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『ヨーロッパ退屈日記』著:伊丹十三

ブルータスとかポパイとかGQとか、ハイソサエティのできる男、文化の分かるシティボーイのようなイメージでものを売る、一部の男性ファッション誌の世界観の元祖のようなエッセイ。これは素直に思ったことを書いていて、その世界観を商売に使っているのがファッション誌という感じでしょうか。著者は俳優だったり、映画監督だったりした伊丹十三。

料理や酒の描写はとてもおいしそう。ヨーロッパ退屈日記なので、海外で和食を苦労して食べたエピソードも載っているが、基本的には洋酒洋食。これまで読んだエッセイでいうと、和食は池波正太郎水上勉、洋食はこれ、という感じでしょうか。ちょっと気取った店にカクテルでも飲みに行きたくなりそうです。

読み出しの印象は「スノッブ!」という感じだったのですが、最終的には、多分この人は本気なんだろうなと思えてきました。昭和40年出版ということは日本人も海外慣れしていなくて、海外で色々と馬鹿にされたり醜態をさらしたりしていた時代だったんでしょうから、その辺を事情を鑑みると、多分そういったものが許せなかったのかもしれませんね。日本の町並みに苦言を呈しているところには同意するところ。貴重なものも壊してしまいますからねぇ。