『冒険投資家ジム・ロジャース世界大発見』著:ジム・ロジャース、訳:林 康史、望月 衛

勤勉を尊び、怠惰や腐敗を軽蔑する投資家のおっちゃんが、若い奥さんを連れ、メルセデスのCLKクーペとGワーゲンを合体させた魔改造車で世界を何十万キロも走る。20年前の地べたの世界の定点観測(一人の人間の目から見た)記録として極めて興味深い一冊。現在の状況からすると結構変わっている部分もあるなと思う。今なら、彼が本書で行っている未来予測の答え合わせができるかもしれない。

読んでいると、人と出会って見たもの聞いたものを分析する視点が非常に面白くて、歴史や経済、世の中の一般的な法則性に対する造詣が深いことが分かる。博学であることは優れた投資家であるための必要条件なのかもしれない。「世界中が金を借りている日本政府が、国民に大きな借金をしている」と書いてあるのは笑った。日本のニュースでは日本の財政赤字=国民の借金と言うんだけど、実は日本政府が国民にしてる借金なんだよね(少なくとも2018年現在では)。

フィクションで陸路の旅行記というと、芝村裕吏の『遙か凍土のカナン』があるのだが、それに近いものを感じる。最後こそ尻切れトンボ感があるが、1900年代初頭にユーラシア大陸の奥地を旅する描写は非常に雄大で素晴らしいので興味を持ったらそっちも是非。

見ていると不自由で貧しい国ほど、国境管理がうるさいような感じがある。自ら豊かさを生み出すことができず、人や物の出入りから上前をはねるくらいしかできなくなれば、まぁそうなろうという感じか。そういえば日本も出国税を取る、みたいな話が出てきたなぁ……。

    

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