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『純減団体-人口、生産、消費の同時空洞化とその未来』 著:近藤修司

地方の衰退,とはよく言われる話ではあるが,実際のところどうなっているのだろうか?日本全体として人口が減少していくことはまぁわかっている訳だけれども,実際に自分たちの住んでいる町や村に,どんなことが起こりうるのだろうか?その疑問に大上段から答えた本が本書である.
タイトルの説明
本のタイトルにある「純減団体」とは,ある市町村における以下の2つの人口動態が両方ともマイナスになったものを指す.すなわち,
社会動態=(その町への転入者数)ー(その町からの転出者数)
自然動態=(その町で生まれる人の人数)ー(その町で死ぬ人の人数)
これらが両方ともマイナスになった団体を純減団体と呼んでおり,2006年時点で1844市町村中1023市町村が純減団体になっているそうである.さらに本書では,市町村が純減団体に変化するメカニズムについても考察を加えている.要は,製造業,建設業などの第二次産業の衰退によって地域経済が良くなくなり,職がないので社会動態がマイナスになる.社会動態のマイナスは若い世代から起こるために自然動態もマイナスになるというスパイラルらしい(詳しくは本書をお読みのこと).さらには今後(特に2020年代にかけて)どんなことが起こりうるのかをデータに基づいて推察してもいる.このパートは読んでいると暗澹たる気分になってきて,なかなか読み進むのがつらくなってくる….負担を追うことになる世代だけにね….
本書が何よりすごいのが,上記の考察には実際にそれを裏付けるデータがあるということである.著者は本書を書くにあたり,上記の1844市町村の人口動態などのデータを集めに集め,それに基づいて考察を行っているのである(これが上に”大上段から”と書いた理由でもある).社会学の研究として,やっている人がいそうなものだがどうなのだろうか?
ちなみに本書の1/3程度が,市町村,特に東京などの大都市圏以外の市町村が人口減少期をいかにサバイバルするかについての提言が占めている.これもまた,地方の衰退を間近で見ているが故の情熱が感じ取れる.
地方,地元の衰退に心を配る諸兄には,是非ともおすすめしたい一冊といえると思う.多少お高めではあるが,(どんな本でもそうなんだろうけど)書く労力に値段が釣り合ってないような気がする.

純減団体-人口、生産、消費の同時空洞化とその未来 純減団体-人口、生産、消費の同時空洞化とその未来
(2011/01/11)
近藤 修司

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『崖っぷち高齢独身者 30代・40代の結婚活動入門』著: 樋口康彦

『「婚活」時代』で一躍有名になった「結婚活動」にいそしむ40代の男性の手記。
感想を一言で言うと「モテないってこじらせると非常にややこしいことになるなぁ」という感じ。
読んでいて痛々しいとはあまり思わないのですが、出口の無い茨の道を裸で歩いているかのような赤裸々な手記にだんだん気持ちが沈んできます。自分は結婚弱者であると謙虚になってみたり相手に性的な魅力を感じないと断ってみたり、その場その場の言動や行動に一貫性がなくて多分に人間臭いです。
これに関しては、結婚を将来に対するリスクをヘッジするための恊働生活体と、性的な魅力を感じる異性(現在日本では異性婚しか制度的に認められていないので)との恋愛関係の中間に位置する現象と考えると、そりゃあ成立し難いはずだと思わなくもありません。前者であればパートナーに性的な魅力を感じなくともよく、ルームメイト的な形で共同生活をして人生のリスクを分散すればいいと思います。後者ならばそもそも恋をする相手がいることが前提であり、恋愛という状態や関係が先に立つのは変な感じがします。というか恋愛→結婚というプロセスが社会制度や常識に規定された単なる幻想なのか、それとも個人(生まれた家族以外という意味で)同士の高度な信頼関係の構築には必ず性愛が含まれなくてはならないものなのか、疑問は尽きません。
ところで、モテない私(本書によるとすでに結婚弱者)は危機感を感じるべきなのでしょうか?

崖っぷち高齢独身者 (光文社新書 354) 崖っぷち高齢独身者 (光文社新書 354)
(2008/06/17)
樋口康彦

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