投稿者「uterium」のアーカイブ

『富士山さんは思春期 8』著:オジロマコト

以前感想を書いたことがある作品です。名前のごとく大変背の高い女の子富士山さんと、幼なじみの比較的背が低めの上場くんがつきあい始めて云々という話で、少なくとも90年代後半にその年代だった私としては、「ああ懐かしい、あんな感じだったなぁ」という作品全体の感想。まぁ、当時自分には彼女なんていなかったんですが、「おつきあい」を取り巻く雰囲気がそんな感じだったなぁと。

やろうと思えば受験の後の高校時代だって続けられる作品ですので、いつまで続くのだろうなぁという感じだったのですが、この度8巻にて完結。8巻にて一大イベントが描かれるわけですけど、そこもまた、上手く落としたなぁという感じ。うんそれって重要だよね、と。至って健全ですから、ご安心?ください。

今回もう一件カップルが成立?しますが、その片割れである野球部で格好良く、女子に人気のある梅木くんが「付き合うってなにしたらいいんだっけ?」と言っているのに対して、上場くんは彼女がいて、付き合うってなにしたらいいのか知っている。上場くん、イマイチ女子に人気はないが、なかなか男気のある良い彼氏だっていうのを読者は延々イチャコラを見ているので知っている。……好対照で良いですね。不特定多数に人気があるかどうかというのは、特定の人の恋人として好適な人物なのかは別問題なのだなぁというのがよく分かります。

付き合っているのを同級生に知られるのすら恥ずかしかった、懐かしのあの頃を思い出す。思春期マンガの白眉です。
 

『マージナル・オペレーション 空白の一年 下』著:芝村裕吏 挿画:しずまよしのり

マージナル・オペレーション本編では語られなかった空白の一年。タジキスタンのジブリールの村から撤退したアラタたち一行が、日本に帰国するまでに何があったのかを語った外伝です。前巻では撤退からシベリア共和国の誘いに従ってイランに行くことを決意するまでが書かれましたが、今回はまさにイランに行くまでの道中劇という感じです。

一行は様々な勢力の力を借りてイランにたどり着くわけですが、そのせいか戦闘指揮の上手さというよりも交渉人としてのアラタの能力の高さが際立っていたなぁという印象か。自由戦士社で鍛えられたとはいえ、本当に日本でニートをやっていたのかと言わんばかり。人間、活躍できるかどうかは能力もあるけど、環境もあるのでしょう。前半衛生状態の悪さからか子どもたちが病気になったりなんだりしますが、この辺りの経験から、3巻以降で大規模な軍隊を運営する際のノウハウを身につけたりするのかなと思います。外伝で、基地の衛生状態を気にする弱音をホリーさんに吐いたりしてましたしね。

同時にこの「空白の一年」は『遙か凍土のカナン(はるカナ)』と本シリーズのクロスポイントでもあるわけですが、前巻から明らかではありますが、過去の因縁をいかに払拭するのかが見所かと思えば、割とあっさりカタがついたりします。ジブリールはまさにアラタの守護天使という感じ。

以下はネタバレです。

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SIMフリースマートフォン/格安SIM に対する個人的な雑感。

個人的な話ですが、私は2014年より格安SIMを使って携帯電話を運用しています。既にかなりたくさんの格安SIMが出てきており、色々とノウハウが蓄積、公開されているはずなので、遅きに失している間はありますが、特にどこかからスポンサードされているわけではない一消費者の見解を書きたいと思います。

そもそも

  • 格安SIMはIIJmioの回線をSIMフリーのスマートフォンHuawei Ascend G6で運用しています。
  • 以前はソフトバンクの3G回線でiPhone 4を運用していました。

導入時はどうだった?

  • 2年前の話なので記憶が曖昧ですが、Softbankの電話サービスでMNPを申し込んで番号をもらい、IIJ mioのWebサイトからその番号を使ってMNPを申し込んで、ビックカメラで端末を買いました。送られてきたSIMを端末に普通に挿入して、SIMに付属していた説明書を読みながらちょっと設定したら使い始められました。
  • MNPの際、Softbankの電話口のお姉さんから、回線の速度が微妙になる場合もありますよ?と言われましたが、下記のように3GからLTEへの乗り換えだったので、むしろ回線の満足度は上がりました。

用途は?

  • ほぼSNS(Twitterが主、LINEとFacebook Messangerをちょっと使うくらい)と、PCメールの確認、カレンダー、メモ、電子書籍の閲覧に使っています。
  • 時々出先でテザリングして、PCにメールをダウンロードしたり、くらいには使いますかね。

通信速度は?

  • 3G→LTE で大満足でした。私の使い方では半導体の性能は分かりようもありません。ただ、PCの体感速度の大半をHDDが担っているのと同じように携帯電話の体感速度の大半は回線が担っているのかもしれません。
  • 低速モードは、そもそも通信量がそれほどではないので経験したことがありません。

通信量は?

  • 標準で3GB/月の通信量クーポンが取得でき、余ったら来月に持ち越されます。
  • 上記の用途で毎月1GB以上余ります。全く困っていません。

iPhone -> Androidでどうだった?

  • 細かく使い勝手が異なる部分はありましたが、おおむね困っていません。慣れました。
  • 「戻る」ボタンは便利だなと思います。

不満は?

  • 端末のOSのアップデートがないこと。Android4.3がそのままなので、色々指摘されているセキュリティホールはそのままです。Rootを取れば5.0にアップデートできるという話もありますが、日本語UIがどうなるのかも不明ですし、どうしたものかという感じ。インターフェースが英語なのはいいとして、日本語が書けないのは大きな問題です。
  • キャリアメールが使えないのが困ります。結局メッセージ系SNSで事足りてるんですがね。
  • 一応、キャリアメールの代わりにレンタルサーバーのメールを携帯メールとして使用しているのですが、相手によっては届かなかったりするので不便。結局電話番号でSMSを使ったりします。
  • 標準の日本語入力ソフトがアホすぎて、ATOKパスポートでATOKを入れました。パソコンの方にも使っているので、大体月50円くらい日本語入力に払っていることになるのかな。まぁどうせパソコンにも入れていたので、結局解決できました。

料金は?

  • 通話料込みで、大体付き2500円程度に抑えられています。通話というと、家族に電話したり、宅急便の受け取り連絡くらいなのでこれくらい。頻繁に電話をする人は、通話料に何かしらのサポートがあるプランがいいのではないでしょうか?あるいはガラケーで通話用携帯を持つのもいいかも。そうなると大手キャリアのスマホ一回線でもいいかもしれませんね。
  • 乗り換え前は6000円くらい払っていたので、月3500円くらいの差額があるとしてExcelで簡単に損益計算をすると、乗り換え月外の違約金払っても10ヶ月くらいで諸々の費用が取り返せるということが分かったので、そもそも乗り換えました。あとはAndroidを使ってみたいというのもありました。

サポートは?

  • 特に携帯電話を落としたり壊したり、契約変更をしたりというトラブルに遭ってないので、コメントできません。トラブルがあるとサポートがないのは不便なのかもしれません。
  • 端末がSIMとセットで売られていることもあった、対応がうたわれている機種だったので私の場合トラブルフリーでしたが、端末とSIMの相性はよく下調べすべきでしょうね。

結論

  • 携帯電話ですることが限られていて、連絡手段としてテキストメッセージや、ちょっとした写真のやりとりをするくらい。
  • PCの初期設定などはだいたいできる。分からないことは検索して自己解決可能。
  • こんな人は最小構成の格安SIMにすれば携帯通信料の節約になるので、その分友達や家族とおいしいものを食べに行ったり、日々の食卓に上げる食材をちょっとグレードアップというのでもいいような。
  • 情報機器の扱いに慣れてるけど、そこまで情報機器に思い入れのない人が、有限のお金を他のことに回す手段として、格安SIMはいいのではないかなぁと思ったりします。何も能動的に心がけなくても年に数万円節約できるのは大きいです。というか、いじるの、持つのが自己目的化しない限りは携帯にお金を使うべきではないと、個人的には思います。所詮端末はコモディティで回線はインフラですから。
  • ただし、SIMフリーのスマートフォンはたいていOSのアップデートがないので、重大なセキュリティホールが見つかったりしても、そのままになったりします。職務上重要な情報をやりとりする機器に使うべきではないでしょうし(その場合はそもそももっとお金をかけるべきでしょう、会社が。)、バグがそのままになっている情報機器がインターネットにつながっているのは社会的に困りますから、長く使うつもりなら(端末代を含めて格安SIMがお得になるのは長く使うパターンだと思いますが)端末にはお金をかけて、OSのアップデートが期待できるスマートフォン(AndroidならGoogle監修のNexusシリーズ、あるいはiPhone)を使うのがいいのではないかなぁなどと思います。格安端末に対する割高分は保守費用を払っていると思って。

『武姫の後宮物語』著:超紳士ゴブリン/筧 千里

最近、いわゆる「なろう小説」を読んでいました。

読んでいたのは「武姫の後宮物語」です。名は体を表す、ということで、王制国家の後宮に武姫、要するに戦士のように戦場を駆ける女性が入って、引き起こす騒動を描いた物語です。特徴としては、主人公のヘレナが脳筋、要するに脳が筋肉でできているかのように、考えることが苦手だということです。ですが、黙ってうなずいていればそこそこ知性的に見えるという美点と、そのまっすぐな?人柄(脳筋なので、権謀術数を弄することができないともいえる。)と鍛え上げられた肉体で後宮を掌握していきます。まさに沈黙は筋、じゃなかった沈黙は金です。

ヘレナは28歳、愚弟と呼ばれるお相手の王様ファルマスは18歳と結構年の差があるわけですが、ファルマスが結構ねじ曲がった女性の趣味をしているせいで、ヘレナにゾッコン。余人には分からない魅力を備えた女性を好く男性というと、『君に届け』の風早くん的な感じでしょうか?余裕ぶった振る舞いをヘレナの前で見せるファルマスではありますが、一人で寝る夜にはヘレナを思って身もだえていそうな感じではあります。

残念残念と言われるヘレナではありますが、魅力的なキャラクターです。まぁなんというか、きっと何とかしてしまうのだろうという安心感があります。現在も連載というか、更新が続いておりますので、よろしければどうぞ。

『Landreaall (27)』著:おがきちか

半年に一度のお楽しみ。おがきちか先生の大作ファンタジーLandreaallの27巻です。

26巻は「さあ反撃開始だ」という感じでしたが、本巻はDXたちとクエンティン、ユージェニの戦いの決着までが描かれます(シーンが王城に飛んだり、砂漠に飛んだりしますが)。大変長く、数年にわたりこのエピソードをやっていますが、アトルニアの王城にたまった様々な澱を一気に押し流すような、そんな新しい流れの湧き出し口を見ているようです。3巻の火竜との決戦に匹敵するくらいDXもイオンも、そしてディアも満身創痍になるわけですが、伏線の回収と戦いの盛り上がりとで主人公たちもかくやというような読後感。ファン冥利に尽きます。ということで、継続して読んでおられた方で、ここ最近読んでなかったという方は是非お読みください、面白いですよ。ということで。

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包丁の柄を手入れ?してみる

包丁の柄を手入れしてみようと思います。何となく日々の酷使で柄の表面がガサガサしているような気がするので、油脂分を足してみようかと。

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革用の汎用ワックス、ラナパーを使います。良いのか分かりませんが。コレホント便利。みんな買うと良いよ。

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革製品にするように、付属のスポンジで塗り込んでみます。

何となく、しっとりして手に吸い付いてくるような感じ。木製柄は腐ってダメになるという話がありますが、防水性が高くなることで寿命が延びたりしないものか?

『剣客商売』著:池波正太郎

本ブログで池波正太郎というと、『男の作法』をご紹介したことがありましたが、今回は本業の小説について書きたいと思います。

定期的にテレビ時代劇の放送があるような、言わずと知れた人気作品。剣術の流派「無外流」の達人の秋山古兵衛、その息子の大治郎、女性剣客の佐々木三冬に古兵衛の若妻おはる、主にその4人が天下太平の江戸時代中期にご近所トラブルの解決に奔走という感じ。

昔は切った切られたの剣の道を歩いてきた古兵衛翁ですが、60歳になんなんとするに至り「剣より女だ」とばかりに40くらい年の離れたおはるさんを嫁にもらって悠々自適というのが物語の出だしだったんですが、どうも2巻くらいからは退屈になったらしく、何かある度に口を出すわ手を出すわ。

主人公の古兵衛翁は、若い嫁をもらうわ、周囲の人間から先生先生とチヤホヤされるわ、べらぼうに強いわで、なんというか60すぎたおじいちゃん向けの「俺TUEEE」系ライトノベルなんではないかと思わんばかり。とはいえ、60になるまで作品の裏で努力を重ねていたのだろうし、人間運とタイミング、そして努力で、現実にこういう人間にもなれるのかもしれないなぁと思ったりはします。何かと多めにお駄賃弾んで人に頼み事をするので、お客様相談室のオペレーターに居丈高に難癖つけて、過剰なサービスを要求する現代のおじさん(もののたとえです)よりは、他人から頼りにされるに値するだけのことはしてるかなぁと思います。

悪党とはいえ、襲われれば指や腕を斬り飛ばすわ、当て身で気絶させてふん縛って井戸水をぶっかけ、冬の納屋に閉じ込めるわ、現代社会だとやったら捕まるだろうなぁと思うようなことを結構平気でやっていたりするので、そういう時代だったんだろうなぁと思ったりします。逆に言うと現代日本が、いかに暴力や死というものが遠ざけられているかということなのかもしれませんが。

飯の描写が秀逸で、できるものなら自分で作って食べてみたくなるものばかり(鴨飯とか)。当時の江戸の風俗描写もまるで異世界のよう。我々が生きている世界も、過去に100年も遡れば、人間が想像した架空の世界並に不思議の国なのかもしれません。

ライトノベルや「なろう」小説も一通り読んで、別のものに挑戦したいという御仁にも、純粋に時代小説に興味がある御仁にも安心してオススメできるド定番です。

 
 

『補給戦―何が勝敗を決定するのか』 著:マーチン・ファン・クレフェルト、訳:佐藤 佐三郎

軍隊に対する補給あるいは兵站(へいたん)という視点から、近代以降の戦争を詳細に考察した書籍。ある筋では話題になった一作だそう。

取り扱う戦争は18世紀のヨーロッパでの戦争から、ナポレオンの戦争を経て第一次、第二次世界大戦までの陸戦。馬車で陸上輸送を行っていた時代から鉄道を経て自動車時代へ進んでいきます。「鉄道時代になって輸送力が向上したことにより戦争が変わった」みたいなことがざっくり言われたりしますが、現実を見てみると、実はそんなに物事ががらっと変わるわけではない、ということがよく分かりました。新しい技術が問題をすべて解決しているわけではなく、旧時代の技術(鉄道時代なら馬車、自動車時代なら鉄道など)を使ってなんとかやりくりしていたりすることが多かったりするのだなぁと。最後に紹介されるノルマンディー上陸作戦までは、とにかく兵站に苦労をしたんだという話が続くわけですが、最後に紹介されるノルマンディー上陸作戦は対照的に兵站に相当な気を配って実行されたものです。とはいえ歴史を見てみると連合国が楽勝したというわけでもないようで、兵站をきっちり整えれば戦争には必ず勝てる、というものでもないのだと結論づけられます。最初の期待からすると、割と「なんと身もふたもない……」というような印象。とはいえ、大変興味深い本でした。例えば、「18世紀頃の戦争というのは他国の資源で自国の軍隊を食わせるためのものだった」という考え方には「なるほどなぁ」と膝を打ちました。ひょっとすると男性の間引きって要素もあったのかもしれませんねぇ。

個人的には一部Wikipediaなどで戦役についての知識を補いつつ読みました。とはいえ、文章で書かれるだけではなかなか具体的なイメージが沸かず、インフォグラフィクスというか、うまいこと図版を多用してくれると、より理解が進んだろうなと思いました。やはり戦線は地図と照らし合わせてなんぼでしょう。ヨーロッパの地図でも用意してチェスの駒かなんかを使って動かしながら読むといいかもしれんなぁなどと思ったり。

巻末に、防衛省の研究所で戦史研究などをやっておられる石津朋之さんの解説があり、本書の主要な要旨はこれを読めば足りる、と思います。とはいえ本書を読んでから読むと、それがまた実に適切な要約であるということがよく分かります。この解説だけ読んでもいいんでしょうが、本書を手に取るような向きは、そこは本文を頑張るべきではなかろうかと思います。

兵站、という言葉を知った人は是非本書を読んでみることをオススメします、ものの見方が変わるかもしれません。現実に現在戦われている戦争のみならず、例えば国内外の災害時の軍隊や救助隊の活動、フィクションにおける戦争などにおいて、どうやって必要な物資を運んできているのだろうか?といった風な想像力が働くようになるかもしれません。

『食の文化史』著:大塚滋

雨にも負けず 風にも負けず (中略)一日に玄米四合と味噌と少しの野菜を食べ (後略) 宮沢賢治

日本と、海外の食文化の歴史についての概説です。

基本的に和食というものは、「めし=食事」ということからも分かるように塩気でご飯をたくさん食べるものであって、冒頭に引用した宮沢賢治の詩にあるように、「一日に玄米四合と味噌と少しの野菜を食べ」となるわけです。なぜそんな食生活が成立するかというと、米がアミノ酸を豊富に含んでいて、とくに玄米はビタミンBも含んでいて完全食品に近いからだったりするわけです。そもそももっと昔にはお米なんて上流階級しか食べられなくて、雑穀を食べていたりしたようですが。

それ以外にも宗教的なタブーが多い豚肉の話や、牛乳の話、発酵食品やパン、メンなど、古今東西の食文化について縦横無尽に語ります。メチャクチャ面白い。コレ一冊で色々創作の小ネタになりそうです。色々うんちくを傾けるネタとしても大変優秀。

ただ飯を食べるだけでは満足できない。そんな欲張りさんにオススメの一冊。

『海軍めしたき物語』『海軍めしたき総決算』著:高橋孟

戦争体験を語った本はいくつもありますが(出版されていませんが、うちの祖父も書いています)、そのうちの1つ。坂井三郎の『大空のサムライ』のような軍人の花形の血湧き肉躍るような回顧録ではなく、海軍の艦の中でタイトルにもあるように「めしたき」、要するに調理をやっていた方のお話です。

筆者は、太平洋戦争が始まる前に海軍の主計課(いわゆる経理課ですね)を希望して志願したわけですが、当初の希望とは裏腹に最初は烹炊兵として戦艦「霧島」に乗り込み、真珠湾攻撃からミッドウェー海戦までを乗組員として過ごします。その後試験を受けて主計兵として働き始め、経理学校にも通い(この辺で結婚もする)、武昌丸という砲艦に乗り込んで南方で活動した後、沈められて命からがら生き延びます。その後日本に帰って九州の飛行場で勤務していたら、終戦を迎えたというもの。最後は何人かの同僚と馬車を引いて、故郷の愛媛に帰るまでが描かれます。

「ギンバイ(食料品など、船の備品をちょろまかすこと)」や初年兵の時に浴びる強烈で陰湿な「シゴキ」など、記事の枕にも書いていますが血湧き肉躍るところがありません、というかあの時代に生まれなくて良かったと思うことばかり。軍隊といっても、結局組織を作っているのは人間であって、自分が所属してきたクラブ活動や会社にも通じるところがあるなぁと思ったりしました。本書の中に描かれている、復員の時の秩序も何もあったもんじゃない様子は、負けた軍隊ほど情けないものはないものだな、という感じです。

勇壮な戦記物とも、悲惨な空襲の記録とも違う、別角度からの「あの戦争」いかがでしょうか?

絶版になってしまっている本で、古本を手に入れたのですが、是非とも復刊して欲しいですよねぇ……。