世界史を縦断する一冊。本書は人間の「損得勘定」「貸し借り」という根本的な行動原理を記録する仕組みとして、「簿記」というものに着目します。複式簿記を使った会計の仕組みが発展する歴史的事件をつまみながら、暗号通貨や人工知能といった現代〜近い将来までをこの切り口で袈裟斬りです。

複式簿記は15世紀のルネサンス期イタリアで現代的な形が確定して以来、何世紀も同じ様式のものが使われ続けているそうで、そもそも文字が発明される以前のメソポタミア文明において貸借を記録するための簿記のような仕組み(テーブルゲームに使われるようなトークンが使われていたらしい)からすると千年を優に超える期間、同様の仕組みが人類社会に遍在しつつけているようです。作者はこの理由を、人類が集団生活を行う上で「貸し借り」を覚えておくことが極めて重要であり、簿記はそれを記録する仕組みとして本質的に人間が必要とするものだからではないか?としています。人間の生き物としての本性に、人類社会に共通するなにがしかの存在理由を求めるのはジョゼフ・キャンベルの『千の顔を持つ英雄』のような論の広げ方ですね。個人的にこういう世界に対する視野が開ける感じの本は大好物なので、最初から最後まで徹頭徹尾読んでて面白くて仕方がありませんでした。

資料を掘り起こし、仮説を立てて戦わせ、歴史というジグソーパズルのピースを作るというよりは、先人の研究成果をある切り口で組み合わせ、1枚の見甲斐のある絵を組み立てるタイプの歴史の本。ダイヤモンド氏は歴史のピース作りもやっていたのかもしれませんが、タイプとしてはジャレド・ダイヤモンドの『銃・病原菌・鉄』と似たような本に感じました。

複式簿記の勉強のモチベーションを喚起する意味でも、歴史の一大スペクタクルとしても超おすすめの一冊です。複式簿記の本は一度読んであまりに問題集っぽすぎてダメだったんですが、「会計」の本を読めば良いのだと言うことがよく分かりました(そして本を買いました。)