国の内側で個人間の諍いの抑止力、調停としては法律が機能するわけですが(民事訴訟を起こされるかもしれない、刑事罰を受けるかもしれないということが暴力への抑止効果を持つ)、このおかげで我々は個人的に武装せずとも比較的安全に暮らすことができるわけです。そういう意味で国のシステムがキチンとしているって本当に大事なことだなぁと思います。ところが、それが通用しない領域がある、それが国際問題というやつで、国家間の関係とはとどのつまり国家間の暴力、すなわち軍事が物をいうアウトローな世界な訳です(経済も文化も、土台にはやはり暴力=軍事がある)。
ということで、本書は、戦争、動員など、安全保障に関するあれこれを近代戦史をひもときつつ紹介する入門書という感じです。軍事は初学者で趣味で勉強しているので真偽は分かりませんが、第二次世界大戦後植民地支配が終わったのは、宗主国が植民地を維持する安全保障上のコストを支払えなくなったから、などなど筋は通っているなぁと思いました。
戦争はすれば勝った側も負けた側も不幸になる、儲かるのは銃後の武器商人だけという話なのでしないに越したことはない。とはいえ、何らかの理由である国が戦争を仕掛ける先を考えるとき、要するに戦争を仕掛ける意味がある場所に軍隊を送って勝てると思ったところを攻める訳ですよね。要するに武力、暴力というものは行使しないこと、抑止力(こいつにけんかを仕掛けると痛い目に遭うぞと思わせる)として保持することに意義があるのだなぁという話、安全保障という言葉はこういうことを意味するんですなぁと……。
日本で安全保障の考え方は中等教育までに教えられることがなく、家族や友人、自分自身が自衛隊に関わりがないとなかなか拒否感があるものだと思いますが、我々の安全保障を担ってくれる国家の主権者として、こういった本は読んでも良いのかなぁと思いますよ。