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 『Hatch (1),(2)』  著:村上かつら

村上かつら 『Hatch』 1,2巻
婚活が一般的になって,どうもそのブームに乗ってサービスが乱立した結果,くたびれ果ててしまった人たちすら出てきている日本社会ですが,その1側面を鋭く切り取ったのだろう村上かつらさんの作品.ある程度歳を取っても恋愛や異性の経験がない女性を取り扱った作品というと,女性の初々しい反応をほほえましく見守る感じの作品が多い印象ですが,これはなんというか,胃が重い作品….ネット上で戯画化される婚活女性とは違って,現代の清純化している若い人たちのデータを見る限り,積極的に恋愛を求めるでもなく,とはいえ他人が勝手に恋愛市場に呼び込んでくれるでもなかったちょっと引っ込み思案の普通の人,というのは結構いるんじゃなかろうかという気がします.
ストーリーとしては,28歳まで異性の経験がなかった主人公が,独身の叔母さんの死をきっかけに婚活を始めて一段落つくまでの顛末を描いた作品.その中で,主人公の過去が(主に母親との関係)掘り下げられ,最終的にそこと折り合いをつけることで一段落します.僕は良く分からんのですが,「母の呪縛」というテーマは女性の人生をあつかった作品において良く扱われる題材のようです.
私がことさらこの作品に引きつけられたのは,「経験のない」女性がいきなり恋愛と結婚の鉄火場に放り込まれて当惑する様子のリアルさだと思います.「しらじらしい」という文句が出てくるのですが,中学校か高校くらいの段階で経験が停止して,その後に大人の恋愛市場に放り込まれた人間には男女問わずリアルな感覚だと思います.ひのきのぼうと布の服で竜王の城に放り出される,というのは上手いたとえだと思います.
最後は多少駆け足感は感じなくもない.とはいえ主人公の成長というか,変化を確実に感じさせるラストで,清涼感があります.
時節柄盛り上がってもよさそうな作品なのに,検索してみてもあまりレビューを書いている人がいないのはなぜでしょう?生々しすぎるのでしょうか?
女性の感想も聞いてみたいもの.

Hatch 2 (Feelコミックス) Hatch 2 (Feelコミックス)
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『崖っぷち高齢独身者 30代・40代の結婚活動入門』著: 樋口康彦

『「婚活」時代』で一躍有名になった「結婚活動」にいそしむ40代の男性の手記。
感想を一言で言うと「モテないってこじらせると非常にややこしいことになるなぁ」という感じ。
読んでいて痛々しいとはあまり思わないのですが、出口の無い茨の道を裸で歩いているかのような赤裸々な手記にだんだん気持ちが沈んできます。自分は結婚弱者であると謙虚になってみたり相手に性的な魅力を感じないと断ってみたり、その場その場の言動や行動に一貫性がなくて多分に人間臭いです。
これに関しては、結婚を将来に対するリスクをヘッジするための恊働生活体と、性的な魅力を感じる異性(現在日本では異性婚しか制度的に認められていないので)との恋愛関係の中間に位置する現象と考えると、そりゃあ成立し難いはずだと思わなくもありません。前者であればパートナーに性的な魅力を感じなくともよく、ルームメイト的な形で共同生活をして人生のリスクを分散すればいいと思います。後者ならばそもそも恋をする相手がいることが前提であり、恋愛という状態や関係が先に立つのは変な感じがします。というか恋愛→結婚というプロセスが社会制度や常識に規定された単なる幻想なのか、それとも個人(生まれた家族以外という意味で)同士の高度な信頼関係の構築には必ず性愛が含まれなくてはならないものなのか、疑問は尽きません。
ところで、モテない私(本書によるとすでに結婚弱者)は危機感を感じるべきなのでしょうか?

崖っぷち高齢独身者 (光文社新書 354) 崖っぷち高齢独身者 (光文社新書 354)
(2008/06/17)
樋口康彦

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