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『社会の真実の見つけ方』 著:堤未果

『貧困大国アメリカ』などで有名な在米日本人ジャーナリストの語る、メディアリテラシーの磨き方といった趣の本です。子供向け、というか中高生向けのノンフィクション書籍は、大人が読んでも非常に興味深くて面白いです、というか、大人であっても全く土地勘がない分野の勉強を始めるときには、最適な本なんじゃないかと思います。岩波ジュニア新書はいい本が本当にたくさんあるのですが、是非とも続けてほしいシリーズの1つであります。

扱っているテーマとしては、メディアによるアジテーションとプロパガンダ(9.11とイラク戦争を題材として)、新自由主義や市場至上主義による公教育の崩壊、ウィキリークスとメディアリテラシー、そして選挙「外」の政治活動について。でしょうか。前半2つを読んでいると、はっきり言って、あの話を読んでアメリカに住みたいだなんてちっとも思いません。日本がアメリカ化しつつあるというのは、全くもって勘弁願いたいものです。あと、9.11からイラク戦争に向かうアメリカの動きについては、サダム・フセインをヒトラーになぞらえて悪役化する一方で、彼が発明者であるマスメディアを使ったプロパガンダが最大限活用されている様子は何とも皮肉なものがあります。

本作の訴えるところでは、国内、海外、媒体を限定せずに複数の情報収集チャンネルを持ち、それらを互いに見比べること。そして、それらを総合して自分の頭で考えることこそがまさに「社会の真実の見つけ方」になるわけですが、なかなかできないよねぇというのが、現在の娑婆世界を眺めていて思うことではあります。大人こそできていなかったりしますしね。

そして、社会の真実を見つけるだけでなく、どんどんおかしくなっていく世の中をどう変えていくのか、それは詰まるところ政治であり、選挙の時にどうにかこうにかするだけでなく、普段から政治について考えて、「選挙期間の外」で議員さんとできれば直接コミュニケーションをとることの大切さを説きます。本書は若者、特に中高生を相手にしている本なのでしょうから、特に「待つ」ことの大切さを説いているのが印象的でした。すぐに結果が出ないからといって見放したりしないで、粘り強く活動を続けることの大切さが説かれています。これに関しては、本当にその通りだと思いつつ、働き始めれば仕事と、あとはかろうじてプライベートとか家族形成で人生が埋まってしまう日本の難しさも思いました。これではなかなか世の中を変えるのは難しそうです。

発売されたのが2010年で、3.11以降のメディア環境の混乱についてはあまり語られていないので、是非とも著者による総括を聞いてみたい物ですねぇと思います。できれば、これくらいの平易な語り口で。