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『湾岸MIDNIGHT C1ランナー』著:楠みちはる

この長距離巡航のコツのエピソードを読みたくて買ったシリーズ。

楠みちはる『湾岸MIDNIGHT C1ランナー』6巻 75ページより引用

楠みちはる『湾岸MIDNIGHT C1ランナー』6巻 79ページより引用

前作にも出てきた自動車チューナーの一つであるRGOのステッカーを付けたRGO非公認のRX-7が最近首都高に出没するらしい……というところから始まる名作、湾岸MIDNIGHTの続編。前作に登場した人物や車に加えて、例の野良RX-7のドライバーであるノブは、インターネット、スマホ時代の自動車・自動車チューニング雑誌のあり方を模索する会社GTカーズの経営に巻き込まれながら、周囲の大人達に教えられたり、大人達に刺激を与えたり……という人間模様が描かれる。

首都高でレースをするのは変わらず湾岸ミッドナイトなんだが、本作はちょっと違う味付けで、上の世代の大人たちが、これから世の中に出ていく下の世代に何をしてあげられるかを考えているシーンが多かった。時代設定がバブルの時代から動かなかったように見えた無印と違って今作はハッキリと2010年前後が舞台なので、チューニングカーというものがはっきり昔の代物になってしまっているがゆえに、次の世代に何を残すのかみたいなトーンになったのかなと思った。

主人公のノブも、自分より少し下の世代の等身大の若者って感じで親しみが持てた。前作の主人公のアキオは、だんだん悟りを開いた仏法僧というか、首都高の付喪神みたいになっていったので……。で、最後の最後に少しだけ悪魔のZが出てくるのだが、本当に首都高に取り憑いていて、ミッドナイトブルーのS30Zの形をした妖怪みたいな扱いになってて少しクスッときた。このシーンはノブが首都高を走るドライバーとして、悪魔のZに見える資格を得たという解釈をするべきなのだと思うが。

本作のタイトルの首都高のC1(都心環状線一号)だが、実際走ってみると直線がほとんどなく、クネクネ上下左右に曲がるのでワインディングロードのようで結構楽しい(速度によっては怖く感じる。)ドライビングプレジャーがある道であるのは確かなのだが、ここで300km/hでレースをされると迷惑極まりないな、と思う。そういう意味で湾岸ミッドナイトはあくまでフィクションであり、フィクションであるがゆえに面白いのである。

ちなみに首都高に乗るときは箱崎インターで降りることが多いのだが、必ず道を間違えて一つ先の木場で降りることになってしまう。木場は木場で昔の生活圏なので懐かしさがあるといえばあるのだが。

 

『湾岸MIDNIGHT (1)~(42)』 著:楠みちはる

インターネット、特にTwitterを見ていると、『らーめん西遊記』と並んでページの抜粋が時々流れてくる本作。妙に含蓄のある台詞を登場人物が言っているようなので、やはり原典に当たらねばなるまいとシリーズ42巻を一気買いすることとなった。

テーマは「チューニングカー」と呼ばれる改造車を使い、東京の首都高速道路を使って夜な夜な繰り広げられる公道レース(当然非合法、いうなれば主人公たちは暴走族の一種といってもよい)である。主人公は日産の初代フェアレディZを元にしたミッドナイトブルーの改造車、通称「悪魔のZ」を操り、ポルシェ911「ブラックバード」やスカイラインGT-R、RX-7といったスポーツカーたちと、時速80~100キロは出しているトラックや一般車の間を縫って、時速300キロのスラロームを繰り広げる。モノローグモリモリのレースそれ自体もそうだが、それぞれの車両の持ち主の人生模様と、自動車のチューニングに携わる人たちの交わりも本作の魅力である。

悪魔のZと戦う自動車とドライバーが1組作品にログインしてきて、悪魔のZと戦ってログアウトする、というのを数巻かけてやるのが定番で、その裏で通奏低音のようにブラックバードとの濃厚なつばぜり合い&塩の送り合いが繰り広げられる。その様はまるで複数ヒロインのエピソードが並行世界のように繰り広げられるギャルゲーアニメ『アマガミSS』のようである。うん、よく考えたらコレ、アマガミSSなんだ(作品的には『湾岸〜』が古い)。

ちなみに、個人的に好きな名台詞は、32巻のコレである。

『湾岸ミッドナイト 32巻』68〜69ページより引用

「安くて」「人気」で「数が出ている」というのは趣味の世界においてはしばしば馬鹿にされがちな要素であるが、失敗も含めて試行錯誤がしやすく、ノウハウが蓄積、共有されやすいものの中からは最終的によいものが出てくる。高い山は裾野が広いのである。

本作のテーマは自動車だが、趣味や仕事、なんでもいいが自分だけの何か、他人には理解されないようなこだわりを持っている人には本作の名台詞がしみるのではないだろうか(本記事の筆者には実に染みた。)