『放浪息子 13』 著:志村貴子

昨年のアニメを見て買い始めたにわかな私ですが,相変わらず思春期マンガ(≠青春マンガ)の白眉です.
12巻以来それまでと少し変わったのかな?と思う点が2つあるので書いてみたいと思います.

1つ目は「かっこよさ」について.12巻以来「かっこいい」という単語が,様々な場面で,通念上の使われ方とは違う使われ方をされています.例えば,二鳥君に関して言うならば,姉の真帆は,文化祭で女装をしてファッションショーに出た二鳥君を「かっこいい」といい,マコちゃんは度胸のある彼を「かっこいい」といい,あんなちゃんは男らしくなって行く彼を「かっこいい」というのです.高槻くんも,ファッション誌の女性モデルを見ながら,「かっこいい」というのです.見た目も性格も非常に通念的に言うところの女性らしい二鳥君が,様々な場面で「かっこいい」と言われ,社会通念上の女性のイデアと言ってもいい女性ファッション誌のモデルが「かっこいい」と言われる,スタジオジブリのアニメ映画『紅の豚』の「カッコイイとはこういうことさ」というキャッチフレーズで使われていたかっこいいとは,明らかに違った意味,男性という概念からかっこいいという概念が切り離されてしまっています.この作品の近刊2冊を読んだとき,自分がいつの間にか男性性とかっこいいという形容詞を不可分のものだと思い込んでしまっていたことに気付きました.この作品は思春期の解体と再構築を通して,男性,女性と言う概念と絡まっている様々な概念(男装,女装,かっこいい,かわいい)を切り離して再構築しているのだなぁと思うのです.まぁ気持ち悪いという人もいるのだろうけど,僕は非常に面白い試みだな,と思います.

2つ目は,「大人になること」について.思春期とは,子どもから大人になるまでの過渡期とも取れると思うのですが,二鳥くんは作中で子どもから自分になって,いよいよ大人(社会的な存在)になろうとしているのだなぁと感じます.だから,12巻でユキさんが18になるまでダメよ,と言って,13巻で二鳥くんがある種「常識的」な人生を歩いて行った先にあるのであろう「みいたんのパパ」が出てくるんでしょうね.せっかく自分は自分,と胸を張れるようになった二鳥くんも,また放浪ですよ.あと,思春期を描く上で外せないであろう肉体的な性の話です.あぁ,二鳥くん,君もついに大人になってしまうんだね,という気分.まさに,社会と折り合いを付ける,肉体関係を持つ,の両面で,大人への階段を着実に登って行く感じです.

淡々と綴られる作品ですが,直近静かに着実に盛り上がって行く感じの本作品,続きは9ヶ月後です.二鳥くんがあんなちゃんとどんなセ(ry

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