投資目的で時計を買うべきか否か、という話でネットの一部が盛り上がっていたので、便乗して書いてみます。
確かに高級時計は売買にまとまった金額が動く上、モノによっては価格が上昇する可能性があり、確かに金銭的な意味で「資産」になるのかもしれませんが、それ以外の非金銭的な「資産価値」は、結局のところ「方便」であり、要するに「趣味の品」の高級時計を買う言い訳なんではないでしょうか?機械式、クォーツ、スマートウォッチと手首につけるデバイスは多様化しており、まぁ好きなモノをつければいいのではないかと。
さて、ここから自分の時計を自慢しちゃうよ!これは投資目的で買ったものではなく、100%趣味の時計です(売れるような価値のあるものではありませんので)。あと、クォーツしか使ったことがなかった人間が自動巻きの時計にどのような印象を抱いたかという記録でもあります。
Icklerというドイツの時計ケースメーカーがプライベートブランドのような形で作っている時計です。
第二次世界大戦時代の航空機パイロットが使っていたデザインでいわゆるところの「パイロットウォッチ」。「時間を表示する」という機能をシンプルに形状で表現しているように思えて好きなんです。(欲を言えばIWCのMark XII、XV、XVIあたりが欲しくもありましたが、2017年時点で新品はなかった上に予算オーバーで断念。とはいえ本品もこうして記事を書くくらいに気に入って使っています。)
ムーブメントはETAの2824。おそらく買ってきたものをつけただけのいわゆるエタポンというやつ。ハミルトンだと2824ベースの時計がアンダー10万で手に入るので10万円強という価格は割高かもしれません。シンプルで頑丈な設計だそうで(素人なのでよく分からない)、有名ブランドの機械に比べてなにかと維持費も安い。ついでに言えば、世界中で使われている機械なのでどこでも修理ができるでしょう。生まれて初めて機械式の時計を使っていますが、精度は正直よく分かりません(電車に乗り遅れず、約束の時間に間に合いさえすれば、秒単位で正確であることにこだわりがない)。放っておくと止まることについても、定期的に装用したりゼンマイを巻けばいいわけで、万年筆を常用している人間からすると許容範囲内です。8振動の駆動音は新鮮で魅力的。クォーツ式の毎秒1ステップの運針で感じた「クロノスタシス」が、毎秒8ステップの運針でも感じたのは地味に発見でした。
個人的に「おお」と思ったのはケース。さすがケースのメーカーだけあって、手持ちの3万円くらいのクォーツ時計とは作りが違います。表面は細かいヘアライン加工で角もきっちり90度が出ている感じ。パッと見た感じ「高精度に加工された金属製品」という感じがします。サファイアクリスタルの風防はミネラルガラスに比べて透明度が高いような気がします。
文字盤。黒文字盤に夜光塗料のインデックス、黒の針にも夜光塗料、シンプルな三針。日付表示がなく時間合わせに気を遣わなくてもいいのは利点ですが、日付の確認を手首をかざすだけでできないのはちょっと面倒。
竜頭は王冠型と呼ばれる形状で手袋をしていても時刻合わせができるようにという意図だそう。確かにゼンマイを巻いたり、時計を合わせたりしやすい。が、これだけ出っ張っていると当然手にあたって痛いのでヤスリで角を落としました。その際に本体に少し傷が付いたのがちょっと残念(扱いが悪すぎる)。
取り扱いは千野時計店という東京・渋谷にある時計屋さんで、楽天等で通販も可能。これは39mmサイズですが、36mmや42mmといったサイズもある他、文字盤や針、ケース裏のふた等のオーダーができます。昔は5万円くらいで買えたそうで、ちょっと損した気分ではあります。
「もっといいもの」は沢山あるんでしょうが、本体も維持費も個人的にはなかなか捻出が難しいので、これくらいが「身の丈に合っている」感がしています。最終的に、腕時計なんて「気に入ったもの」を着けるのが一番だと思います。ジェームズ・ボンドは設定上オメガやロレックスの時計を着けていますが、あれは支給品(会社で使ってるパソコンみたいなもの)で身銭を切ってはいませんし、「ダヴィンチ・コード」のラングドン教授も、ミッキーマウスの安い時計をつけているわけで。