『民間防衛』

スイス政府謹製の一冊,国家の危機に対して,防衛組織に所属していない人がいかに振る舞うべきかを書いたマニュアル本.ABC兵器からの身の守り方から,占領下での抵抗運動のやり方まで,何でもござれ.
とはいえ,この本の重要なところは,心の持ち方について言及しているところだろう.まず最初に,祖国スイスは,そして祖国スイスが保証する自由や豊かさ,独立は,国民が様々な意味で奉仕するに値するものである,と明言しているのに衝撃を受けた.日本人は清潔な水と安全はタダだと思っている,という言葉があるが,それ以前の自由(思想,心情,表現,そして何より行動の!),あるいは民主主義も,タダで当たり前のものではないのだ.世界のニュースを見れば分かりそうなものだが,個人的には意識したことがなかった.
マニュアルとしては,普段から備える,組織として動く,非常事態においてこそ冷静さを失ってはならない.非常事態においては,ある程度私権が制限されざるを得ない,といった点が参考になるだろうか?あと,非常事態に平和主義を説くこと,侵略者の温情に期待することほど有害なことはない,というのも興味深い.福島第一原発の事故後のあの混乱を考えると,侵略の憂き目に遭おうものなら日本は一昼夜で占領されてしまうのではなかろうか?
読みながら健全な国家主義と,危機対応能力を高めるために,義務教育でこの本+情報倫理に防災の知識辺りを合わせて「安全保障」みたいな名前の教科を作って教えてもいいんじゃない?とか思った.クソの役にも立たない道徳の授業なんかよりよほど実用的だろう.

民間防衛―あらゆる危険から身をまもる 民間防衛―あらゆる危険から身をまもる
(2003/07/04)
原書房編集部

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