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『(株)貧困大国アメリカ』 著:堤未果

自由と民主主義、そしてフロンティアスピリットの国アメリカ。それが実は企業とグローバル資本によってゆがめられていて、企業によって支配された狂った国になってしまっているのだというコとを書いた本。それがまさに(株)というタイトルに現れている訳です。

TPPもどうせごり押しされるんだろうし、TPPに飲み込まれたらどうなるのか、いっちょ読んでみるかと読んでみたら、まぁ気が滅入ること気が滅入ること。日本が居心地がいい国なのかといわれると、特に労働環境やシルバー民主主義など、何とかならんものかなぁと思うわけですが、かといってアメリカも住みたい国かと言われると、この本を読む限りちょっと御免被りたい感じです。

グローバル企業による多額の企業献金と議員買収によって企業にとって都合が良いように法律が変更され、それによってアメリカ国内の農業も、小売業も、マスコミも、地方自治体も効率と収益性を追求する組織に変えられてしまい、安全や公共、環境への影響、報道の中立性といった概念がないがしろにされていること。それによって確かにお金の総量は増えてるんだろうけど、決して社会が豊かになってはいないという事例が次々に紹介されます。どうしてこんなことになっているのかという感じ。オバマ大統領の支持率が下がっているのも宜なるかな、なんか口だけの男に見えてくるのがなんとも言えません。

最後の章に提示されている処方箋は、同じ著者の別の著作である『社会の真実の見つけ方』にも書いてあるように、お金と時間と手間をかけて、健全なメディアを育て、味方を増やし、代議士を動かすしかないようなんですね。日本の現状を見る限り、結構絶望的だなぁなどと思ってしまうのでした…。

一時期話題になった「Occupy Wallstreet」運動や「アノニマス」の活動がなぜ起こったのかなど、アメリカや格差社会についてのニュースを理解する結構重要な補助線になる本のような気がします。その辺を理解した上で、TPPとかその辺の事象について考えていきたいなぁと思います。