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『もしもし、てるみです。』著:水沢悦子

インターネット、SNSに疲れた社会に一服の清涼剤。アナクロな外観をした「もしメカ」という携帯電話を販売する「もしもし堂」という会社の「てるみさん」と周りの人々の群像劇。もしメカからは女性のオペレーターが徹底的に話し相手になってくれるサポートセンターにかけることができます。一応鈴太郎という男の子がてるみさんに片思いする、という筋もあるんですが、そっちは全然進まないんですよね。

歌が上手いけれど、「生放送」したら見た目を叩かれて傷ついた女の子とか、自分用にえっちな自撮りを撮っている女の子に「若くて綺麗な体を写真に撮っておきたかった」と声をかける祖母とか、自分で作ったプラモデルを友達に見せたら、「もっとすごい作品がインターネットで見えるよ」とマウンティングしてくる小学生とか、作中で起こる出来事は現実の戯画で、「あぁー」と思うこと請け合いです。(女の子の自撮りはよく分からんが)。

元々青年向けマンガを書いていた作家さんなので、話自体は牧歌的なのに、ちょくちょくきわどい描写が入り、性が常に隣にあるような不思議な感じ。苦手な人は苦手なのかもしれないが、個人的には嫌いではないです。

普段SNSで承認欲求の充足に必死になっている人も、それを横から眺めている人も、癒やされること請け合いの時宜を得た一作です。