『人はなぜ物語を求めるのか?』著:千野帽子

「人間は物語る動物である」ということで、人間が一般に持っている「人生に起きる様々な出来事の間に物語を紡いでしまう」という思考の癖を、心理学の研究や哲学の考察を広く紹介しながら解き明かし、時に人を苦しめるその癖から自由になるヒントを与えてくれる本。

本書に曰く、ストーリーを半ば自動的に紡いでしまうという人間の癖は、自然科学が代表ではあるが過去に学んで未来を予測し、生存に有利な能力であったのと同時に、生育歴から来る認知の傾向が本人を苦しめもする。「公正世界観念」といったように思考の癖に名前を付けて意識することで、逆にそこから自由になってこころの安寧を得ることも出来るかもしれない、という話である。要するに物事の認識の枠組みをハックしようとする試みに思えた。

結構宗教家の言葉が引用されていたりするのだが、言葉によって人間の認知の癖をどうこうするのはなるほど古来宗教の役割だったのだなぁと人間の歴史に思いを馳せたりもした(僕の知る限り仏教の一部は結構そういう方向性だよなと思ったり)。

自分の認知の枠組みをいじるのには時間がかかるだろうが、少なくとも人間には特定の思考の癖があるのだ、という事を知ることが出来るという意味で、なにか人生に対するスタンスが変わるかもしれない一冊。

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