かつて感想を書いたことがある、長沼伸一郎さんの新著。電子書籍で出ている現代経済学の直観的方法とは違って、経済学の数学的技法について解説した本。今回感想を書くのは1冊目?のマクロ経済学についての本です。ノーベル経済学賞を取るような、「動的マクロ均衡理論」と呼ばれる経済学の理論と、それに使われている数学的技法についての解説書です。ちなみに私は経済学は、S-D曲線くらいしか分かりません。ただし物理学については、解析力学は割と大学時代に真面目に勉強した、それくらいの理系の読者です。そんな人間が読んだ感想と思ってください。
数学というのは、それを専門とする本当にごくわずかな人々(数学者ですね)を除けば、日本語や英語と同じく世界を表現する道具である、と言うのが本書でよく分かります。物理学の場合は物体の運動や振る舞いを微分方程式で記述する(そしてその微分方程式を解けば物体の時間的な振る舞いの過程が分かる。)では経済学の場合は人間の経済的な行動の源泉になるような何か(目の前にある100万円を貯蓄するのか、使うのか?)を上手く微分方程式で書いてやると、その微分方程式を解くことで経済の動きが予測できる、要するに経済学はそういうことがしたいのだ、というのが繰り返し説明されます。読んでいくと、分かったような分からないような、何となくのイメージが頭にできる感じ(これが直観的理解と言うものか?)。
大学以降の比較的高度な数学は、私くらいの頭の出来だと勉強や計算をしているうちになんでこんなことをやっているのかだんだん分からなくなってくるのですが、長沼さんの著書は、常になんでこんな数式になるのか?とか、この数式はどういうことを表現したいのか?というところを上手く解説してくれるような気がします。一冊で理論や定理の全てが分かる本ではないですが、教科書と併せて読めば大学での学習が何倍にも有益になる一連の著書です。万人向けではないですが、一部の人には是が非でも薦めたい一冊です。
もう一冊の確率・統計編も読み始めたいと思います。