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『歴史とはなにか』著:岡田英弘

どうやら異端らしい歴史家の一冊。人類史に「歴史」と呼ばれるものは2種類しか存在したことがなく、地中海世界の歴史と中国の歴史ということだそうである。地中海世界の歴史はヘロドトスのそれであって、一定のエリア(昔はヨーロッパ)における国家の興亡を書いたもので、現在我々が学校で教えられる歴史はこっちの書き方である。中国の歴史は、司馬遷が書き始めた皇帝の「正統」の概念を表すものであって、フォーマットが強固に決まっていてどの王朝の歴史も同じような書き方になるせいで本当のところがどうだったのかは判別が難しいらしい。両者が出会ったのはモンゴル帝国の時代で、その時初めて「世界史」というものが誕生したということのようだ。

日本の歴史は日本書紀に始まるもので、古事記は「偽書(成立年代が偽られている)」というのが著者の説。日本書紀は天武天皇が、中国の王朝に対して日本の王朝が「正統」であることを示すために書かせたもので、万世一系といわれる日本の天皇家を中心とする歴史はこの時代に始まった(神武天皇とかどうとかは歴史というより神話上の存在)ということのようだ。

いわゆる歴史認識の問題を論じていたり、現代と古代の境界を国民国家の成立に置いて中世という区分は適当ではないと書いていたり、学校で教えられたこととは違うことがあれこれ書かれており、それも筋が通っている物だから面白い。国民国家という仕組みに限界が来ていると本書には書かれているが、その後国連やEU、NATOといった超国家的な組織の方にこそガタが来ている感じで、この本を書いた当時の著者が今の世界情勢を見たときにどのようなことを考えるのか、見て見たかったような気がする。

理系のための日本近代史私的選書

自分の個人的な経験を一般化するのはどうかと思うのですが,理系の皆さまには歴史にアレルギーを持っておられる方が多いのではないかと思います.自分自身も高校時代,年号の暗記に嫌気がさして歴史をまともに学ぶ気がなかった人間だったのですが,最近私的に再学習をしています.
この記事では,自分が近代史の再学習のために読んだ本を紹介したいと思います.比較的偏っている自覚はあるので,もっと色々な史観の本を読むべきなんでしょうが.ご紹介いただけると幸いです.
驕れる白人と闘うための日本近代史
江戸時代の日本の封建制度は、当時の西洋人が思っていた以上に良くできていたのだ、という本。日本のサービス業が異常にサービスがいいのは江戸時代以来らしい。

驕れる白人と闘うための日本近代史 (文春文庫) 驕れる白人と闘うための日本近代史 (文春文庫)
(2008/09/03)
松原 久子

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逝きし世の面影
上の本と同じく江戸時代の日本社会の完成度の高さを、こちらは当時の来日した外国人の手記などを徹底的に引用して書いている本。ある筋では有名な本らしい。

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー) 逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)
(2005/09)
渡辺 京二

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夜這いの民俗学,性愛論
近代日本社会に特有の人口再生産システム、「夜這い」の実相を実体験を基に示す。客観性がないという批判はありつつも、夜這いという単語に抱きがちな背徳的な印象を覆す。

夜這いの民俗学・夜這いの性愛論 夜這いの民俗学・夜這いの性愛論
(2004/06/10)
赤松 啓介

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マクニール世界史
世界史の本の中では比較的読みやすいと言われる本。一応欧米の帝国主義の文脈の中で、日本近代の維新が触れられています。 世界の流れの中での日本をざっと見るにはいいかも。

世界史 下 (中公文庫 マ 10-4) 世界史 下 (中公文庫 マ 10-4)
(2008/01)
ウィリアム・H. マクニール

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日本語が亡びるときー英語の世紀の中で
日本語のこれからを述べる本なのですが、論は明治時代の知識人層がいかにして西洋の学問を輸入したのか、に立脚しています。現在でも日本語で文学や学問ができるのは、この頃の日本人の非凡な努力あってのことなのです。

日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で 日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で
(2008/11/05)
水村 美苗

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再学習を始めて思うのは,歴史,特に近,現代史は実学であるということです.特に日本は,明治維新と太平洋戦争敗戦で二度も国家,文明としての大きな転換点を迎えているわけで,日本の現代は確実にその上に建っているわけです.歳をとるほど,今とこれからを考えるためには過去,すなわち歴史を学ばないとダメだなぁと思うのです.
もうちょっと読んだら太平洋戦争かなぁと思うのですが,祖父が戦争に行ってきた人間なのでかなんとなく抵抗感があるのですよね.どこかに良い本はないかしら.

『驕れる白人と闘うための日本近代史』

自分は一応理系でして,歴史の暗記科目っぷりに嫌気がさして,地理に逃げ,理系に走ったクチです.という訳で最近歴史をもう一回勉強しようとして読み始めたのがこの本です.
教科書問題でも話題になりますが,なぜ日本の歴史というのはいわゆる「自虐史観」的になるのでしょうか?その理由は日本が近現代において二回敗北している(一度明治維新のときに西洋文明に屈し,そして第二次大戦で敗北した)ことにあるのでしょう.この本はそんな日本の常識的な歴史の語り方を大きく逸脱した近代史(江戸~明治時代)の本です.
内容を要約すると,近代~この本が書かれた時期までの一般的な欧米人の感覚とは大きく異なり,日本には独自のかなり高度な文明,社会が存在していたのだ,ということです.たとえば日本の農民は西洋の農奴とは大きく異なるものであった,とか行った感じで,言われるままに自分たちの歴史をいたずらに下に見る必要はないと説きます.
驕れる白人,とタイトルにあるように,かなり攻撃的な調子で書かれているように感じます.たとえば欧米人は日本に対して「技術だけ盗みやがって」などと言っていたわけですが,彼らを文明の勝者たらしめた科学技術はそもそもイスラム世界に保存されていたものを十字軍で収奪してきてアレンジしたものなわけで,そのことを差し置いてジャパンバッシングするのは傲慢ではないの?というわけです.
確かに西洋文明は文明戦争(そんなものあるのか?)の勝者であり,科学技術+資本主義は問題を含みつつも史上最も多くの人たちを養うことに成功しています.そんな勝った文明側の欧米人が,今も上から目線で日本のことをみているのかはよく分かりません.この本が書かれたのは1989年であり,それから20年で日本のポップカルチャーが輸出されたり,日本の経済的な地位が低下したりと状況は変わっており,自分で確かめてみないと分からなくなっているように思います.
優等生的な回答をすると,過去のことでよその国の人とむやみやたらにケンカをするのは生産的ではないですが,バカにしてくる相手に一矢報いられるだけの歴史の教養と語学力はこれからもっと重要になるんでしょうね.その歴史の教養が,一部のマニアの物になってしまっている日本の現状ってどうなんでしょうね.自分も不勉強組に入る同じ穴のムジナなわけですけども.

驕れる白人と闘うための日本近代史 (文春文庫) 驕れる白人と闘うための日本近代史 (文春文庫)
(2008/09/03)
松原 久子

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