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『生きるってなんやろか?』 著:鷲田清一

著者は石黒浩と鷲田清一.某大阪大学において,学術的な知名度と共に最も一般への知名度の高そうな二人の先生の対談(どっちかというと放談)です.
内容としては,自分,心,個性,みたいなものについて色々語っている,という感じでしょうか?
若者のためのクリティカル「人生」シンキング という副題への本書の答えは,
・とにかく他人と関係しろ
・徹底的に突き抜けろ
の2点であるように思いました.
1つ目の答えのベースになっているのは,恐らく石黒先生の研究の根本的なアプローチである(と僕が勝手に思っている)「関係論的な心」というものだと思います.「心,とか自分といった実体を明確に規定できるものではなくて,それらは他者との関係性の中からステンシルのように浮かび上がるようなものである.」という考えにのっとるならば,自分とは何か,自分の人生とは何か,について答えを出すにはとにかく他人と関係するしかないということでしょう.
2つ目の答えについては,結局巷で言われるところの「個性」とか「天職」みたいなものって,所詮誰かが決めた「枠」の中でのものでしかないのだから,本当にそういうものが見つけたければ徹底的に考えろってことでしょう.
ただ,これってあくまで自分の興味の方向につきぬけて,そのまま社会の中に自分の居場所を作ってしまった成功者の言葉なんですよね.ビジネス書と一緒で他人の言葉をいくら頭で理解したって,99パーセントの人の人生にとっては何の影響もないものだと思います.ただ,この本の中にも書かれている,石黒先生の「死のうと思った」とか鷲田先生の「死ぬほど勉強した」はすごく重たいと思いました.おそらく本当にそういう風に思っていたのだろうな.人生を左右するような言葉があるとすれば,それはこういう風に自分の身体を通ったことのある言葉だけなのでしょう.

生きるってなんやろか? 生きるってなんやろか?
(2011/03/11)
石黒 浩、鷲田 清一 他

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