『灼眼のシャナ17』

虜囚の身にあるシャナのお話。登場するキャラクター含めて、伏線を回収して物語をたたみにかかっている感じがします。
壊滅状態にされたフレイムヘイズ側が反撃の狼煙を上げそうな感じで、これまでの短編などで個別に活躍してきた各人がシャナたちの住んでる世界に関連してくる感じでなかなかどうして面白くなってきました。
特に印象に残ったのは吉田さんが普通の人らしからぬ「世界」云々という思考を巡らす一節でした。この辺りが読者か作者を代表している感じがして大変面白いです。
つまるところこの物語はボク(悠二)と戦う美少女たるキミ(シャナ)を軸にしたセカイ系っぽいディテールを含んでいる訳です。しかし、この一節で確信が強まったのですが、意図的にそこを脱しようとしている感じを受けます。この作品ではペルベオルはじめ諸々の登場人物が口にする「この世はままならぬ」という台詞や、先代の炎髪灼眼の討ち手や古来から延々と続くフレイムヘイズと徒の戦いのエピソードからくる時間的な広がり、サイドストーリーで補完される世界の広がりが物語に厚みを加えています。不老不死の身体、卓越した戦闘能力、自在法といった個人としての強さだけでは簡単に世界は揺らがないぞ、みたいな感じになっています。まぁ悠二が蛇と合一してしまって、結局ボクとキミでセカイの危機なんで、セカイ系であることに変わりはなく、大河作品であるが故に尺をいっぱいに使っているだけとも読めるんですが。
とにかくこの辺りの世界の厚みが、私がこの作品を愛好する理由だったりします。
前巻までの話の流れがよっぽど分かりにくかったのか、本文中で要約が入ってたのもちょっとニヤけました。どっかから突っ込まれでもしたのでしょうか?
最後の伏線は何なのか、思いつかないし読み返す時間もないので、次の巻以降をまた楽しみに待とうと思います。
しかし大作になりすぎて簡単に他人に薦められんなぁw

灼眼のシャナ 17 (17) (電撃文庫 た 14-23) 灼眼のシャナ 17 (17) (電撃文庫 た 14-23)
(2008/11/10)
高橋 弥七郎

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