2015年現在憲法を改正するだの、特に安全保障関係で日本の国の方針が大きく変わりそうな状況にあり、近い将来、改正に向けた動きが進むのだろうなぁという気がします。しかし、特に学校で教わったこともなく、自分として何も語る言葉、考える軸を持たないため、いろいろネットで探してみて良さそうな本があったので読んでみたという次第。結論としては、憲法改正問題に興味を持った人の最初の1冊として、非常にいい本なのではないかと思います。細かいことは、巻末に関連書籍が紹介されていますから、そこからいくつかかいつまんで読んでみれば良いのではないかと。
形式としては、憲法学の先生である南野森先生が、本書執筆時大学入学を控えるティーンエイジャーに、日本国憲法を題材にして、憲法学の考え方を講義をするという形式の本。最近感想を書いた『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』と同様の形式です。流行っているんでしょうか?お相手の内山奈月さんという方、どうもアイドルグループAKB48のメンバーらしく、私としては本書を読むまで名前を聞いたことはありませんでした。しかしまぁ、さすが慶応大学に入学予定ということもあり、よく勉強、というか特に日本国憲法についてはよく記憶している。先生がいちいち覚えていない条文を指摘したりと受け答えも聡明で快活な感じで書かれており(おそらく実際の受け答えも書かれ方に準じるものと推測されます)、個人的にはなかなか好印象でした。
触れられている内容としては、目次のタイトルと対応づけると以下のようになります。
- 憲法の基本(憲法が憲法たるための仕組みについての紹介、最高法規、硬性憲法、違憲審査制)
- 人権と立憲主義(憲法の成り立ち、社会契約と立憲主義)
- 国民主権と選挙(一票の格差問題、直接、間接民主制)
- 内閣と違憲審査制(最高裁判官の国民審査、日本の立法のやり方)
- 憲法の未来と変化(改憲、集団的自衛権)
前述の通り、全くの門外漢である私にとって非常にいい本でした。特に「立憲主義」つまりは憲法とは国民ではなく、国家権力の暴走を抑止するものであるという考え方、この立憲主義を実現するための道具建ての部分は、なるほどと思わせるものでした。まさにタイトルにあるとおり条文に書かれていない、条文の背後にある考え方や意図、日本国の政府が条文をいかに解釈してきたのかということが2人のやりとりを通じて解説されます。日本国憲法が「なぜ」こんな風に書かれているのかが分かれば、それを「なぜ」変えなければならないのか、改正案が「なぜ」このように書き換えられているのか、改正案は妥当なのか、こういったことが以前よりも分かるようになるような気がします。こういう疑問を持っている人には役に立つ本なのではないかと思います。
個人的には、義務教育終了時に本書に書かれているくらいの知識が全国民に一度インストールされているくらいじゃないと、十分な国民的議論を尽くした憲法改正なんてできないんじゃないかなと思うんですが…。改憲したい側は別に国民的議論なんてどうでもいいのかもしれませんけどね。