『サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁」ビジネスを追う 著:鈴木智彦

密漁に暴力団が関係している、というタイトルから想像できる以上の中身がある本だった。昔はヤクザとカタギの漁師の差が曖昧だったこと、カタギの漁師も生活のために密漁に手を染めることがあり、物流の上流から下流まで、「分かってやってる」部分があること。暴力団(というかヤクザ)の上意下達、滅私奉公な道徳が戦中には称揚されすらしたこと。北方領土沿岸での密漁とソ連の諜報活動等々、目から鱗が落ちまくりである(サカナだけに)。

「おまかせ」の「時価」という消費者にとって入りにくい寿司屋は、漁業という産業の性質と、寿司屋というネタの品質に出すものの品質が大きく左右される料理であるという点を考慮すると、商売の方法として合理的である、ということも語られている。結局、魚が安く安定的に手に入るということが、日本が海に囲まれていることや冷凍技術の発達を差し引いても、何かしらの無理の上に成り立っているのかもしれないという想像力が必要なのかもしれない。結局平成の30年でなんでも「安く」、「便利に」を追求して、消費者がそれに馴らされてしまったゆえの弊害という感じがする(いよいよ日本中あちこちで顕在化しつつあることであるが)。

正直魚が食べにくくなる本ではあるが、魚を口にする消費者として、最低限持たなければならない知識だろう。非常に評判が良い本だったとということだが、確かにとてもいい本だった。

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