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『友だち幻想 人と人の<つながり>を考える』 著:菅野仁

一言で言うならば、日本社会や学校社会における「友だち」に代表される、同質性に基づく人間関係に関する思い込みをほどいて、個人の自立や自由を前提とした人間関係を構築するにはどうしていったら良いのかについて書いている一冊。人間関係についていくつか言葉を定義して、それを使って曖昧模糊とした人間関係に手で触れるような形を与え、解きほぐしていきます。学問的な言葉を使いつつも表現はわかりやすく、かといって内容的には大人の読書に堪える物であると思います。

主張されている内容としては、鴻上尚史さんの『「空気」と「世間」』とか、「孤独と不安のレッスン」に近いものなのかなと思いました。ですので、おすすめしたいのは日常の人間関係に息苦しさを感じている人。本当はみんなこんな感じで、お互いに自由に、さりとて尊重しあうような人間関係の中に生きられたら良いんですけどねぇ。

 

  

 

『スクールカーストの正体 キレイゴト抜きのいじめ対応』著:堀裕嗣

「スクールカースト」という単語を知っているでしょうか?主に中等教育の学級、学校において、学生達が暗黙的に、お互いに格付けし合った結果として生じる階級構造のことです。米国だと大抵アメフト選手のジョックス、チアリーダーやってるクイーンビーを頂点に、下層にギーク(技術オタク)やナード(アニメ・マンガオタク)が位置する的なアレです。

本書は、このスクールカーストについて非常に的確な分析と、そこから生じる現代の「いじめ」の対策をいかに取るべきか、という指針について書いたものです。筆者は中学校教師を長く務めて、著述活動も結構やっておられる方のよう。筆者によるスクールカースト分析の解説としては、非常に良質な解説記事があるので、そっちをご覧ください。

現実を抽象化して類型化するという作業は、学問において基本的な作業です。自然科学の場合は再現性が良いことが多く、工学に応用されて製品として使われる場合があります。人間が絡むととたんに再現性が悪くなるわけですが、そういった領域においても、抽象化された理論を学び、物事の道理をわきまえれば、現場での微調整によって問題の解決が非常に容易になるということがあるのだと思います。(とはいえ、現場での応用力、そもそもの問題認識力、そういった個人の応用力にこの手の理論の有効性が大きく依存する点が、多くのビジネスノウハウ本がビジネスマンの「オナニー」で終わってしまう理由の1つでしょう。もちろん理論がプアノウハウであるということもあり得ます。)

本書は恐らく現場で中等教育現場の悲喜こもごもを定点観測して、試行錯誤した結果であり、豊富な事例に裏付けられた本書は人間が絡む領域において抽象化された理論を学ぶことの好例と言えると思います。

もちろん先生にも、子供がいる親にも、はたまた学生時分を思い出して自分が何タイプだったのかを想像するのにも、いろいろなタイプの人がいろいろな読み方ができる本だと思います。

スクールカーストという単語にピンとこない人はライトノベルなどどうでしょう。『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』というシリーズはスクールカーストを扱った作品の白眉ですので、副読本としてぜひ。