『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』 著:赤城大空 挿画:霜月えいと

赤城大空さんという方のデビュー作,何でも小学館ライトノベル大賞の優秀賞受賞作だそうで.受賞時のペンネームは「ペロペロ山根」トバしてますねぇ.有川浩さんの『図書館戦争』は言葉狩りがされた世界に関する素晴らしい思考実験だったわけですが,目の付け所はあの作品ばりにシャープだと思います.

岸田秀は「人間は本能が壊れた生き物である」と言っていて,人間の繁殖行動が「交尾」ではなく「セックス」である以上は,それが何らかの形で社会的に教育されないとマズいんだろうと思うわけですが,サブヒロイン?の暴走はまさにダメだという想像力を喚起するものでした.この辺の考察は見事.

作中で言われているように,人間が死ぬメカニズムは子どもにも教えられていて,人間が増えるメカニズムは教えられていない,でも大人は知っていて,人間は増えている.このミッシングリンクが社会的にどう埋められるのか?というところは興味があります.そこまで踏み込んじゃうとお気軽に読めるライトノベルじゃなくなってしまうのかな?

セックスレスと少子化で困ってる?世の中,「愛し合う人間同士がセックスすることは,気持ちいいし男女なら人間増えるし素晴らしいことだよ,みんなもっとセックスしよう!」くらいはっきり言ってしまって,その上で産まれてきた子どもが最大限幸せに大人になれるように諸制度を整えるくらいやっても良いと思うんですけどねぇ.私はそう思いますよ.

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