大学数学を学ぶ者、特にそれを比較的不得手とする者は、本書を傍らに置いて学生生活を送るべし。個人的にはこう言わざるを得ない一冊。
基本的には、大学数学で教えられる各種のトピックについて、「直観的」の書名の通り、そのイメージを紹介する本です。「なぜ」これらの計算方法や数学的記法が発明されたのかなどについても著者の見解が紹介され、ともすれば公式と過去問を覚えて終わりとされがちな物理数学が急に生き生きとして見えてきます。というか個人的にはそうでした。
目次を読めば分かりますが、扱われている内容は以下の通り。
- 線積分、面積分、全微分
- テイラー展開
- 線形代数(固有値と行列式)
- オイラーの公式(ε^iπ=-1)
- ベクトル解析+電磁気学
- ε-δ論法、位相空間
- フーリエ級数、フーリエ変換
- 複素関数、複素積分
- エントロピーと熱力学
- 解析力学
個人的には、ベクトル解析のrotの直観化には目から鱗が落ちました。その他も、ああ、こういうの教わったわ、全然訳が分からないままぎりぎり単位を確保していたけど…などと思いながら読んでおりました。初版は1987年、ほぼ30年前の本ですが、内容は現在でも十分通用する…というか、教えられる内容としては定番のラインナップですので、変える必要もないんですかね。大学時代に出会いたかったなぁと、きっともっと良い成績が取れていたでしょうに…。
最後の作用マトリックスを使った数学、科学技術批判は、トンデモといえばトンデモなんだろうけど、妙な説得力がある。個人的には、こういう世界のビッグピクチャーを見せるようなアイデアは大好きなので、非常にページを繰る手が早かった記憶が。