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『砂糖の世界史』 著:川北稔

砂糖という製品を媒体にして、近代の庶民生活、経済システムなどの変化を綴った本。岩波ジュニア新書なので小学生、中学生向けと思いきや、門外漢の大人にとっても良書なのは本書も同じく。

本書には「砂糖」、「コーヒー」、「お茶」、「カカオ(チョコレート)」など、現代に広くたしなまれている嗜好品が登場します。本書でそれらは近代初期に世界的に取引された商品、「世界商品」と呼ばれています。そしてそれらの世界商品がどのようにして社会に、特に日本を含めた西洋近代をベースとする社会に広がっていったのかが紹介されます。「三角貿易」という言葉がありますが、まさにその中心地域であった大西洋を中心とした南北アメリカ、ヨーロッパ、そしてアフリカが主な対象地域となります。単なる貿易についてだけでなく、当時の貴族や庶民の暮らし、そして「砂糖」などの製品を生産するために使役された現地人や黒人奴隷の様子までが縦横無尽に紹介されます。

「砂糖」という世界商品を題材とするだけで、現代に通じる生活習慣や経済システムなど、社会の諸要素がどのように成立したのかをかくも広範に説明できるのだなぁと感嘆しました。熱心な文系の学生でもない人間からすると、無味乾燥な語句と年表の組み合わせに過ぎなかった歴史に肉がついて見えてきます。確かに現代というものは、過去の歴史の土台の上に成立しているものであり、歴史を理解することは現代をよりよく理解することにつながるのだなと思いました。というか、初期の株式市場のバブルと崩壊なんて、現代と同じような物に見えてきます。正直言って人間ってここ300年くらい全く進歩してないんだと思えてきます。

ほんの3日ほど、4時間くらいで読み終わりましたし、扱っている題材は上にも書きましたが現代を理解する上で大変役に立つ興味深いものです。価格も安いですし、非常におすすめの良書です。下のアフィリエイトから是非ポチッとお願いいたします(苦笑)。