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『乙嫁語り(7)』 著:森薫

今年もこの季節がやってきました。そう、森薫先生の『乙嫁語り』のコミックス発売日です。ということで最新刊の7巻について書きたいと思います。今回の主人公は表紙に出てきているアニスさんです。今回は普通の結婚ではなく、姉妹妻という女性同士の結婚のような制度が紹介されます。ちなみに前巻6巻の感想はこちら

舞台はペルシア。超金持ちの箱入り奥様アニスは、公衆浴場でシーリーンと出会います。彼女に心引かれたアニスは、彼女に姉妹妻になってくれないかと頼む。はてさて2人はどうなるのか?

と言う筋書きです。公衆浴場という言葉があることから分かりますように。女性の裸体の大盤振る舞いです。前作『エマ』でもエマの雇い主になるドロテア奥様は裸族というか、惜しげなく読者に裸体をサービスしてくれる女性でしたが、今回はアニス、シーリーン含めていろいろな体型の女性が出てきます。描いてて楽しいんだろうなぁという感じが伝わってきます。

イスラム教圏というか、中東の文化って、我々からするとちょっと違うなと思わされるものが多いわけですが、本作をそれなりに合理性があるものなのだなと言う気がしてきます。一夫多妻制も、機械文明や情報文明が発達していなくて女性が自活する手段が乏しく、かつ「平等に愛する」とか、「十分な資産を持っている」条件を満たす限りにおいてはそこそこ合理性があると思えますし。ますます中東とか中央アジアに行ってみたくなってきたわけですが、現実はちょっととても行けたものではないのがつらいですね。4,5巻辺りで出てきたライラ・レイリ姉妹の生活圏、アラル海はすでに砂漠になってしまっているわけですし…。

『乙嫁語り(6)』 著:森薫

もはや言う事もあるまい、中央アジア譚。
この巻も非常に面白かった。テーマは、5巻が「ごちそう」、6巻は「戦争」かな?
全体的に動きが激しくて、普段の端正で緻密な線とうってかわって荒々しい描線。「エマ」を含めても、本格的に戦争を描いたのはこれが初めてじゃなかろうか?
5巻からの伏線?で手負いの鷹を活かすか殺すか、という事を決断をするときにアミルが言った「鳥は空を飛んで生きるものです このまま空も飛べずエサをもらって それでは命あっても生きているとは言いません」というセリフが、本巻での「馬は野を駆けて生き 鳥は空を飛んで生きる」というアゼルのセリフに被ります。二人が全く別のところで別の事象を目の前に言っているのが肝で、二人が兄妹であるを良く表す素晴らしい伏線だと思います。同時に、親父さんはもうろくしちゃったんだなぁと思わされるわけですが。
現実の歴史を考えると登場人物の前途は決して明るいとは言えなさそうな気がするのが何ともやるせないです。前述のセリフは、それを暗示しているような気がするのも何とも…。実際問題、ライラ、レイリ達が住んでいたアラル海は物理的にもうないわけですし…。
次巻はスミス陣ということでまた一年待とうと思います。

乙嫁語り 6巻 (ビームコミックス) 乙嫁語り 6巻 (ビームコミックス)
(2014/01/14)
森 薫

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