『福岡市を経営する』著:高島宗一郎

地方局の人気アナウンサーから転身して福岡市の市長になり、大胆な施策で街の活性度を非常に上げている高島宗一郎氏の初著作。

民間目線で改革を進めているというよりも、とにかく合理的で優秀な人であるという印象である。責任と権限が表裏一体であり、責任の取り方に市民による罷免の可能性を置いて、変化を起こすことによる軋轢を受け止めて権限を振るっていく著者の施政は、読んでいて非常に気持ちがいい。そもそも直接選挙が可能な地方自治体の首長は、トップダウンに物事を動かせるので、いい人が上に立つと劇的に物事が前に進むというのは聞いていたが、福岡市は実にいい首長に恵まれたなと思う。

特に就任以後に遭遇した熊本の地震におけるIT技術の有用性を示すパートは印象的だった。災害対応、特に救援物資を手配する物流部門にITが有用なことはアマゾンやウォルマートなんかを見ていれば非常によく分かるわけで、ソフトウェアや情報システム開発を自分でやったことがあるなしに関わらず、災害対応の指揮を執る首長にITリテラシーは不可欠だろうと思う。少なくとも、パソコンを使っていないことを公言したり、パソコンが使われたことが驚愕を以て迎えられるような人たちがリーダーになることには弊害が大きいだろうなぁ、というのが強い印象だった。お年寄りでもセンスや知識があるなら上に立ってもらっていいが、使えないし覚える気がないのならさっさと若手に道を譲るべきだろう。自分が選挙権を行使する際には意識したいと思う。

見目麗しく収益性が良くても、本来の存在意義を侵すようものだったり、関係者への利益誘導を同時に行う「行政改革」というのが世の中にあふれているので(個人情報管理に問題のある企業が運営するツタヤ図書館とか、周回遅れで世界の流れに逆行する水道民営化とか)、逆に市長の施政に批判的な本や、「影」の部分を取り上げた文章を読んでみたくもある(質の悪い単なる誹謗中傷も多いのだろうから、玉を見つけてくるのは大変だろうが)。あと、現在の清廉潔白で果断なありようが、歳を重ねてどう変わるのか、ちょっと見てみたくもある。

ともあれ何より、アグレッシブに成長を求める姿勢は非常に共感する。そう、公教育や福祉、学問の振興や文化財の保存(このほか、僕は知らないが世の中に必要なこと)にもっとお金を回すには、今の日本には豊かさが全く足りない。利益を追求するビジネスにおいて、非効率で儲からない事に時間や労力を浪費し続けるのは、全くのナンセンスなのだ。短い時間でバッチリ儲けてガンガン従業員に給料を払い、ほどほどに税金を納めつつ、おいしいものを食べたり、友人や家族と楽しいことをするべきなんである。

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