主に西洋において、「台所」がいかに変化してきたのかについて歴史的な資料を漁って書かれた本です。取り扱われているテーマは以下の通り。
– 鍋釜類
– ナイフ(包丁)
– 火
– 計量(度量衡、計量カップや、レシピの変遷)
– 挽く(食べ物を混ぜたり攪拌したり、なめらかにしたり)
– 食べる(カトラリー)
– 冷やす(冷蔵庫)
– キッチン(結局のところ、昔から変わらない形をした料理道具と最新の料理機械が共存するのはなぜなのか?)
西洋の食文化ってのも、結構変わってきたのだなというのが分かって大変興味深いです。特にガスや電気コンロなどの煙の出ない熱源、そして生鮮食品を保存する冷凍冷蔵技術は食文化において非常に重要だったということがよく分かります。昔は台所というのは熱やら煙やらで劣悪な環境で、とりわけ粉を挽いたりメレンゲを作ったりといった労働は大変なものだったようで、特にお金持ちが食べるような凝った料理は、身分の低い人たちや場合によっては児童労働が担っていたようです。そう考えるとテクノロジーの進歩というものはありがたいものですねぇ、なんとか将来もこの何割引かの水準は維持されると良いんですけど……。
現代日本において偏屈なおじちゃんやおじいちゃんが、テクノロジーによって家事において楽をすることを批判したりする例がありますが(最近だと例えば高性能な抱っこひもが槍玉に上がったりしましたね)、どうも日本だけのものではないようですね。本書によれば台所仕事では結構欧米でもあったようです。
旅行で行く先の歴史を知ればその土地の見え方が変わってくるように、本書でキッチンの歴史を知れば、あなたが普段立つ台所の見え方が変わるかもしれない。そんな一冊です。