『戦争は女の顔をしていない』著:スヴェトラーナ・アレクシェービチ 訳: 三浦 みどり

第二次世界大戦の独ソ戦に従軍したソ連軍女性兵士達の体験談を集成したもの。戦時性暴力、飢餓、人肉食、赤子殺し、本書は悲惨な体験のデパートで、子どもの頃に聞いた戦争体験や、日本だと8月15日前後に増える第二次世界大戦を回顧する番組で、戦争体験者が語る体験に非常に近い。洋の東西を問わず、第二次世界大戦は本当に壮絶で悲惨な戦争だったのだろうということがよく分かる。そして恐らく、今も地球のどこかで起きている紛争や武力衝突と呼ばれるものも、同様にひどいものなのだろう。

共産主義、社会主義国の息苦しさ、上流階級のテクノクラートではなく、特に地べたで生きている大多数の人たちの息苦しさ、みたいなものは、理解できるような理解できないような。それも自由主義の国から見た身勝手な視点なのかもしれないが。

一人の回想録だが、傷痍軍人の手記という意味では「アメリカン・スナイパー」と対比したくなる。あの本はマッチョなアメリカ人男性、しかもSEALS隊員という極めつけのマッチョ男性の視点から書かれているものなので、なんとなく勇ましい書き方がされている。それに対して本書の筆致は、まさに若い頃の悲惨な体験を引きずりながらなんとかかんとか生きてきたおばあさんが、時には涙を目に浮かべながら、語ったのだろうなというのが分かるような気がする(過剰なイマジネーションかもしれないが)。

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