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『All You Need Is Kill』 著:桜坂洋 挿画:安倍吉俊

著者は桜坂洋。
しばらく確保していたのですが、友人とメッセでメタフィクションの話になったので引っ張りだしてきました。
この手のループ型メタフィクション系の作品では短い上に、凄くまとまりが良くて、入門としては最適な気がします。その分ループを脱出したろうと決意するまでの経緯が薄い感じですが、人間5回も殺されればくそ度胸が着くのかなぁ。あり得ない状況だから想像できない。
不老不死にしてもそうですが,時間から遊離してしまうが故の孤独こそ真の孤独なのかなぁと思いました.どんなに孤独でも世界のどこかには自分と同じ時間を共有してくれる人間がいるかもしれませんが,この作品のようになってしまうとどうしようもないですからねぇ.いざ自分がその立場に置かれた時にゃどうなるんでしょう,なかなか想像しがたいものです.

ALL YOU NEED IS KILL (集英社スーパーダッシュ文庫) ALL YOU NEED IS KILL (集英社スーパーダッシュ文庫)
(2004/12)
桜坂 洋

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『境界線上のホライゾン1下』

境界線上のホライゾン 1下 (1) (電撃文庫 か 5-31 GENESISシリーズ) 境界線上のホライゾン 1下 (1) (電撃文庫 か 5-31 GENESISシリーズ)
(2008/10/10)
川上 稔

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分厚いです。近所の本屋で買ったのですが一冊しか入荷していませんでしたよ。800ページて何ね!?
で、内容ですが、大変に熱い。それこそ設定やらキャラクター紹介やらを上巻で説明し終えているので、あとがきにあるように1巻からクライマックスな感じです。超人体術を余すこと無く表現していると言える戦闘シーンもさることながら、舌戦も大変素敵でした。変態描写も増量でサービス満点。これだけ分量があって破綻してないのが凄いよなぁ。
好きな一節は主人公達の隣のクラスの先生の言葉。

楽しいことが一杯あればいいと思う。嫌なこともあるだろうが、それ以上にいいことを見つけられればいいと思う。それも、就職とか、裕福とか、そういうこととは別のこと。
(中略)
上手く生きていく方法を教えることが出来るとは思えない。だが、自覚して教えていることが一つだけある。それは、
「そのためにも、……死なないこと。絶対に、自分で自分を殺さないこと。ーーそれだけは憶えておいて下さい」

フィクションとはいえ良い先生です。最近の若者は幼いと文句はたれるくせに、「資産運用」みたいな大人になってから覚えればいい些末なことを小学校から教えるよりも遙かに教育的です。結局勉強するのは自分なので、教育自体が教えられることはこういう事だけなんだろうと思います。
表紙の裏にキャラクターメイキングが書いてあるのに下巻で気づきました。続きをワクテカしながら待ってます。次はいつだろうか?

『いぬかみっ1~14+』

友人から貸してもらいました。
映画版でやたらに変態を強調するのでどんな作品やねんと思っていましたが。なにげにハートフル、というかこういうの好きです。いぬかみ(犬神)だけあって登場人物の1/3が犬っぽいのが犬好きとしては大変にかわいい。ともはね(幼女)とかいいですね、父性本能がくすぐられます。
とかく変態変態いっておりますが、基本的に共同生活系のハートフルラブコメです。主人公が最後にモテるようになるのもお約束。王道です。デレデレ言い寄られるのがお好きならきっと満足できるでしょうな。僕も好きです。愛するよりも愛されたいMAJIDE!

『境界線上のホライゾン1上』

川上稔先生の新作にござります。しかしのっけから500ページ超えとはぶっ飛ばしています。設定集が740ページあるとか、物語の骨子はティーンエイジャーのときにできているとかどんだけーです。
独特でぶっ飛んでいる会話と高速度カメラでとった動画をスローモーションで再生しているかのような独特の殺陣の描写が稔節です、これだけでお腹いっぱい。ハイテク剣とか鎧とかたまらんです。さとやすさんの絵も相変わらずまロくて素敵にござります。
とにかく世界観と登場人物が複雑極まりなく、把握するのに必死でしたが、本書を通過しておくことで次巻以降が楽になるのでしょうか?
キャラ的に好みを言うと、弄られっぷりに浅間、百合っぽいのでマルガとマルゴット、でも

「いい?どんなに着飾っていたって、ただ着飾っているだけなら趣味。人から見た自分を意識して着飾るようになって表現。それによって人を惹き付けられる着飾りができて御洒落。そして自分が欲しい点数を持っている人の目を奪う着飾りが出来たらー憧れを手にした、と言うのよね。」

この辺のやり取りで東とミリアムが一位です。主人公のトーリはまだ得体が知れません。今後に期待。

『とらドラ8!』著:竹宮ゆゆこ 挿画:ヤス

もはや「ラブコメ」ではありませぬ。前巻までは各人が各人の思惑を知らずいびつな関係でしたが、本巻で当事者達にも事情が分かってきて、さらなる混沌に放り込まれている感じです。大人ぶって静観を決め込んでいる感じだった亜美も少し本音がのぞいたような感じですし。
この誰も幸せになれなさそうな状況は「True Tears」の中盤どころのようです。読者は傍観者なのでこんな事が言えますが、当事者は苦しくて仕方ないんでしょうね。ただ、事態は進展しそうな雰囲気が出てきてます。きっとT.T.の祐一郎みたいに竜児が何とかしてくれると信じています。次巻を待てってかんじです。後書きによると比較的待たずに読めるかもしれません。
しかし思えば長い道のりでしたが、竜児、モテモテです。

とらドラ 8 (8) (電撃文庫 た 20-11) とらドラ 8 (8) (電撃文庫 た 20-11)
(2008/08/10)
竹宮 ゆゆこ

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『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』著:伏見つかさ 挿画:かんざきひろ

リアル妹がいると二次元妹には萌えられないと巷でよく言われますが、私も同意するところです。リアルが幻想を駆逐するために、「妹」という単語のもつ魔力が失われてしまうのです。しかし私にとって本作の妹「桐乃」はなかなか微妙なところ。なぜなら個人的にきわめてリアルな造形だからです。
妹にしろ弟にしろ何だかんだいって生まれたときから見ているもんだからカワイイモンです。思春期になってギャンギャン吠え出して、いくら罵られ、いなかった事にされようとも、ふと垣間見せる隙で兄貴をやってる気分になるモンです。「桐乃」もそんな感じでして、ツン99対デレ1のわずかな隙をして、主人公の兄貴「京介」に「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」と言わしめます。うわーリアルー。
アマゾンのおすすめメールでタイトルを見て、近所の書店へゴーでした。手に取ってみると表紙がカワイかったです。
枝葉末節はともかくタイトルにピンときた、電撃文庫を普通に読むような兄貴諸氏は買って間違いないと思います。個人的には盛大にニヤニヤしました、色々と。
サブキャラが出オチな感じなんで続くみたいです。正座して待たせていただきます。
帯を見ると、なんと来月から川上稔先生が戻っていらっしゃるらしいですYO。今回も筆が速いのでしょうか?

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (電撃文庫 (1639)) 俺の妹がこんなに可愛いわけがない (電撃文庫 (1639))
(2008/08/10)
伏見 つかさ

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『MAMA』著:紅玉いづき 挿画:カラス

あらすじ
魔術の盛んな国ガーダルシアのおちこぼれ少女トトは、数百年前に封印された孤独な<人喰いの魔物>を偶然に目覚めさせてしまう、片耳と引き換えに彼と契約し、強大な魔力を得たトトは、彼のママになることを決意する…。

というわけで、『ミミズクと夜の王』の紅玉いづき先生の新作です。ようやく読むことができました。

やはりこの作品の肝はトトと魔物の歪な関係でしょう。愛に飢えている人間の気持ちは、普通の愛情の連鎖の中にいたには決して理解できないのでしょうが、前者を救えるのは、やはり後者しかいないんだよななどと思ったり。
『ミミズク~』と同じく読んだあとに心が温かくなる素敵なお話でした。この先生の書く物語には、やはり独特の読後感があります。次回作も楽しみに待たせていただきます。

『ROOM NO.1301 1~4』著:新井輝 挿画:さっち

少し前ですが、大変エロいと評判になった小説です。
彼女とは手もつなげないくせに複数の女性と関係を持ってしまう男のお話です。主人公含め13階(タイトルの1301は部屋番号)の住人の壊れっぷりというか、感覚のぶっ飛び方は非常に興味深い。その辺りから来る作品の雰囲気だけで個人的には続きが読めます。

あともう一つ、評判に偽りはありません。全年齢向けのエロといえば「寸止め」が代表的でしょうが、そっちが青少年的なもどかしさを演出するのに対して、こちらは「中抜き」、事前と事後しか書いてません、それがまた大変湿っぽい。とはいえその湿っぽさが全体の雰囲気に繋がってる部分もあるんだろうなと思いますよ。レーベルの制約もあるんだろうけどそれを逆手にとってて上手いなぁと。
つづきもいずれ読みます。

「聖者の異端書」 著:内田響子

作者は内田響子さんという方。
「狼と香辛料」のような、登場人物がものを食べていそうな感じのするファンタジー。キリスト教的な一神教が存在する世界が舞台。
合理的な考え方ができすぎてしまう自分に悩む小国のお姫様が主人公。結婚式の当日に相手が消失、いろいろな人から死んだことにしろと言われるが納得できずに探しに旅に出る。その旅程を手記のような形で綴ったお話。
個人的には上に書いた、主人公の逡巡と、タイトルの「聖者の異端書」というある種矛盾した文言の秘密が良かったと思いました。
狭いとはいえ色々な地域を旅するのですが、一巻完結なので個々の描写は薄め。
タイトルに引かれて手に取りましたが、当たりでした。