『千の顔をもつ英雄』著:ジョゼフ・キャンベル 訳:倉田真木、斎藤静代、関根光宏

スターウォーズの原作者、ジョージ・ルーカスが参考にしたという神話学の名著らしい。ヨーロッパの諸民族からネイティブアメリカン、アフリカの原住民族まで、世界中のありとあらゆる文化圏で語られる神話には共通する構造(本書の中ではモノミスと呼ばれる)がある。それを解説する本。よくテンプレ展開とかお約束なんて言いますが、「そもそも英雄の物語(ビルドゥングス・ロマン)はお約束やテンプレでなり立っている物なのだよ!」「な、なんだってー!」ということです。

要するに、神話の中に登場する英雄は、「冒険に誘われ」、「助力者を得てそれまでいた世界の外に出て」、「試練を乗り越えて超越的な存在となり」、「再び元の世界の戻ってくる」という共通の物語の流れに沿って動くそうです。たしかに言われてみると、こういう話の流れをしているお話はいくらでもありそうな感じ。仏教、キリスト教、イスラム教の逸話にも、こういったモノミスの構造が見いだしうるそうです。

本作、面白いのが、なぜこのように世界中の文化圏で共通する神話の構造があるのかを、心理学に求めているところだと思います。個人的には心理学は勉強したことがないので正直よく分からないんですが、どんなところでも人間は母の腹から生まれて、長じてはコミュニティに一人前だと承認され、自然の恵みや驚異の中で生きる糧を得て、老いて、病んで、死ぬという部分が共通しているからであると言っています。まぁそうなんだろうと思います。

完全な思いつきではありますが、このモノミスの構造に従わない、音楽における無調性音楽のようなお話を作ったとして、それは面白いのでしょうか?……普通にありそうな気もしますが。

ある程度物語を鑑賞して、色々と実例を知ってから読んだ方がいいでしょうね。これまで鑑賞してきた物語の見え方が少し変わってくるかもしれない一冊。『まどか☆マギカ』なんて、エポックメイキングな作品でしたけど、驚くほどモノミスに忠実に作られているような気がします。

 

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