著者は内田麻里香さん.サイエンスコミュニケーターの方です.
タイトルの通り,科学(本書の中では科学+技術の意)とどのように付き合っていけばよいのか,というサイエンスコミュニケーションについて,特に筆者がサイエンスコミュニケーションの対象と考えている,科学技術に直接携わっていない人(いわゆる文系の人)に対して書かれた本のようです.
本書において僕がおもしろいと思った点は,科学リテラシーを
・科学的思考法
・科学に関する知識
の2つに分割していることです.そして科学的思考法そのものについては,理系の人間,科学技術に携わっている人であっても必ずしも持っていないと主張している点でしょうか.その一例として,2010年に物議をかもした「事業仕分け」における科学者たちの行動が取り上げられ,あれは科学の教条化であり,科学的思考法からもっとも遠い態度であると書かれています.
筆者の,「コミュニティの中に科学の考え方を理解し,必要な情報を取捨選択する能力を持った人を」という考え方には,社会の成員全員をすべからく教化すべしという考え方よりもいささか現実路線のような気がします.
一応科学技術に関わっている自分としてできることは,自分の専門も世の中に存在する多様な事物の一部にすぎないと相対化して,他者に対して謙虚に言葉を紡ぐことなのでしょうね.とするならば,サイエンスコミュニケーションもまたコミュニケーションの一部に他ならないと,こういう訳ですね.
科学との正しい付き合い方 (DIS+COVERサイエンス) (2010/04/15) 内田 麻理香 |